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『S○SUKEを引退しなければいけなくなったら、ドラキュラになれ!!!』

 ☆ 第一章 池ポチャの屈辱


「まだ引退しないのか?」


 知人の言葉が、東京都心の高級バーのカウンター越しに飛んできた。山田サスケ、四十八歳。IT企業の役員として成功を収め、趣味のS○SUKE挑戦に人生の大半を捧げてきた男。


「え」


 俺は虚を突かれたように間抜けな声を漏らした。


「もう年も年だしさ、ファーストステージで池ポチャじゃん。見てるこっちが痛々しいよ」


 知人は悪気なく笑った。だが、その言葉は俺の心臓を貫いた。確かに前回の大会、俺はクワッドステップスで派手に水没した。視聴者からは「中年の無謀な挑戦」とネットで嘲笑された。


 その夜、俺は世田谷の自宅地下に自主製作したS○SUKEステージにいた。総工費三千万円。そりまる跳び、ローリングヒル、フィッシュボーン。完璧に再現された障害物たちが、薄暗い照明の下で俺を待っていた。


「はぁ、はぁ、はぁ……」


 息が上がる。腕がパンパンだ。二年前なら楽々クリアできた障害も、今は三回に一回は失敗する。


「畜生……」


 俺は床に膝をついた。汗が滴り落ちる。


「そこの、S○SUKEマニアさん」


 低く、甘美な声が闇から響いた。


 振り向くと、黒いマントを纏った男が立っていた。いや、立っているというより、浮いているように見えた。青白い肌、鋭い牙、そして血のように赤い瞳。


「誰だ、お前は。どうやって入った?」


「警備システムなど、私には無意味です」男は優雅に微笑んだ。「体力の限界を解決する方法をお探しでは?」


「まさか……もしかして、ヴァンパイア?」


「察しがよろしい。私はドラキュラ伯爵……の、まあ、遠い親戚のようなものです」


 男はマントを翻し、俺の自作ステージを眺めた。


「素晴らしい。人間の執念がこれほど形になっているとは。私は五百年生きていますが、ここまで情熱を注げる趣味を持つ者は稀です」


「五百年……」


 俺の脳裏に、とんでもない可能性が浮かんだ。


 永遠の体力。衰えない筋力。不死の肉体。


「な、なあ。もし、もしも俺が吸血鬼になったら……S○SUKEを、永遠に挑戦し続けられるのか?」


 ドラキュラは妖艶に笑った。


「当然です。疲労知らず、老化なし。あなたは永遠にファーストステージをクリアし続けられる。いや、ファイナルステージすら……」


 俺は、とりあえず、誘惑に負けてしまった。


 ☆ 第二章 不死身のチャレンジャー


 吸血鬼になった翌朝、俺は自分の変化に驚愕した。


 鏡に映らない。これは予想していた。だが、問題は別のところにあった。


「な、何だこの筋肉は……!」


 シャツを脱ぐと、そこには彫刻のような肉体があった。体脂肪率は推定五パーセント。握力は計測不能。垂直跳びは二メートル。


「これなら、パイプスライダーも余裕だ!」


 俺は興奮のあまり叫んだ。だが、ドラキュラ(彼は「ウラジミール」と名乗った)が冷静に忠告した。


「山田さん、一つ問題があります」


「何だ?」


「S○SUKE本大会は、昼間に収録されます」


「……は?」


「吸血鬼は日光に弱い。直射日光を浴びれば、灰になります」


 俺は絶句した。不死の肉体を手に入れたのに、S○SUKEに出られない?


「待て待て待て! じゃあ何のために吸血鬼になったんだ!」


「夜の自主練習が永遠に続けられるじゃないですか」


「そうじゃない! 俺は本大会で完全制覇したいんだ!」


 ウラジミールは困ったように首を傾げた。


「うーん、日焼け止めを……」


「効くわけないだろ!」


 俺たちは頭を抱えた。


 ☆ 第三章 夜のS○SUKE


 結局、俺は独自の解決策を思いついた。


「T●Sに交渉する。夜間収録だ」


「無理でしょう」ウラジミールは即座に却下した。


「いや、待て。俺には金がある。スポンサーになればいい。『山田財閥presents S○SUKE NIGHT』だ!」


「……天才か?」


 かくして、俺は製作委員会に莫大な金を積み、史上初の夜間S○SUKE開催を実現させた。照明設備だけで一億円。視聴者からは「なんで夜にやるの?」と困惑されたが、そんなことは知ったことか。


