『撮り鉄と吸血鬼』~爆裂フラッシュ!~
■ 第一章 深夜の邂逅
東京の夜は深い。午前2時を回った渋谷の片隅で、俺は震えていた。名前は田中ケンジ、24歳、職業はシステムエンジニア。趣味はアニメ鑑賞とゲーム、そして...まあ、今となってはどうでもいい。
目の前に立つのは、まさに漫画から飛び出してきたような美しい吸血鬼だった。長い銀髪、血のように赤い瞳、そして口元からちらりと覗く牙。
「人間よ、退屈しのぎに鬼ごっこをしないか?」
彼女の声は夜風のように冷たく、しかし妙に色っぽい。俺の二次元脳は一瞬「これはご褒美では?」と思考したが、すぐに現実に引き戻された。
「ルールは簡単。朝まで私から逃げ切れば、君の勝ち。捕まれば...」
彼女の牙がきらりと光る。
「血を吸われて、永遠の下僕となるのだ」
俺の頭の中で、これまで見たホラー映画の知識が高速回転する。吸血鬼の弱点...十字架、にんにく、流水、そして何より日光!
「朝まで逃げ切れば勝てる...」俺は心の中で呟いた。
「では、10秒数えよう。10、9、8...」
俺は慌てて駆け出した。
■ 第二章 逃走開始
渋谷の夜の街を駆け抜ける。幸い、深夜とはいえ東京だ。24時間営業のコンビニやファミレスが俺の味方になってくれる...はずだった。
「7、6、5...」
後ろから聞こえる吸血鬼の声が、まるでスピーカーから流れているかのように鮮明に聞こえる。超人的な能力、間違いない。
「4、3、2...」
俺は必死に考えた。朝まであと5時間。果たして逃げ切れるのか?相手は不死身の化け物、こちらは運動不足のオタク。勝算は...
「1、0!さあ、ゲーム開始だ!」
突然、背後から風が吹いた。振り返ると、吸血鬼が宙に浮いている。
「飛べるのかよ!」
俺は絶望した。これはもう詰みゲーだ。しかし、諦めるのはまだ早い。吸血鬼の弱点を思い出せ。十字架は持っていない、にんにくも今は無い、流水...川?
そうだ、隅田川だ!
■ 第三章 川辺の攻防
必死に隅田川へ向かって走る。後ろから聞こえる「クックック」という不気味な笑い声が、俺の恐怖心を煽る。
ようやく川辺に到着した時、俺は既に息も絶え絶えだった。
「なるほど、流水に逃げ込むつもりか。賢いじゃないか、人間よ」
吸血鬼は川の向こう岸にふわりと着地した。やはり流水は渡れないようだ。
「だが、君はそこから動けない。朝まで川の中にいるつもりかい?」
確かにその通りだった。6月とはいえ、夜の川は冷たい。このまま朝まで持つだろうか?
「それに...」吸血鬼はにやりと笑った。「私は気長に待つのが得意なのだよ」
俺は青ざめた。このままでは体力が持たない。他に方法は...
その時だった。
■ 第四章 救世主登場
「カシャッ!」
突然、強烈なフラッシュが夜空を照らした。
「うわあああああ!」
吸血鬼が悲鳴を上げて後ろに飛び退く。
「おい!そこのお前!川で何やってんだ危ないだろ!」
振り返ると、大きなカメラを構えた男性が立っていた。鉄道オタク特有のチェックシャツに、首からぶら下げた巨大な望遠レンズ。間違いない、撮り鉄だ!
