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『バチェラー』~近畿地方で撮影されたある禁忌な番組について~

 ■ 第一章 運命の出会い


 東京の夜は私、ブラッド・マウンテンにとって最高の狩り場だった。高貴なる吸血鬼として、人間の生き血を吸い続けてきたが、最近は正直なところマンネリ化が否めない。いつもの獲物では物足りなくなってきたのだ。


 そこで今夜は趣向を変えて、業界風なプロデューサーを狙うことにした。あの手の人種は癖が強く、逃げ惑う様も一味違うだろう。血を吸うだけでなく、珍しい反応も楽しめるはずだ。


 渋谷の雑踏を優雅に歩いていると、目に飛び込んできたのは実に時代錯誤な格好をした男だった。ピンクのカーディガンを首に巻き、サングラスをかけた、まさに「昭和テレビマン」といった風貌である。


「やあ、時代外れなプロデューサーさん」


 私が声をかけた瞬間、男は振り返ろうとして空中に舞った。まるでコントのような動きだったが、着地に失敗して見事に捻挫してしまった。


「うわああああ足がああああ!」


 男は地面に倒れ込みながら叫んだ。


「俺は蛆テレビプロデューサーの田中だ!オールドメディアの中でも落ち目の部署にいる哀れな男!今日は社運を賭けた企画のためのオーディションをしようとしていたんだ!」


 田中と名乗った男は、まるで昭和の大根役者のような大仰な身振りで説明を始めた。


「イケメン男子たちを集めて、その中からイケている男を一人選ぶ。そして女性たちとゴージャスでロマンチーーーーーックなデートをしながら過酷な恋愛バトルを繰り広げていくイケイケな企画だったんだ!しかし、誰一人としてイケイケな男は集まらなかった!」


 どこかで聞いたことのある企画である。


「もう無理だと思った矢先、お前に声を掛けられて振り返って捻挫してしまった。これでは休職するしかない。お前が責任を取ってイケイケな男を用意して番組を作れ!」


 なるほど、高圧的かつ調子のいい保身術を発揮している。昔のオールドメディア全盛期からまったくアップデートされていない選民的な精神構造が実に興味深い。


「いいだろう。引き受けた」


 私は決断した。番組プロデューサー兼主役として、この企画を成功させてみせよう。


 ■ 第二章 制作開始


 翌日、蛆テレビの会議室で企画会議が開かれた。田中プロデューサーは松葉杖をつきながら、偉そうに指示を出している。


「ブラッド君、君がメインバチェラーだ。そして君の魅力で女性陣を虜にするんだ!」


「承知いたしました」


 私は丁寧に答えた。吸血鬼として、礼儀は重んじるものである。


 参加者の女性陣は、いずれも高学歴高スペックな美女ばかりだった。東○大学法学部卒の弁護士、医師、外資系コンサルタント、国際政治学者など、まさにエリート中のエリートである。


 しかし、彼女たちには共通点があった。皆、どこか高飛車で、自分の価値を過信している節があるのだ。


「私、年収は2000万円以上の男性としかお付き合いしませんの」


「学歴は最低でも旧帝大卒でないと話が合いませんわ」


「海外経験がない男性は視野が狭いので論外ですね」


 彼女たちの会話を聞きながら、私は内心苦笑していた。


 ■ 第三章 予想外の展開


 番組の撮影が始まった。近畿地方の豪華なマンションを舞台に、バチェラー(私)と女性陣との恋愛バトルが繰り広げられる予定だった。


 ところが、撮影スタッフとして雇われた男性陣が問題だった。カメラマンの佐藤、音響の田村、照明の山田、ADの鈴木など、女性ではなく、皆なぜか私に興味を示し始めたのだ。


「ブラッドさんって、すごく紳士的ですよね」


「その上品な話し方、どこで身につけたんですか?」


「吸血鬼っていう設定も面白いし、本当にカリスマ性がありますね」


 私の律儀で礼儀正しい態度、そしてどこか神秘的な雰囲気が、彼らの心を掴んでしまったようだ。


 一方、高飛車な女性陣は私の関心を引くことができずにいた。彼女たちは自分たちの価値観で私を値踏みしようとしたが、私は数百年を生きる吸血鬼である。人間の浅薄な価値観など、とうに超越していた。


「あの、ブラッド様」


 医師の麗子が媚びるような声で話しかけてきた。


「私、ハーバード大学で研修を受けたことがあるんですの。きっと共通の話題があると思いますわ」


「そうですか。しかし申し訳ございませんが、今は撮影スタッフの皆さんとの打ち合わせが」


 私は丁寧に断りながら、カメラマンの佐藤の方を向いた。


「佐藤さん、次のシーンの構図についてですが」


「は、はい!ブラッドさん!」


 佐藤の顔が赤らんだ。完全に恋に落ちている。


 ■ 第四章 崩壊する企画


 撮影が進むにつれて、事態はさらに混沌とした。


 男性スタッフたちは私を取り合うように、より良いアングルで撮影しようと競い合った。照明の山田は私をより美しく見せるために特別なライティングを研究し、音響の田村は私の声を最高の音質で録音するために機材を厳選した。


