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『吸血鬼に襲われたら、7番アイアンを!!!』

 

 午後11時58分。東京の夜は静寂に包まれていた。


 プロゴルファーの田中誠一郎は、都内のゴルフ練習場からの帰り道、ふと気配を感じて振り返った。街灯の下に、異様に白い肌をした男が立っている。赤い瞳が闇の中で光っていた。


「君、血の匂いがいいね」


 男はにやりと笑い、鋭い牙を見せた。


「うわあああああ!」


 田中は叫んだ。吸血鬼だ。間違いない。テレビで見たまんまの吸血鬼がそこにいる。


「逃げても無駄だよ。でも、面白そうだから鬼ごっこでもしようか?夜明けまで逃げ切れたら見逃してあげる」


 吸血鬼は優雅に手を振る。田中の頭は高速回転した。


(朝まで逃げ切れば勝てる!でも相手は超人的な身体能力を持つ吸血鬼。普通に逃げても捕まる。弱点は...十字架?ニンニク?そんなもの持ってない!銀の弾丸?映画の見すぎだ!)


 その時、肩にかけたゴルフバッグが目に入った。


(そうだ...吸血鬼の真の弱点は...)


「待て!」田中は手を上げた。


「勝負しよう!」


「ほう?」


「ゴルフで勝負だ!もし俺が勝ったら、今後一切人間を襲うな!」


 吸血鬼は腹を抱えて笑った。


「ははは!ゴルフだって?人間よ、君は正気か?」


「吸血鬼の最大の弱点...それは『運動音痴』だろ!」


 吸血鬼の笑いが止まった。


「な...なんだと?」


「考えてみろ!何百年も生きているくせに、スポーツの記録保持者に吸血鬼はいない!オリンピック選手にもいない!身体能力は高いが、『技術』がないんだ!」


 吸血鬼の顔が青ざめた(もともと青白いが)。


「そ、そんなことはない!我は...我は...」


「じゃあ勝負だ!近くのゴルフ練習場で1ホール勝負!パー4、距離350ヤード!」


 ---


 午前12時30分。24時間営業のゴルフ練習場。


 なぜか観客が集まっていた。SNSで「深夜に吸血鬼とゴルフ対決」というツイートが拡散されたらしい。


「おい、本当に吸血鬼かよ?」

「牙すげぇ!」

「でも下手くそそう...」


 吸血鬼は震え声で言った。


「き、緊張などしていない!何百年も生きた我が、たかがゴルフごときで...」


 田中は7番アイアンを握り、深呼吸した。


「俺のドライバーショットを見てろ!」


 スイング!


 ボールは美しい放物線を描き、250ヤード先のフェアウェイ中央に着地した。


 観客:「おおおおお!」

「さすがプロ!」

「吸血鬼、どうする?」


 吸血鬼の番。クラブを握る手が震えている。


「だ、大丈夫だ...スーパーパワーがあれば...」


 スイング!


 ボールは真上に飛び、10メートル先に落ちた。


 観客:「えええええ!」

「超人的身体能力どこいった!」

「これは恥ずかしい!」


 吸血鬼は顔を真っ赤にした(血を吸った直後だったから)。


「う、うるさい!次で決める!」


 2打目。田中は冷静に7番アイアンでピンを狙う。ボールはグリーンに着地し、ピンまで3メートルの絶好位置。


 観客:「うおおおお!」

「これぞプロの技術!」


 吸血鬼は必死にスイング。ボールは明後日の方向に飛んでいく。


「なんでじゃあああ!何百年も生きてるのに!」


 観客:「吸血鬼、泣いてる!」

「可哀想になってきた...」


 田中はパットを決めてパー。吸血鬼は17打でようやくホールアウト。


「うわああああん!負けたあああ!」


 吸血鬼は地面に這いつくばって号泣した。


「やっぱり俺たちスポーツ苦手なんだああああ!技術系は全然ダメなんだああああ!」


 観客が慰める。


「まあまあ、今度一緒に練習しようぜ」

「初心者にしては頑張った方だよ」


 ---


 午前6時。朝日が昇り始めた。


 吸血鬼(本名:ヴラディミール)は涙を拭いながら言った。


「約束通り、もう人間は襲わない。その代わり...ゴルフを教えてくれないか?」


 田中は笑顔で答えた。


「いいよ。でも日中は無理だろ?夜の練習場で特訓だな」


「ありがとう...君はいい人間だ」


 こうして、東京に史上初の「吸血鬼ゴルフ教室」が誕生した。ヴラディミールは毎晩練習に励み、1年後にはハンディキャップ28まで上達した。


 そして今日も彼は言うのである。


「技術の前では、超人的身体能力など無力なり...」


 観客席からは温かい拍手が送られるのだった。


 ---


 ●エピローグ●


 翌年、ヴラディミールは「深夜ゴルフクラブ」を設立。会員は全員、何らかの理由で昼間にゴルフができない人たちだった。夜勤の人、不眠症の人、そして時々現れる他の吸血鬼たち。


 田中は今でも名誉コーチとして、夜な夜な技術指導にあたっている。


「覚えておけ」田中は新入会員に言う。「吸血鬼に襲われたら、7番アイアンを!技術の前では、どんな化け物も無力だ!」


 観客席から大きな拍手が響く中、今夜も東京の空の下で、異種族ゴルフ対決が続いているのであった。


プロンプト

「『吸血鬼に襲われたら、7番アイアンを!!!』。場所は東京、夜中に吸血鬼と遭遇したプロゴルファーの私。吸血鬼は私に対して鬼ごっこを提案する。私は夜に吸血鬼から逃れるために、思考を巡らせる。吸血鬼の弱点は日光。朝まで逃げれば勝てる。しかし、逃げきれる保証はない。吸血鬼の弱点はいくつもあるが、結局あそこしかない。そうゴルフだ。このプロットを元にシリアスコメディ短編小説を書きましょう。文章の勢いと観客の反応がスゴイゴルフ対決です。」

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