『女子高のヴァンパイア』~バッドロマンス~
第一章 退屈な永遠
東京の夜景が窓から見える高層マンションのペントハウス。私、ブラッド・マウンテンは赤ワインを一口含み、窓の外を眺めていた。三百年以上生きていると、人間界のあらゆる娯楽も色あせて見えてくるものだ。
「退屈だな…」
私は高貴な吸血鬼。吸血鬼の中でも保守派と呼ばれる古い血筋の持ち主で、人間界のあらゆる分野——音楽、美術、文学、科学、経済学——を極めてきた。優雅に生きることを信条とし、礼儀を重んじるが、時にはノリのいい一面も持ち合わせている。
しかし最近は、生き血を吸う日々もマンネリ化していた。
「そろそろ新しい刺激が欲しいところだな」
そう呟いた夜、運命は私に思わぬ形で訪れた。
第二章 涙する校長と取引
新宿の裏路地。今夜の獲物を物色していた私は、フラフラと歩く中年男性を見つけた。スーツ姿で、肩を落とし、明らかに何かに打ちひしがれている。
「今夜はあなたから頂くとしよう」
私が男に近づき、肩がぶつかった瞬間、男は何かが堰を切ったように泣き出した。
「すみません…すみません…もう、どうしていいか分からなくて…」
「あなたの悩みを聞こうか」
私が言うと、男はまるで待っていたかのように話し始めた。
「私は都内の私立桜花女子高等学校の校長の佐々木と申します。実は大変なことになってしまいまして…」
佐々木校長は長々と説明した。彼の部下である新任教師が淫行疑惑で警察に逮捕されたという。しかし、彼はその教師が真面目で、そんなことをするような人間ではないと信じていた。
「今の時期に新任の教師として生徒を教えてくれる、容姿もパーフェクトで優秀な教師などいるはずがありません。ましてや、部下の淫行疑惑を調査して秘密裏に無実を証明できるような正義感のある漢などいるハズなんてない…」
流石、校長先生、話が長い。たぶん、全校集会で話が長いと言われているに違いない。
「目の前にいるぞ」
私は微笑んだ。校長は目をパチクリさせた。
「え?」
「私が代わりに教壇に立とう。そして、真相も究明してみせよう」
校長は半信半疑の表情を浮かべた。
「しかし、あなたのご経歴は…?」
「心配ない。私は東大卒で、海外の一流大学で博士号も取得している。語学も堪能だ。何を教えればいい?」
これは嘘ではない。三百年生きていれば、学位の一つや二つ取得するのは朝飯前だ。
「音、音楽の教師なのですが…」
「バッハから最新のJ-POPまで任せろ」
こうして私は、桜花女子高等学校の新任音楽教師となる契約を交わした。正確には、吸血鬼の催眠術で校長の記憶を少し書き換えただけだが。
第三章 王子様、登場
翌日、私はスーツに身を包み、桜花女子高に赴任した。もちろん、特殊な日焼け止めをした上で。
「皆さん、今日から音楽を担当するブラッド・マウンテンです。よろしく」
教室内がざわめいた。女子高生たちの視線が刺さる。催眠術なしでも、三百年の経験で培った立ち振る舞いと容姿は人間を魅了するに十分だった。
「王子様みたい…」
「イケメン…」
「海外帰り?」
噂はまたたく間に学校中に広まった。「王子」というあだ名まで付けられた。
授業では、クラシック音楽の魅力を伝えつつ、現代音楽との融合についても語った。百年前にモーツァルトと酒を飲みながら議論したことなど言えないが、その経験は確かに授業に深みを与えていた。
放課後、職員室へ戻ると、他の教師たちからも注目の的となっていた。
「マウンテン先生、もう生徒たちの人気者ですね」
体育教師の山田が言った。私は謙遜して微笑むだけだった。しかし、内心では「淫行疑惑の教師」について情報を集めていた。
第四章 陽花里での会話
それから数週間が経過した。私は学校になじみ、生徒たちからの信頼も厚くなっていた。校長から聞いた話によると、逮捕された教師・鈴木は、ある女子生徒と不適切な関係を持ったとして告発されたという。
ある日の放課後、私は校内を巡回していた。音楽室の前を通りかかると、二人の女子生徒の会話が聞こえてきた。
「ああ、昨日音楽室であの方に会ったの」
「マウンテン先生?」
「そう、超カッコよかった…」
「そういえば陽花里って今日も空いてるかな?一緒に行かない?」
陽花里——校外にある喫茶店の名前だった。生徒たちの溜まり場らしい。情報収集のいい機会かもしれない。
翌日、私は変装して陽花里を訪れた。奥の席に座り、耳を澄ます。
「ねえ、知ってる?鈴木先生の事件のこと」
「あれって本当なの?」
「私、信じられないんだけど…」
「でも告発したのは三年の松田さんでしょ?彼女、嘘つくタイプじゃないよ」
「そうなんだ…」
興味深い情報だ。松田という生徒が告発者か。翌日から、私は彼女について調査を始めた。
第五章 真相への糸口
学校の記録によると、松田優子は三年生で、成績優秀な生徒だった。生徒会役員も務め、教師からの評判も良い。しかし、鈴木教師の淫行疑惑が浮上した頃から、彼女は授業を休みがちになっていた。
職員室で、進路指導の先生に何気なく尋ねてみた。
「松田さんは最近元気がないようですね」
「ああ、あの子か。確かに少し様子が変わったね。実は鈴木先生のことでショックを受けたんじゃないかと…」
「鈴木先生と彼女は何か関係が?」
「いや、そういうわけじゃないが…彼女、音楽が好きでね。鈴木先生の指導をよく受けていたんだ」
そして、ある日の夕方。私は音楽室で一人ピアノを弾いていた。バッハのフーガを演奏していると、誰かが入ってきた。振り返ると、松田優子だった。
「マウンテン先生…素敵な演奏です」
「ありがとう、松田さん」
「先生は鈴木先生の代わりに来たんですよね?」
私は演奏を止め、彼女を見つめた。
「そうだが、なぜ聞く?」
「鈴木先生は…悪くないんです」
彼女の目には涙が浮かんでいた。
「本当のことを知りたいなら…これを見てください」
松田はスマートフォンを取り出し、ある画像を見せた。そこには鈴木教師と別の女子生徒・佐藤明美とのやり取りが写っていた。
真相が見えてきた。
第六章 吸血鬼の推理
翌日、私は佐藤明美を音楽室に呼び出した。
「佐藤さん、君と鈴木先生の関係について話を聞きたい」
彼女は驚いた表情を見せたが、やがて泣き崩れた。
「私たち…付き合ってたんです。でも先生は『卒業するまで内緒にしよう』って…」
「そして松田さんがそれを知ったんだな?」
「はい…松田さんは鈴木先生のことが好きだったんです。でも先生は私を選んで…」
逆恨みによる告発——シンプルだが厄介な問題だ。
しかし、まだ謎が残っていた。なぜ松田は今になって真相を明かそうとしたのか?
