「怪奇事件ファイル『連続通り魔吸血事件』」
▲ 第一章 謎の連続事件
「どういうことだ!」
捜査本部に大川刑事の怒号が響き渡る。意味もなく吠える。机を叩く。窓ガラスが震える。
都内某所で奇妙な事件が立て続けに発生していた。被害者は老若男女問わず、全員が青白い顔で路地裏に倒れているのが発見された。共通点は、体内の血液が数パーセント抜かれていること。そして、事件前後の記憶が完全に欠落していることだった。
「これは…」
若手刑事の田中が資料を見返しながら呟く。
「大川さん、被害者はみんな命に別状はありませんが、確かに数パーセントの血液が失われています。事件前後の記憶はなく、手がかりは特にありません。被害者の健康状態や生活に特別な共通点は…」
「バカヤロー!」
大川は田中の言葉を遮る。
「刑事は気合いだ!根性だ!どれだけ己を犠牲にして命を懸けるかだ!刑事魂を見せるんだ!」
(自分は何も犠牲にしてないよね…)
周囲の刑事たちが脳内で一斉にツッコミを入れる。
大川は白板の前に立ち、マーカーを握りしめた。
「犯人は、おそらく年齢は10代から90代だ」
サラサラと書き始める。
「身長は150センチから190センチ。体重は30キロから160キロ。間違いない」
(それ、ほぼ全人類じゃないか…)
全員が心の中で呟く。机上の空論を展開する大川。三現主義?なにそれおいしいの?という顔だ。
「凶器は…おそらく注射器か、あるいは特殊な吸引装置だ。犯人は医療関係者の可能性が高い。いや、待てよ。蚊かもしれん。巨大な蚊だ」
「大川さん、それは…」
「黙れ!俺の推理を邪魔するな!」
(もう誰もついていけない…)
▲ 第二章 囮捜査
「ここは…最後の手段だ」
大川が大げさに腕を組み、目を閉じて言う。
(最初っから最後の手段…)
捜査本部がざわつく。
「囮捜査だ。そして、その囮は…」
大川の指がゆっくりと動く。全員が息を呑む。まさか自分が?いや、まさか…。
指先が止まった。それは若手刑事の田中を指していた。
「田中、お前だ」
「え、僕ですか!?」
(さっき命を懸けるって言ったのに、真っ先に部下を危険に晒す…)
ざわざわと波紋が広がる。
「大川さん、どうして田中なんですか?」
ベテラン刑事の佐藤が聞く。
「俺がいなくなると現場は回らないからな」
大川は自信満々に胸を張る。
(むしろいないほうが円滑に回るんだけど…)
全員が脳内で突っ込む。
「それに俺は捜査の指揮を執らなければならん。現場で汗を流すのは若手の仕事だ。田中、お前は選ばれたんだ。光栄に思え」
(全然光栄じゃないです…)
田中は顔を引きつらせた。
▲ 第三章 囮作戦決行
夜の繁華街。田中は一人、薄暗い路地を歩いていた。
(本当に大丈夫かな…)
耳にはイヤホン型の通信機。ポケットには発信機。そして、懐には護身用の警棒。準備は万端のはずだった。
「田中、聞こえるか」
イヤホンから大川の声が響く。
「はい、聞こえます」
「よし。犯人は必ず現れる。俺の勘だ」
(その勘、今まで一度も当たったことないんですけど…)
田中は心の中で呟きながら、人気のない路地へと進んでいく。
その時だった。
背後から、冷たい気配を感じた。振り返る暇もなく、首筋に何かが触れる。鋭い痛み。そして、急速に力が抜けていく感覚。
「な、何だ…これは…」
視界が霞む。膝から崩れ落ちる。意識が遠のいていく。
「田中!田中!応答しろ!」
イヤホンから大川の声が聞こえるが、もう返事をする力も残っていなかった。
▲ 第四章 真実
「よし、田中が襲われた!全員、突入だ!」
大川が叫び、待機していた刑事たちが一斉に路地へと駆け込む。
そこには、青白い顔で倒れている田中の姿があった。そして、その周囲には三人の人影。いや、人ではない。その姿は徐々に霧のように揺らめいている。
「貴様ら、何者だ!」
大川が叫ぶ。
「くっくっくっ…」
低い笑い声が響く。三人の影は人間の姿を保っているが、その目は血のように赤く光り、口元からは鋭い犬歯が覗いている。
「吸血鬼…まさか、本当にいたのか」
ベテランの佐藤が呻く。
「その通りだ、人間ども」
