表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
565/620

『いきなり吸血鬼に襲われたらステーキ屋に逃げ込め!!!』

 ○ 第一章 真夜中の遭遇


 沖縄の国際通りに、午前2時の静寂が漂っていた。観光客で賑わう昼間とは打って変わって、街灯だけが寂しく道を照らしている。


「はぁ...残業で終電逃すなんて最悪だ」


 私は重いカバンを肩にかけ、タクシーを探しながら歩いていた。そのとき、背後から不気味な笑い声が聞こえてきた。


「くくく...美味しそうな血の匂いがするじゃないか」


 振り返ると、そこには黒いマントを羽織った怪しい人影が立っていた。顔は青白く、口元から鋭い牙がのぞいている。


「え...まさか...吸血鬼?」


「その通りだ、人間よ。私はヴラド・ツェペシュ13世。本日この地に降り立った高貴なる吸血鬼である」


 なんて厨二病っぽい自己紹介だ。しかし、その超人的な雰囲気は本物のようだった。


「待て待て、これは夢だろ?沖縄に吸血鬼なんて...」


「夢ではない。だが安心せよ。私は血に飢えているが、スポーツマンシップを重んじる紳士でもある」


 ヴラドと名乗る吸血鬼は、なぜか胸を張って続けた。


「そこで提案だ。鬼ごっこをしよう。朝日が昇るまでお前が逃げ切れば、お前の勝ちだ。捕まれば...」


 牙をちらつかせる吸血鬼。選択肢なんてあるわけがない。


「分かった...やるよ」


「では30秒数えよう。1、2、3...」


 ○ 第二章 逃走開始


 私は全力で走り出した。頭の中で吸血鬼の弱点を思い返す。


「そうだ、吸血鬼の弱点は...ニンニク、十字架、流水、日光...」


 でも今は真夜中。日光なんて6時間後だ。ニンニクや十字架なんて持ってるわけがない。


「30!もういいかい?」


 後ろから甲高い声が響く。振り返ると、ヴラドが蝙蝠の群れに変身して追いかけてくるのが見えた。


「うわあああああ!」


 私は必死に街を駆け抜けた。しかし、空を飛べる相手に地上で勝てるわけがない。だんだん距離が縮まってくる。


 そのとき、ふと前方に看板が見えた。


「あそこだ!」


 赤いネオンサインが夜に浮かび上がっている。


『炭火焼ステーキハウス 肉々亭 24時間営業』


「ステーキ屋...そうだ!吸血鬼の最大の弱点は...」


 ○ 第三章 肉々亭への避難


 私は勢いよくステーキ屋の扉を開けた。


「いらっしゃいませ!」


 店内は暖かい照明に包まれ、炭火の香ばしい匂いが立ち込めている。カウンターには巨大な肉の塊がずらりと並んでいた。


「あの...すみません、ちょっと変な人に追いかけられてて...」


「はいはい、よくあることですよ。とりあえずお席へどうぞ」


 慣れた様子の店主。沖縄の夜は色々あるらしい。


 そのとき、店の外で蝙蝠の群れがガラス窓にぶつかる音がした。しかし、なぜか店内には入ってこない。


「くっ...卑怯な真似を...」


 ヴラドの声が外から聞こえる。やはり入れないようだ。


「なぜだ...なぜ入れない...」


 吸血鬼が困惑している隙に、私は店主に事情を説明した。


「なるほど、吸血鬼ですか。それなら当然ですね」


「当然?」


「うちはステーキ屋ですから、店内はニンニクの匂いで充満してるんですよ。それに...」


 店主は壁を指差した。そこには大きな牛の頭蓋骨が飾られている。


「あれ、牛の頭蓋骨でしょ?よく見ると十字架の形に見えませんか?」


 言われてみれば、確かに十字架っぽい。


「それから、うちの特製ソースには大量のニンニクとハーブが入ってまして...あ、それと厨房の換気扇から流れる水蒸気も、流水効果があるんじゃないでしょうか」


「つまり、ここは吸血鬼にとって最悪の環境ってことですか?」


「そういうことです。お客さん、なかなか頭いいですね」


 ○ 第四章 意外な展開


 外では吸血鬼が悔しそうにうろうろしている。


「この匂い...ニンニクか...それに十字架の気配も...くそう」


 しかし、しばらくすると諦めたのか、ヴラドは人間の姿に戻って店の前のベンチに座り込んだ。


「なんか...可哀想になってきました」


 私は店主に相談した。


「それなら、テイクアウトでサラダでもどうですか?吸血鬼なら野菜くらい食べられるでしょう」


「でも、お金が...」


「いいですよ、今日は特別サービスです」


 店主は優しい笑顔で野菜サラダを作ってくれた。


 私は恐る恐る店の外に出て、ベンチのヴラドに声をかけた。


「あの...お腹空いてません?」


「え?」


「サラダですけど...どうぞ」


 ヴラドは困惑した表情で受け取った。


「なぜ...敵である私に...」


「いや、なんか一人で寂しそうだったので」


 ヴラドはサラダを一口食べて、目を輝かせた。


「これは...美味い!こんな味は初めてだ!」


「よかった。ところで、なんで沖縄に?」


「実は...観光で来たんだ。ルーマニアから初めての海外旅行で...」


 なんと、ただの観光客だった。


 ○ 最終章 夜明けと友情


 結局、私たちは朝まで話し込んだ。ヴラドは意外にも気さくな性格で、ルーマニアの話や吸血鬼の生活について色々教えてくれた。


「そういえば、鬼ごっこはどうなったんですか?」


「もうどうでもいい。君と話していた方が楽しかったよ」


 東の空が明るくなり始めた。


「あ、日光が...大丈夫ですか?」


「実は日焼け止めを塗ってるから少しは平気なんだ。最近の吸血鬼は進歩してるからね」


 現代的すぎる吸血鬼だった。


「今度、首里城を案内してくれないか?一人だと寂しいんだ」


「もちろんです。でも、もう血を吸おうとしないでくださいよ」


「約束しよう。それより、また肉々亭でサラダを食べたい」


 こうして、沖縄で一番奇妙な友情が生まれた。


 後日、ヴラドは沖縄の野菜にすっかりハマってしまい、ゴーヤチャンプルーを作れるようになったという。吸血鬼から草食系になった彼は、今でも毎年沖縄を訪れている。


 そして私は、夜中に困った人がいたらステーキ屋に案内するという、謎のスキルを身につけたのだった。


 ---


 *教訓:いきなり吸血鬼に襲われたら、とりあえずステーキ屋に逃げ込もう。ニンニクと十字架っぽい装飾で案外なんとかなる。そして意外と友達になれるかもしれない。*

プロンプト

「『いきなり吸血鬼に襲われたらステーキ屋に逃げ込め!!!』。場所は沖縄、夜中にいきなり吸血鬼と遭遇した私。吸血鬼は私に対して鬼ごっこを提案する。私は夜に吸血鬼から逃れるために、思考を巡らせる。吸血鬼の弱点は日光。朝まで逃げれば勝てる。しかし、逃げきれる保証はない。吸血鬼の弱点はいくつもあるが、結局あそこしかない。そうステーキ屋だ。このプロットを元にシリアスコメディ短編小説を書きましょう。」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