答えは意外なところにあった。佐藤が続けた。
「松田さん、最近後悔してるみたいなんです。『自分が何をしたか分かっていなかった』って…」
その夜、私は松田の家を訪れた。窓から忍び込み、彼女の前に現れる。
「きゃっ!マ、マウンテン先生?なぜここに…?」
「真相を確かめに来た」
「…」
「君は嫉妬から鈴木先生を告発した。だが今は後悔している」
彼女は泣き出した。
「私、どうしたらいいか分からなくて…先生を好きになって、でも佐藤さんと付き合ってるって知って…頭が真っ白になって…」
「真実を警察に話せばいい」
「でも、虚偽告発になって…私、逮捕されちゃう…」
私は微笑んだ。
「大丈夫、方法はある」
第七章 ダンディな解決法
翌日、私は警察署を訪れた。鈴木教師の担当刑事と面会し、松田からの手紙と佐藤と鈴木のやり取りを提出した。そして、ほんの少しだけ吸血鬼の力を使った。
「この事件は再調査の必要がありますね」
刑事はうなずいた。催眠術の効果だ。
一週間後、鈴木教師は釈放された。学校に戻った彼は私に深々と頭を下げた。
「マウンテン先生、本当にありがとうございました」
「礼には及ばない。しかし、生徒と交際するのはやめたまえ。卒業してからにしなさい」
彼は顔を赤らめながら頷いた。
松田と佐藤の二人には、別々に話をした。
「人は間違いを犯す。大切なのは、それを認めて償う勇気だ」
二人は頷き、和解の道を歩み始めた。
終章 退屈な永遠からの解放
学期末、私は桜花女子高を去ることにした。
「マウンテン先生、本当に辞めてしまうんですか?」
「王子様、残って下さい!」
女子生徒たちが惜しむ声をあげる。
「君たちには素晴らしい未来がある。私はまた別の場所で必要とされている」
最後の挨拶を終え、校門を出ると、校長が追いかけてきた。
「マウンテン先生、本当にありがとうございました。しかし、あなたは一体…」
私は微笑んだ。
「ただの通りすがりの音楽教師さ」
その夜、私は高層マンションのペントハウスで再びワイングラスを傾けた。窓の外の夜景は、以前よりも鮮やかに見える。
「退屈な永遠も、たまには悪くないな」
血液型でいえばB型、吸血鬼でいえば保守派の私、ブラッド・マウンテンは、人間界での短い冒険を思い返しながら、静かに微笑んだ。
プロンプト
「『女子高の王子』~ヴァンパイアとバッドロマンス~。場所は東京。ここは男子禁制の私立女子高。しかし、生徒たちの間で王子と言われている新任のイケてるナイスガイな教師がいた。「ああ、昨日音楽室であの方に会ったの」。同級生の洋子が言う。「そういえば陽花里って今日も空いてるかな?一緒に行かない?」。時間は数か月前に遡る。私は吸血鬼のブラッド。夜の帝王。今日も人間の生き血を吸う。しかし、最近マンネリ化してきた。そのとき、フラフラと歩く中年男性。ぶつかると、何かが堰を切ったように泣き出す。「私の部下である新任教師が淫行疑惑で警察に逮捕されてしまった。しかし、彼は真面目でそんなことをするような人間ではない。私は都内の女子校の校長だが、今の時期に新任の教師として生徒を教えてくれる容姿もパーフェクトで優秀な教師などいるはずがない。ましてや、部下の淫行疑惑を調査して秘密裏に無実を証明できるような正義感のある漢などいるハズなんてない」。長い。流石、校長先生、話が長いし説明も詳細。たぶん、全校集会で話が長いと言われているはずだ。いい年して泣く中年男性を見て私は言った。「目の前にいるぞ」。新任の早々、学校中の話題をかっさらう私。物語の途中、喫茶店『陽花里』で話す生徒。オチ、それは新任の教師に振られた生徒の逆恨みだった。その生徒は新任教師と別な生徒の交際を知ってそれを告発した。私は吸血鬼的にダンディに解決する。このプロットを元にシリアスコメディ短編小説を書きましょう。
登場人物:
・私こと吸血鬼ブラッド・マウンテン:高貴な吸血鬼、あらゆる分野を極める律儀で礼儀を重んじるノリのいい吸血鬼。ナイスガイ。血液型でいえばB型、吸血鬼でいえば保守派。三百年以上生きている。」