「ブラッドさんのために、最高の作品を作りたいんです!」


 彼らの熱意は本物だった。私も彼らの熱意に応えるために、最高のポージングと演出を考える。


 一方、女性陣は完全に置いてけぼりになっていた。番組の主旨を理解している彼女たちは、私にアプローチを続けたが、私の関心は明らかに男性スタッフたちに向いていた。


「何なのよ、この展開!」


 弁護士の由美が苛立ちを隠せずに叫んだ。


「せっかく番組に出演してるのに、バチェラーは私たちじゃなくてスタッフとばっかり話してるじゃない!」


「これじゃあ私たちの立場がないわ」


 外資系コンサルタントの真理も困惑していた。


 田中プロデューサーは松葉杖をつきながら慌てふためいていた。


「ちょっと待て!これは恋愛リアリティショーだぞ!男同士で何をやってるんだ!」


「申し訳ございません、田中さん」


 私は丁寧に頭を下げた。


「しかし、人の心は思い通りにはならないものです。彼らの純粋な気持ちを無視するわけにはいきません」


 ■ 第五章 奇跡の大逆転


 番組は完全に迷走していた。しかし、編集担当の女性スタッフが一つの提案をした。


「これ、むしろBL的な雰囲気で舞台裏も込みで編集したらどうでしょうか?」


「BL?」


 田中プロデューサーが首をかしげた。


「ボーイズラブです。男性同士の美しい関係を描いたコンテンツで、女性に大人気なんです。特に貴婦人層、つまり経済力のある大人の女性たちが熱狂的なファンなんですよ」


 編集の結果、番組は予想外の傑作となった。私と男性スタッフたちの美しい友情、そして高飛車な女性陣が完全に蚊帳の外に置かれるシュールな構図が、絶妙なコメディとして機能したのだ。


 放送後、番組は大反響を呼んだ。


「あのブラッド様の上品さに男性陣が魅了される展開、最高でした!」


「女性陣が置いてけぼりになってるのも面白い!」


「あの禁忌な雰囲気がたまりません!」


 貴婦人たちからの熱烈な支持により、番組の続編制作が決定した。


 ■ エピローグ


 番組の成功により、田中プロデューサーは社内で一躍ヒーローとなった。松葉杖を誇らしげにつきながら、偉そうに歩き回っている。


「やはり俺の企画眼は間違っていなかった!」


 彼は自分の手柄のように語っているが、もちろん私は何も言わない。


 私は今でも番組の続編に出演している。男性スタッフたちとの美しい関係を演じながら、時折彼らの血をこっそりと頂戴している。彼らは私に血を吸われることさえも至福の時間だと感じているようだ。


「ブラッド様に選ばれるなんて、光栄です」


 佐藤がうっとりした表情で言った。


 私は紳士的に微笑みながら答えた。


「こちらこそ、皆さんのおかげで充実した夜を過ごさせていただいております」


 夜の帝王として、そして番組のプロデューサーとして、私の新しい生活が始まったのである。


 マンネリ化していた吸血鬼ライフは、思わぬ形で刺激的なものとなった。人間という生き物は、本当に予想がつかない。


 それもまた、永遠を生きる私には貴重な体験なのかもしれない。


プロンプト

「『バチェラー!』。場所は東京。私は吸血鬼。夜の帝王。今日も人間の生き血を吸う。しかし、最近マンネリ化してきた。私はふと業界風なプロデューサーを襲うことを思いつく、逃げ惑う癖強なヤツを狩る。血を吸うだけではなく珍しい反応も楽しめる。そのとき、業界風のピンクのカーディガンを首に巻いたサングラスの男を見つけた。「やあ、時代外れなプロデューサーさん」。そのときだった。プロデューサーは空中に舞いながら振り返った。しかし、足をくじいてしまった。「うわああああ足がああああ。俺はオールドメディアの中でも落ち目の蛆テレビプロデューサー。今日は社運を賭けたイケメン男子たちを集めてその中からイケている男を一人選んで、女性たちとゴージャスでロマンチーーーーーックなデートをしながら過酷な恋愛バトルを繰り広げていくイケイケな企画のためのオーディションをしようとしていた。しかし、誰一人としてイケイケな男は集まらなかった。もう無理だと思った矢先、お前に声を掛けられて振り返って捻挫してしまった。これでは休職するしかない。お前が責任を取ってイケイケな男を用意して番組を作れ」。男は高圧的かつ調子のいい保身術を発揮した。「なるほど。どこかで聞いた企画でまさに二番煎じ、そして態度も昔のオールドメディア全盛期からアップデートされていない高圧的かつ選民的な精神構造…いいだろう。引き受けた」。私は番組プロデューサー兼番組の主役としてこの企画を成功させようと決意する。オチ、イケイケな男たちは高飛車な高学歴高スペックないけ好かない女性を放置して、私に惚れてしまう。モテモテだった女性がほっとかれるシュールな場面と男たちの禁忌な雰囲気の構図。番組はBL的な雰囲気になってしまう。しかし、それが貴婦人(腐女子)たちにオオウケする。このプロットを元にシリアスコメディ短編小説を書きましょう。 登場人物: ・私こと吸血鬼ブラッド・マウンテン:高貴な吸血鬼、あらゆる分野を極める律儀で礼儀を重んじるノリのいい吸血鬼。ナイスガイ。血液型でいえばB型、吸血鬼でいえば保守派。」

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