「怪奇事件ファイル『怪盗V連続血液強奪事件』」
○ 第一章 謎の連続血液強奪事件
都内某所。雨の降りしきる夜に、また一つの事件が起きていた。
「また盗まれました!」
救急病院の院長が青ざめた顔で報告する。今度は聖マリア病院の血液保管庫から、O型とAB型の血液パック計50袋が消失していた。
現場には例の如く、華麗な筆跡で書かれた一枚の紙が残されている。
『怪盗Vによる正義の行い、見事成功せり。諸君らの血液は有効活用させていただく。 ―怪盗V―』
「どういうことだ!」
刑事の大川は、四十二歳。中肉中背、薄毛が気になるお年頃だが、声だけは若い頃から変わらずデカい。意味もなく吠えるのが癖である。
「これで今月だけで五件目です」部下の田中が報告書をめくりながら言う。
「最初は大学病院、次に血液センター、輸送車、クリニック、そして今回の聖マリア病院…」
「パターンを見ると…」田中が何かに気づいたような表情を見せる。
「大川さん、これって一定の周期と規則性がありますよね。もしかして闇バイトを使った転売組織という線は…」
「馬鹿野郎!」
大川は机を叩いて立ち上がる。コーヒーカップが跳ねた。
「刑事は足だ!ありとあらゆる可能性を考えて、高度な柔軟性を保ちつつ、臨機応変に対処するんだ!」
要するに、行き当たりばったりである。
○ 第二章 大川の華麗なる推理
「これはたぶん…」
大川の目が輝く。昨夜見た深夜アニメの影響が色濃く出始めている。
「現代のSNSが生み出した模倣者たちの犯罪だ!」
「は?」田中が困惑する。
「最初の事件以外は同じ人間がやったわけじゃあない!カリスマ不在による模倣者たちの事件!スタンドアローンな複雑系犯罪だ!」
大川の想像力が爆発する。三現主義?なにそれおいしいの?という状態である。
「つまり!!!」
大川は黒板に謎の相関図を描き始める。
「最初の犯人Aが事件を起こす。それをSNSで知った犯人Bが『俺も怪盗Vになろう』と思って二件目を起こす。さらにそれを見た犯人Cが三件目を…という無限連鎖!」
「でも大川さん、犯行の手口が全部同じなんですけど…」
「それがSNSの恐ろしさだ!情報が瞬時に共有されて、完璧な模倣犯罪が可能になる!現代社会の闇だな!」
田中は頭を抱えた。
○ 第三章 迷走する捜査
翌日、大川と田中は街頭でアンケート調査を始めていた。
「すみません、最近『怪盗V』に憧れたりしませんか?」
通行人は皆、困惑した表情で立ち去っていく。
「大川さん、これ意味あるんですか?」
「あるに決まってるだろ!潜在的模倣犯の心理を探るんだ!」
その時、大川の携帯が鳴る。
「また事件です!今度は都立総合病院!」
現場に駆けつけると、またしても同じパターン。血液パックの盗難と、怪盗Vの犯行声明。
「おかしい…」田中が呟く。
「これ、本当に模倣犯なんでしょうか?手口が完璧すぎて…」
「だから言ったろ!SNSの情報共有パワーだ!きっと秘密のグループチャットとかがあるんだ!『怪盗V養成講座』とか!」
○ 第四章 真相への接近
六件目の事件の後、田中がある発見をする。
「大川さん、これ見てください」
田中が広げた地図には、事件現場すべてに赤い印がつけられている。
「なんか…規則正しく配置されてません?まるで計画的に…」
「計画的?」大川が首をひねる。
「模倣犯なのに?」
「それに盗まれる血液の種類も、各病院の在庫状況を完璧に把握してないと…」
その時、また新たな事件の報告が入る。しかし今度は少し様子が違っていた。
現場で警備員が証言する。
「黒いマントを着た怪しい人影を見ました。でも…なんというか、すごく紳士的で、『お疲れさまです』って挨拶されたんです」
○ 第五章 衝撃の真相
七件目の事件現場。大川と田中が到着すると、なんと犯人たちがまだ現場にいた。
