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『異議あり!!!!』~おにごっこの後はリーガルバトル~

 

 ☆ 第一幕:法廷にて


「被告、田中太郎」


 裁判長の声が法廷に響く。私は被告席で背筋を伸ばした。隣に座る弁護士は緊張で手が震えている。一方、原告席には完璧にスーツを着こなした吸血鬼が座っていた。デビッド・V・ドラキュラ弁護士。夜間専門の敏腕弁護士として有名らしい。


「被告は三日前の夜中、原告であるヴラド・インペイラー氏を無理やり焼き肉屋に連れ込み、生命の危険にさらした罪で訴えられています」


 私は思わず立ち上がった。


「異議あり!!!!」


「被告、まだあなたの発言の番ではありません」


 ---


 **【フラッシュバック:三日前の夜中】**


 *雨が降りしきる東京の夜。私は終電を逃し、暗い路地を歩いていた。*


 突然、マントを翻した男が現れた。牙が月光に光っている。


「君、面白そうじゃないか。私と鬼ごっこをしないかね?」


 吸血鬼だ。間違いない。私の脳内では瞬時に計算が始まった。


 *弱点その一:日光 → 朝まで逃げ切れば勝てるが、6時間もある*

 *弱点その二:十字架 → 持ってない*

 *弱点その三:にんにく → コンビニで買える時間があるか?*

 *弱点その四:焼き肉屋 → 近所にあった気が...*


「面白い提案ですね。でも、その前に腹ごしらえはいかがですか?」


 吸血鬼は首をかしげた。


「血以外は摂取しないのでね」


「でも、せっかくの鬼ごっこです。お互い腹が減っては戦もできませんよ。私のおごりです」


 *なぜか説得に応じる吸血鬼。*


 ---


 ☆ 第二幕:反対尋問


「原告に質問いたします」デビッド弁護士が立ち上がった。「被告と会った瞬間、あなたが吸血鬼だと相手は気づいていたのですね?」


 ヴラド・インペイラーは証言台で頷いた。「間違いありません。私の牙を見て明らかに動揺していました」


「ということは」デビッド弁護士の目が鋭く光った。「被告は吸血鬼であるあなたを、わざわざにんにくと焼き肉の匂いが充満する店に連れて行ったのですね?」


「その通りです」


「これは明らかに殺人未遂です!」


 ---


 **【フラッシュバック:焼き肉屋『牛角太郎』にて】**


 *店に入った瞬間、吸血鬼は苦悶の表情を浮かべた。*


「君...まさか...」


「いらっしゃいませ!」店員の声が響く。「お二人様ですね!禁煙席と喫煙席、どちらがよろしいですか?」


「禁煙で」私は答えた。タバコの煙で吸血鬼の苦痛が紛れてはいけない。


 吸血鬼は席に着くや否や、テーブルに突っ伏した。


「にんにく...焼き肉...この組み合わせは...」


「大丈夫ですか?」私は心配そうに声をかけた。実際、少し心配になっていた。


「君は...何者だ...?」


「ただの会社員です。でも、鬼ごっこは中止ということで」


 *吸血鬼は力なく頷いた。*


 ---


 ☆ 第三幕:逆転


 私の弁護士がようやく立ち上がった。


「異議あり。原告は被告に鬼ごっこを提案しています。これは事実上の脅迫にあたるのではないでしょうか」


「却下」裁判長が答えた。「鬼ごっこは合法的な遊戯です」


 私は再び立ち上がった。


「異議あり!!!!」


「被告、何度も申し上げますが...」


「聞いてください!」私は叫んだ。「彼は鬼ごっこと言いましたが、実際は『追いかけっこ』をするつもりだったんです。つまり、私を餌として追い回すつもりだった!これこそ殺人予備罪です!」


 法廷がざわめいた。


 ---


 **【フラッシュバック:焼き肉屋での別れ際】**


 *回復した吸血鬼は立ち去り際に振り返った。*


「君、なかなかやるじゃないか。今度は昼間に会おう」


「昼間は無理でしょう?」


「...そうだった」


 *去り際、彼は名刺を差し出した。『ヴラド・インペイラー 夜間コンサルタント』*


「何かあったら連絡してくれ。ただし夜間のみだが」


 ---


 ☆ 第四幕:和解


 結局、双方の弁護士が話し合い、和解することになった。


「被告は原告に対し、焼き肉代3,500円を支払うこと」


「原告は被告に対し、深夜の路上での無差別鬼ごっこ勧誘を慎むこと」


 私とヴラドは法廷で握手を交わした。


「君、実は私、昼間の仕事を探しているんだ」


「日光は大丈夫なんですか?」


「日焼け止めSPF50を塗れば何とか...」


「うちの会社、夜勤のセキュリティガードを募集してますよ」


「本当かい?!」


 裁判長が木槌を叩いた。


「閉廷!」


 ---


 ☆ エピローグ


 三か月後、ヴラドは私の会社の夜間警備員として働いている。同僚たちは彼を「牙の生えた変わった人」だと思っているが、誰も吸血鬼だとは気づいていない。


 私たちは時々、今度は普通の居酒屋で飲む約束をしている。ただし彼は血しか飲まないので、トマトジュースばかり注文するのだが。


「君のおかげで、まともな職に就けたよ」


「お互い様です。あの夜は怖かったんですから」


「今度はちゃんとした鬼ごっこをしよう。昼間の公園で」


「それ、あなたには無理でしょう」


「...そうだった」


 私たちは笑った。東京の夜空に、二人の笑い声が響いた。


 ---


 *※この物語はフィクションです。実在の吸血鬼、焼き肉屋、法廷とは一切関係ありません。*

プロンプト

「『異議あり!!!!』。これは数日前、場所は東京、夜中に吸血鬼と遭遇した私。吸血鬼は私に対して鬼ごっこを提案する。私は夜に吸血鬼から逃れるために、思考を巡らせる。吸血鬼の弱点は日光。朝まで逃げれば勝てる。しかし、逃げきれる保証はない。吸血鬼の弱点はいくつもあるが、結局あそこしかない。そう焼き肉屋だ。私は撃退できたのだったが、敏腕吸血鬼によって裁判沙汰になる。「被告は被害者を無理やり焼き肉屋に連れて行った」。追及される私。「会った瞬間に吸血鬼と分かっていたなら焼き肉屋に行くのは死を意味するのでは?」。ドラマ「LOST」のようなフラッシュバックで、このプロットを元にシリアスコメディ短編小説を書きましょう。」

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