中央の吸血鬼が高笑いする。
「我々は何世紀も前からこの世界に生きている。そして、無差別に一般人の血を吸うことこそ我らの娯楽なのだ」
「楽しいんだよなぁ。殺さずに少し血を吸って楽しむのさ。ちょうどいい量だけね」
右側の吸血鬼が付け加える。
「そして、あとからPTSD、心的外傷後ストレス障害に悩まないように記憶を消してやる。我々は優しいだろう?」
三人は声を揃えて高笑いする。
「貴様ら…許さん!」
大川が警棒を構えて突進しようとする。
「待て」
中央の吸血鬼が手を上げる。三人は大川をじっと見つめた。そして、顔をしかめる。
「この男の血は…まずそうだ」
「同感だ。ストレスと脂質でドロドロしている」
「添加物の匂いがする。インスタント食品ばかり食べているな」
(ひどい言われようだ…)
周囲の刑事たちが心の中で呟く。
「運動不足で血行も悪い。こんな血、吸う価値もない」
吸血鬼たちは大川を後目に、霧のように消えていった。
「待て!待てー!」
大川が虚しく叫ぶ。
▲ エピローグ
翌日、捜査本部。
「つまり、犯人は吸血鬼だったと…そういう報告書を出すのか?」
署長が頭を抱える。
「はい。事実ですから」
大川が真面目な顔で答える。
「却下だ。『犯人不明、捜査継続』で報告しろ」
署長は溜息をつく。
「大川、お前は健康診断を受けろ。吸血鬼にまで嫌われる血液とか、相当やばいぞ」
「は、はい…」
大川は珍しく小さな声で答えた。
病院のベッドで目を覚ました田中は、仲間たちから事の顛末を聞かされる。
「つまり、僕は吸血鬼に血を吸われて、大川さんは血がまずいって言われたんですね」
「そういうことだ」
「なんか…大川さんの方がダメージ大きそうですね」
「まあな」
刑事たちは苦笑いを浮かべる。
その夜、街のどこかで、また吸血鬼たちは獲物を求めて彷徨っているに違いない。霧のように、音もなく、記憶も残さず。
ただし、不健康な血の持ち主だけは、完全にスルーして。
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**事件報告書追記**
- 被害者:田中巡査(軽度の貧血、三日間の療養後に職場復帰)
- 犯人:不明(目撃証言あるも信憑性に欠けるため記録から削除)
- 大川刑事:人間ドック受診命令(要再検査項目多数)
- 事件:未解決
プロンプト
「「怪奇事件ファイル『連続通り魔吸血事件』」。都内某所にてある事件が立て続けに起きていた。被害者は老若男女問わず。全員青白い顔で体内の血を数パーセント抜かれて路地に倒れていた。「どういうことだ!」。刑事の大川は吠える。意味もなく吠える。「これは…」。部下があることに気が付く。「大川さん…被害者はみんな命に別状はありませんが、数パーセント血を抜かれていました。事件前後の記憶はなく手がかりは特にありません…被害者は健康で特に共通点は…」。「バカヤロー!刑事は気合いだ!根性だ!どれだけ己を犠牲にして命を懸けるかだ!」。大川は大げさに言う。「犯人は、おそらく年齢は10代から90代。身長は150センチから190センチ。体重は30キロから160キロだ」。(それ、ほぼ全人類じゃないか)。全員が脳内で突っ込む。机上の空論を展開する大川。三現主義なにそれおいしいのだ。「ここは…最後の手段」。大川が大げさに言う。(最初っから最後の手段…)。ざわつく。「囮捜査だ…そしてその囮は」。大川は指を指す。それは部下。(さっき命を懸けるって言ったのに部下を危険に晒す…)。大川は自信満々に言う。「俺がいなくなると現場は回らないからな」。(むしろいないほうが…)。全員が脳内で突っ込む。このプロットを元にシリアスサスペンスコメディ短編小説を書きましょう。的外れな推理をする刑事の掛け合いがポイントです。最後は吸血鬼たちが「無差別に一般人の血を吸うことこそ我らの娯楽。殺さずに少し血を吸って楽しむのさ。そして、あとからPTSD(心的外傷後ストレス障害)に悩まないように記憶を消すのさ」と高笑いする。そして、吸血鬼たちは不味そうな血を持つ大川を後目に霧のように消える。」