三人の黒マント姿の人物が、血液パックを丁寧にケースに詰めている。
「君たち!」大川が叫ぶ。
振り返った三人は、なぜか上品な中年男性たちだった。一人は眼鏡をかけ、一人は口髭を蓄え、一人は白髪を後ろで束ねている。
「あ、お疲れさまです、刑事さん」
一番年上らしき男性が丁寧に頭を下げる。
「我々、やっと捕まりましたね」
「え?」大川と田中は唖然とする。
「実は我々、ヴァンパイア…いえ、現代風に言うと吸血鬼でして」
眼鏡の男性が説明を始める。
「最近、歳のせいか狩りが辛くなりまして。それで血液バンクから計画的に栄養補給させていただいていたんです」
「計画的って…」
「ええ。月一回、各血液型をバランス良く、各病院の在庫状況を考慮して。何事も予告をしないと対応する側も困るでしょうし」
白髪の男性が続ける。
「事件後に我々がやったという証拠を残さないと、冤罪につながりますからね。社会人としての基本です」
「でも…怪盗Vって?」
「ああ、それは」口髭の男性が苦笑いする。
「ヴァンパイアのVです。怪盗というのは…まあ、ロマンですかね」
○ エピローグ
警察署にて。
「つまり、模倣犯でもSNS犯罪でもなく…」
「律儀な吸血鬼さんたちの栄養補給活動でした」
田中が報告書をまとめながら呟く。
三人の吸血鬼は、既に人工血液の開発企業との合法的契約を結んでいた。彼らの協力で、より効率的な血液保存方法まで開発されることになったという。
「でも大川さんの推理も、ある意味当たってましたよね」
「どこが?」
「高度な柔軟性を保ちつつ、臨機応変に対処しろって」
大川は照れながら言う。
「まあ、経験だな。三十年の刑事経験が生んだ…」
その時、新しい事件の報告が入る。
「大川さん、今度は『怪盗W』による宝石盗難事件です!」
「どういうことだ!」
大川がまた吠える。今度は意味がありそうだ。
「これはきっと…ウェアウルフ(狼男)の仕業だ!月の周期に合わせて宝石を…」
田中は深いため息をついた。長い夜になりそうである。
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*この事件により、警視庁は「超常現象対策課」を新設することとなった。初代課長には、なぜか大川が任命されたという。彼の的外れな推理が、意外にも超常現象の解決に向いていることが判明したためである。現在も都内のあちこちで、大川の雄叫びが響いているとか、いないとか。*
プロンプト
「「怪奇事件ファイル『怪盗V連続輸血用血液強奪事件』 」。都内某所にてある事件が立て続けに起きていた。病院や輸送車から輸血用の血液が盗まれるという事件だった。予告状。そして、犯行後に残されたのは、怪盗Vによる犯行声明。「どういうことだ!」。刑事の大川は吠える。意味もなく吠える。「これは…」。部下があることに気が付く。「大川さん…ある一定の周期と規則性から転売という線は…」。「馬鹿野郎!」。大川は大げさに言う。「刑事は足だ!ありとあらゆる可能性を考えて状況から高度な柔軟性を保つつ、臨機応変に対応するんだ!」。つまり、行き当たりばったりである。「これはたぶん、現代のSNSが生み出した模倣者たちの犯罪だ!最初の事件以外は同じ人間がやったわけじゃあない!カリスマ不在による模倣者たちの事件!スタンドアローンな事件だ!」。大川の想像力が爆発する。最近見たアニメに刺激を受けてそうな発言。三現主義なにそれおいしいのだ。このプロットを元にシリアスサスペンスコメディ短編小説を書きましょう。的外れな推理をする刑事の掛け合いがポイントです。最後はドラキュラたちが...計画的に栄養補給する活動だと分かる。「何事も予告をしないと対応する側も困る。事件後に我々がやったという証拠を残さないと冤罪につながる」。社会人の大先輩として変に律儀な吸血鬼たちだった。」