 大会当日。俺はゼッケン99番として登場した。


「山田サスケ、四十八歳! IT企業役員にして、S○SUKE歴十五年! 今回は自らスポンサーとなり、夜間開催を実現! その執念、果たして完全制覇に繋がるか!」


 アナウンサーの声が響く。


「行くぞ……」


 俺はスタート台に立った。この瞬間のために、吸血鬼になったのだ。


 クワッドステップス、クリア。ローリングヒル、余裕。フィッシュボーン、楽勝。ターザンロープ、完璧。


「速い! 速すぎる! 山田、まるで別人だ!」


 実況が興奮する。観客が沸く。


 そして、そりまる跳び。かつて俺を苦しめた最大の難関。


「せいやぁぁぁぁ!」


 跳んだ。


 飛びすぎた。


 俺は吸血鬼の超人的跳躍力で、そりまる跳びを完全にオーバーシュートし、ゴール地点を飛び越え、スタッフ席に激突した。


「……あ」


 気絶したカメラマンを見下ろしながら、俺は失格の笛を聞いた。


 ☆ 第四章 永遠の修行


「やっちまった……」


 控え室で頭を抱える俺に、ウラジミールが慰めの言葉をかけた。


「大丈夫です、山田さん。あなたには永遠の時間がある。次の大会で調整すれば……」


「次? 次は半年後だぞ!」


「私は五百年待てますが」


「俺は待てない!」


 結局、俺は次の大会までの半年間、自宅ステージで力の制御を学ぶことにした。吸血鬼の肉体に慣れ、人間のように動く訓練。


 そして、奇妙な師弟関係が始まった。


「山田さん、もっと弱く、もっと人間らしく」


「無理だ! 体が勝手に動く!」


「集中です。あなたは今、神の肉体を持っている。それを鎖で縛るのです」


 俺は禅のような修行を続けた。強さを抑える。速さを制御する。完璧な肉体を、あえて不完全にする。


 そして気づいた。


「これ、本末転倒じゃね?」


「気づくのが遅い」


 ウラジミールは呆れ顔だった。


 ☆ 第五章 人間に戻る決意


「なあ、ウラジミール」


 ある夜、俺は自作ステージでそりまる跳びを前に立ち止まった。


「俺、やっぱり人間に戻りたい」


「……本気ですか?」


「本気だ。確かに吸血鬼の肉体は凄い。だが、S○SUKEの面白さって、限界に挑戦することだろ? 不死身じゃ、意味がない」


 俺は自分の手を見つめた。完璧すぎる筋肉。疲れを知らない肉体。


「老いること、衰えること、それでも挑戦し続けること。それが、俺のS○SUKEなんだ」


 ウラジミールは静かに笑った。


「そうですか。では、戻りましょう。実は簡単に戻れます」


「え、マジで?」


「血を抜いて、人間の血を入れればいいだけです。まだ完全に吸血鬼化していないので」


 かくして、俺は再び人間に戻った。四十八歳の、体脂肪率二十パーセントの、普通の中年男に。


 ☆ エピローグ


 次の大会。俺は再びゼッケン99番として登場した。


「山田サスケ! 前回は驚異的なジャンプで逆に失格! 今回はどうだ!」


 クワッドステップス、クリア。ローリングヒル、ギリギリ。フィッシュボーン、腕が悲鳴を上げる。ターザンロープ、息が切れる。


 そして、そりまる跳び。


「はぁ、はぁ、はぁ……」


 必死で呼吸を整える。体が重い。腕が震える。


 これだ。これが、S○SUKEだ。


「せいやぁぁぁぁ!」


 跳んだ。


 着地した。


 そして、そのままゴールへ。


「ファーストステージ、クリア! 山田サスケ、四十八歳、ついにファーストステージクリア!」


 観客が沸いた。俺は膝をついて、天を仰いだ。


 控え室で待っていたウラジミールが、遠くから静かに拍手していた。


「よかったですね、山田さん」


「ああ。でもな、ウラジミール」


 俺は笑った。


「もし六十歳になってどうしようもなくなったら、またお前を呼ぶかもしれない」


「その時はまた、永遠の修行を始めましょう」


 吸血鬼は夜の闇に消えた。


 俺の挑戦は、まだ続く。


 人間として。


 限界ある肉体で。


 それでも、S○SUKEを愛し続ける男として。


プロンプト

「『SASUKEを引退しなければいけなくなったら、ドラキュラになれ!!!』。場所は東京。俺は山田。SASUKEが趣味の小金持ち。知人から「引退しないのか?」。「え」。俺は虚を突かれたように間抜けな声で言った。「もう年も年だしファーストステージで池ポチャじゃん」。その夜、俺は自主製作したSASUKEステージで汗を流していた。「そこの、SASUKEマニアさん」。振り向くと、黒衣の男がいた。「体力の限界を解決する方法をお探しでは?」。黒衣の男は鋭い牙と赤い目。「もしかして、ヴァンパイア」。私はとりあえず、誘惑に負けてしまった。このプロットを元にシリアスコメディ短編小説を書きましょう。」

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