「え、えっと...」
「まったく、夜中に川遊びとは...って、あれ?向こうにいるのは何だ?」
撮り鉄の男性が吸血鬼の方を見る。
「うむ、美人だな。コスプレイヤーか?いい感じに撮れそうだ」
男性がカメラを向けると、吸血鬼は慌てふためいた。
「やめろ!フラッシュは...」
「カシャッ!」
再び強烈な光が夜を切り裂く。
「ぎゃああああああ!」
吸血鬼は煙を上げながら後退した。
■ 第五章 撮り鉄軍団
「おお!田中じゃないか!」
川から上がった俺に声をかけたのは、会社の同僚だった野村だった。
「野村?なんでこんなところに?」
「決まってるだろ、始発の撮影だよ。今日は新しい車両のテスト運行があるんだ」
よく見ると、野村の後ろには同じような格好をした男性たちが十数人いた。全員が高級そうなカメラを持っている。
「あの、実は...」
俺は事情を説明した。最初は信じてくれなかった撮り鉄たちも、向こう岸で煙を上げている吸血鬼を見て、ようやく理解してくれた。
「なるほど、吸血鬼がフラッシュに弱いということか」
撮り鉄のリーダー格らしい男性が言った。
「それなら話は簡単だ。我々撮り鉄の武器は、このカメラのフラッシュ!」
「そうだ!」「やってやろう!」
撮り鉄たちが一斉にカメラを構える。
■ 第六章 爆裂フラッシュ作戦
「人間ども!卑怯な真似を...」
吸血鬼が抗議しようとした瞬間、撮り鉄軍団が一斉にシャッターを切った。
「せーの!」
「カシャッ!カシャッ!カシャッ!」
十数台のカメラが同時に光る様は、まさに爆裂フラッシュ!夜が昼間のように明るくなった。
「うわああああああ!」
吸血鬼は完全に形勢逆転され、必死に逃げようとする。
「逃がすか!追撃だ!」
撮り鉄たちが川に沿って走り始める。吸血鬼も必死に逃げるが、流水があるため自由に動けない。
「カシャッ!カシャッ!」
連続するフラッシュ攻撃に、吸血鬼は完全に劣勢だった。
■ 第七章 夜明け
「もう...だめだ...」
吸血鬼がついに力尽きて膝をついた時、東の空が白み始めた。
「あ、夜明けだ」
俺が空を見上げると、美しい朝焼けが広がっていた。
「まずい...日光が...」
吸血鬼は慌てて逃げようとしたが、もう遅かった。朝日が彼女を照らすと、彼女の体は光の粒子となって消えていく。
「覚えていろ...人間ども...必ず...復讐を...」
最後の捨て台詞と共に、吸血鬼は完全に消え去った。
■ 第八章 平和な朝
「やったあ!」
撮り鉄たちが歓声を上げる中、俺はほっと一息ついた。
「いやあ、まさか吸血鬼退治に参加することになるとは思わなかったよ」野村が笑いながら言った。
「しかし、我々のフラッシュがこんなに役に立つとはな」
リーダーが誇らしげに胸を張る。
「ところで田中、君も撮り鉄を始めてみないか?カメラは護身用にもなるぞ」
「え、えっと...」
俺は困惑した。確かに今回は撮り鉄たちに救われたが、俺は鉄道にはそれほど興味が...
「そうだ!今度の休みに一緒に撮影に行こう!」
「新しい仲間だ!」
撮り鉄たちに囲まれながら、俺は苦笑いを浮かべた。
■ エピローグ 新たな日常
それから一週間後、俺は小さなデジタルカメラを持って駅のホームに立っていた。
「田中!こっちだ!」
野村が手を振っている。周りには例の撮り鉄軍団が集まっていた。
「今日は良い写真が撮れそうだな」
リーダーが空を見上げて言った。
「でも、また吸血鬼が出たらどうしよう...」俺がつぶやくと、
「その時は我々撮り鉄軍団が守ってやる!」
みんなが笑い声を上げた。
「カシャッ!」
誰かがシャッターを切る音が響く。平和な朝の風景だった。
そんな俺の新しい日常は、あの夜の奇妙な出来事から始まったのである。
ちなみに、俺の撮った写真は全部ピンボケだったが、それはまた別の話。
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*あとがき:この物語に登場する撮り鉄の皆さんは、実在の撮り鉄の方々とは一切関係ありません。また、実際の吸血鬼がフラッシュに弱いかどうかは不明です。*
プロンプト
「『撮り鉄と吸血鬼』~爆裂フラッシュ!~。場所は東京、夜中に吸血鬼と遭遇した私。吸血鬼は私に対して鬼ごっこを提案する。私は夜に吸血鬼から逃れるために、思考を巡らせる。吸血鬼の弱点は日光。朝まで逃げれば勝てる。しかし、逃げきれる保証はない。吸血鬼の弱点はいくつもあるが、結局あれしかない。そう撮り鉄だ。撮り鉄たちがヒーローっぽく助けてくれる。主人公はオタク。このプロットを元にシリアスコメディ短編小説を書きましょう。」




