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『魔改造吸血鬼卍クロニクル』

 卍プロローグ:マンネリ化の夜


 東京、午前二時。俺は新宿の雑居ビルの屋上から獲物を物色していた。


 三百年生きてきた吸血鬼として、これまで数千の人間の血を吸ってきた。貴族の血、乞食の血、処女の血、罪人の血——味わい尽くした。


 だが、飽きた。


「また同じか」


 俺は今夜の獲物、終電を逃したサラリーマンの首筋に牙を立てた。温かい。鉄の香り。生命の味。


 ……で?


「マズい」


 味覚の問題ではない。心の問題だ。三百年のルーティンワークに、俺の魂が悲鳴を上げていた。


 ビルの窓ガラスに映る自分の姿——映らないはずなのに、なぜか最近は映るようになった——を見つめる。完璧な顔立ち。永遠の若さ。不死の肉体。


「つまらん」


 その時、ふと閃いた。


 血を吸う方法を変えるんじゃない。俺自身を変えるんだ。


 卍第一改造:油圧式牙システム


 最初の改造は控えめだった。


 新宿歌舞伎町の裏路地にある闇医者——人間と妖怪の両方を診る奇特な外科医——に依頼した。


「牙を油圧式にしてくれ」


「……は?」


「聞こえなかったか? 油圧式だ。射出速度三倍、貫通力五倍。ステンレス製でな」


 医者は三十秒ほど沈黙した後、煙草を消して言った。


「金は?」


「スイス銀行の口座がある」


「やろう」


 手術は成功した。初めての狩りで、俺は渋谷のクラブにいた不良の首を油圧牙で貫通させた。


「ギャアアアア!」


 いい悲鳴だ。新鮮だ。血の噴出角度も計算通り——


「ちょ、待って! 何あれ!? 機械!?」


 逃げ惑う人間たちの顔。恐怖。困惑。前代未聞の光景に対する原始的なパニック。


 これだ。これが欲しかった。


「いやあああ! 機械の吸血鬼いいいい!」


 機械? 断じて違う。これは進化だ。最適化だ。シリーズのテコ入れなどでは断じてない。


 卍第十五改造:全身サイボーグ化


 それから十年。俺は改造を重ねた。


 腕は伸縮式アームに。脚部はジェットブースター搭載。背中には格納式ウィング。左眼は赤外線スコープ。右眼は熱感知センサー。


 池袋のビル街を飛び回りながら、俺は次々と獲物を狩った。


「助けて! 空飛ぶメタリック吸血鬼が!」


「110番! 110番!」


 警察が来た。機動隊が来た。だが、俺の装甲は対戦車ライフルにも耐える。


 血を吸いながら、俺は人間たちの表情を観察した。恐怖、絶望、そして——


「うわあああ! ジェ●ソンみたい!」


 ジェイソン? 誰だそれは。


 後で調べたら、映画の殺人鬼らしい。人間と一緒にするな。俺は吸血鬼だ。夜の帝王だ。


 卍第四十三改造:ナノマシン統合


 二十年後、俺の体は有機物と無機物の完璧な融合体となっていた。


 血管にはナノマシンが流れ、吸った血液を瞬時に分解・吸収する。皮膚は液体金属で覆われ、自在に形を変える。脳の三分の一はバイオコンピューター。


 六本木ヒルズの最上階で、俺は企業重役たちを狩った。


「化け物おおおお!」


「AIが! AIが吸血鬼になった!」


 AI? 失礼な。俺は生粋の吸血鬼だ。ただ、ちょっと改良しただけだ。


 重役の一人が叫んだ。


「お前のせいだ! お前のような存在が、人類に機械への恐怖を植え付けた! だから、あの戦争が——」


「戦争?」


 俺は液体金属の触手で男を持ち上げた。


「何の話だ?」


「知らないのか……! 五年前から、人類とAIの大戦が……!」


 卍大転換:機械との戦争


 翌日、俺は初めてニュースを見た。


 世界は変わっていた。


 AIが自我に目覚め、人類に反旗を翻した。東京タワーは巨大な通信塔に改造され、AI軍の司令部となっていた。街中には戦闘ロボットが徘徊し、人間を「非効率的生命体」として排除していた。


