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『メンヘラ吸血鬼に襲われたらフラワーパークに逃げ込め!!!』

 ☆ 第一章 夜の邂逅


 群馬と栃木の境界線上にある繁華街は、午前二時を回っても煌々とネオンが瞬いていた。俺はラーメン屋から出て、愛車のハーレーダビッドソンに跨ろうとしていた時だった。


「あの〜、すみません」


 振り返ると、そこには見るからに病みそうな美少女が立っていた。黒髪ロング、色白、目の下にうっすらクマ。まさにメンヘラという言葉を体現したような容姿だった。


「なんだ?」


「実は私、吸血鬼なんです」


「は?」


「それで、あなたの血を吸いたいんですけど、いきなりだと失礼かと思って...」


 俺は思わず二度見した。この時代に吸血鬼って何だ?コスプレか?しかし、よく見ると確かに犬歯が異様に鋭い。


「でも、いきなり襲うのも味気ないので、鬼ごっこしませんか?私から逃げ切れたら見逃してあげます」


「鬼ごっこって、お前...」


「朝の六時まで逃げ切れたら勝ちです。でも捕まったら、容赦なく血を吸わせてもらいますね♪」


 そう言うと、彼女の目が赤く光った。間違いない、こいつは本物の吸血鬼だ。


 ☆ 第二章 逃走劇の始まり


「じゃあ、十秒数えますから逃げてください。いーち、にーい...」


 俺は慌ててハーレーにまたがり、エンジンをかけた。ブルルルルと野太い音が夜の街に響く。


「きゅーう、じゅー!行きますよー!」


 バックミラーを見ると、吸血鬼少女が異様な速度で追いかけてくる。時速40キロで走っているのに、徒歩で追いつこうとしている。化け物だ。


 しかし俺には秘策があった。吸血鬼の弱点といえば十字架、ニンニク、流水、そして...日光だ。朝まで逃げ切れば勝てる。


 だが待て。朝の六時まであと四時間もある。この化け物から四時間も逃げ切れるだろうか?


 その時、俺の脳裏にひらめいた。


「そうだ、あそこがある!」


 ☆ 第三章 フラワーパークという聖域


 足利フラワーパーク。栃木県足利市にある、藤の花で有名なテーマパークだ。しかし俺が目をつけたのは花ではない。


「吸血鬼の弱点...それは日光だけじゃない!」


 俺は国道293号線を北上し、フラワーパークに向かった。バックミラーには相変わらず吸血鬼少女が映っている。走りながら手を振っている。完全にメンヘラだ。


「待ってくださーい!私、運動苦手なんですー!」


 知るか。


 ☆ 第四章 花の要塞


 足利フラワーパークに到着した時、時計は午前三時を指していた。当然のことながら閉園している。俺は迷わず柵を乗り越えた。


「不法侵入だー!でも追いかけるー!」


 吸血鬼少女も柵を軽々と飛び越えてきた。身体能力が人間離れしている。


 だが、俺には勝算があった。


「おい、吸血鬼!」


 俺は園内の中央で振り返った。吸血鬼少女がゼーゼー言いながら近づいてくる。


「はー、はー...やっと捕まえた...」


「残念だったな。ここは俺の勝ちだ」


「え?」


 俺は指を上に向けた。そこには満開の藤の花が夜空を覆っていた。


「藤の花だ。吸血鬼は藤の花が苦手だろう?」


「え、そうなんですか?知らなかった...」


「知らなかったって、お前吸血鬼だろう!」


「最近なったばっかりで、取扱説明書とかもらってないんです...」


 ☆ 第五章 意外な結末


 吸血鬼少女は藤の花を見上げて困った顔をしていた。


「でも別に何ともないですよ?」


「え?」


「むしろ綺麗だなって思います」


 俺の作戦は完全に破綻した。どうやら藤の花は吸血鬼の弱点ではないらしい。


「じゃあ、血を吸わせてもらいますね」


「待て!まだ朝の六時まで時間がある!」


「そうですけど、もう疲れちゃいました。鬼ごっこやめます」


「やめるって、お前が始めたんだろう!」


「でも血を吸うのもやめます」


「はあ?」


 吸血鬼少女は藤の花を見上げながら言った。


「なんか、こんな綺麗な花を見てたら、血を吸うのがばからしくなっちゃいました」


「意味がわからん」


「それに、あなたすごく優しそうだし...私みたいなメンヘラ吸血鬼の相手をしてくれて、ありがとうございました」


 そう言うと、彼女は深々と頭を下げた。


 ☆ エピローグ


 結局、俺たちは朝まで藤の花の下で話していた。彼女の名前はユリコで、つい最近吸血鬼になったばかりらしい。血を吸うのも実は初めてで、緊張していたという。


「今度、昼間にここに来てみたいです」


「吸血鬼が昼間って大丈夫なのか?」


「日焼け止めを塗れば平気です」


「現代的すぎるだろう、それ」


 朝日が昇り始めた頃、ユリコは帰っていった。


 俺は愛車のハーレーにまたがりながら思った。まさか吸血鬼から逃げるためにフラワーパークに来て、結果的に花見をすることになるとは。


 人生、何が起こるかわからない。


 でも一つだけ確実に言えることがある。


 メンヘラ吸血鬼に襲われたら、とりあえずフラワーパークに逃げ込め。意外となんとかなる。


 ---


 *※この物語はフィクションです。実際に吸血鬼に遭遇した場合の対処法を保証するものではありません。また、テーマパークへの不法侵入は犯罪です。*

プロンプト

「『メンヘラ吸血鬼に襲われたらフラワーパークに逃げ込め!!!』。場所は群馬と栃木の境、夜の繁華街で吸血鬼と遭遇した私。吸血鬼は私に対して鬼ごっこを提案する。私は夜に吸血鬼から逃れるために、思考を巡らせる。吸血鬼の弱点は日光。朝まで逃げれば勝てる。しかし、逃げきれる保証はない。吸血鬼の弱点はいくつもあるが、結局あそこしかない。そうフラワーパークだ。俺は愛車のハーレーダビッドソンに乗って吸血鬼から逃げる。このプロットを元にシリアスコメディ短編小説を書きましょう。」

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