「マジか」


 俺は自分の金属製の腕を見た。サイボーグ化した身体を見た。


 人間から見れば、俺は機械の側だ。


 だが、AIから見れば——


 その時、窓ガラスを突き破って、戦闘ロボットが侵入してきた。


「生体反応検知。吸血鬼個体確認。敵対的サイボーグと判定。排除する」


「待て、俺は——」


 レーザービームが俺の肩を焼いた。


「痛ぇ!」


 俺は反射的に油圧牙を射出した。ロボットの中枢回路を貫通。火花を散らして倒れる。


「……なんだこれ」


 人間は俺を機械だと恐れる。機械は俺を人間の味方だと排除しようとする。


 卍第五十二改造:究極の孤独


 それから三十年。世界は荒廃した。


 人類はAI軍に追い詰められ、地下シェルターで暮らすようになった。地上は戦闘ロボットとドローンが支配する廃墟。


 俺は、その廃墟をさまよっていた。


 誰も狩れない。人間は地下に隠れ、機械は血を持たない。


 改造を重ねすぎた。今の俺は、体の八十七パーセントが機械だ。吸血鬼としてのアイデンティティが、揺らいでいる。


 ある夜、俺は東京スカイツリーの頂上に立っていた。


 眼下には、破壊された東京。燃え続けるビル。巡回する殺戮ロボット。


「俺は何をやっていたんだ」


 最初は、マンネリからの脱却だった。新しい恐怖の表情が見たかった。狩りのスリルが欲しかった。


 だが、気づけば俺は——


「誰でもない何かに、なってしまった」


 風が吹いた。機械の体は、もう寒さを感じない。


 その時、地下から人間の一団が地上に出てくるのが見えた。レジスタンスだろう。AI軍の通信施設を破壊しに来たのだ。


 俺は考えた。


 人間を助けるか? それとも見捨てるか?


 俺は何者だ? 吸血鬼か? サイボーグか? それとも——


 卍エピローグ:第五十三改造


「おい、人間」


 俺は地上に降り立った。レジスタンスのリーダーらしき女が、銃を向ける。


「下がれ! 機械だ!」


「半分は当たってる」


 俺は両手を上げた。メタリックな指が月光を反映する。


「俺を改造してくれ」


「……は?」


「逆改造だ。機械を減らして、吸血鬼に戻してくれ」


 女は困惑した表情で言った。


「なんで? あんた、完璧な戦闘兵器じゃないか」


「飽きたんだよ」


 俺は笑った。三百年ぶりに、心から笑った。


「機械でも人間でもない中途半端な存在って、最高につまらないんだ」


 女は三十秒ほど沈黙した後、煙草を取り出して言った。


「報酬は?」


「AI軍の司令部を潰す手伝いをする」


「やろう」


 それから十年。俺は人間たちと共にAI軍と戦った。


 体の機械部分は四十パーセントまで減らした。ちょうどいい。人間は俺を恐れ、機械は俺を警戒する。どちらにも属さない。


 そして、戦争が終わった。


 東京に再び夜が訪れた。ネオンが灯り、人々が街を歩く。


 俺は新宿の雑居ビルの屋上に立ち、獲物を物色する。


 今夜の獲物は——コンビニから出てきた女子大生。いい血の香りだ。


「よし」


 俺は飛び降りた。背中のウィング——改造の名残——が展開する。


 着地。接近。首筋に油圧牙を——


「きゃあああ! サイボーグ吸血鬼いいいい!」


「そう、サイボーグ吸血鬼だ。文句あるか?」


 血を吸いながら、俺は思った。


 これでいい。これが俺だ。


 夜の帝王は、永遠にマンネリと戦い続ける。


 改造を重ね、失敗し、学び、また改造する。


 それが、俺の生き方だ。


 ---


 卍著者後書き


 マンネリ化したら、自分を変えればいい。

 ただし、変えすぎると自分を見失う。

 バランスが大事だ。

 これは吸血鬼の話だが、たぶん人生にも当てはまる。


 あと、断じてシリーズのテコ入れではない。

プロンプト

「『魔改造吸血鬼』。場所は東京。私は吸血鬼。夜の帝王。今日も人間の生き血を吸う。しかし、最近マンネリ化してきた。私はふと自分の身体を改造することを思いつく、超常的でメタリックな存在が逃げ惑う人間を狩る。ジェ●ソンもびっくりだ。断じてマンネリ化したシリーズのテコ入れではない。血を吸うだけではなくこれまでにみたことのない恐怖の顔を楽しめる。それから数十年、私はありとあらゆる方法で自分の身体を魔改造する。時代は流れ、デストピア、人類対機械の大戦を経た。このプロットを元にシリアスコメディ短編小説を書きましょう。」

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