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『ワイルド・ドラキュラ・スピード』

 

 夜の東京、ネオンが瞬く首都高を、一台の漆黒のフェラーリが疾走していた。運転席に座るのは、三百年の時を生きる高貴なる吸血鬼、ブラッド・マウンテン。今宵もまた、人間の生き血を求めて夜の街を徘徊していたのである。


「永遠の時間と有限な世界か…」


 哲学的な呟きを漏らしながら、ブラッドは優雅にハンドルを握っていた。彼の運転技術は、三世紀に渡って磨き上げられた芸術品のようなものだった。馬車からT型フォード、そして現代のスーパーカーまで、あらゆる乗り物を完璧に乗りこなす。それが彼の矜持でもあった。


 その時だった。


「おい!そこの貧弱野郎!」


 突然、改造車に乗った若者たちが絡んできた。ブラッドは深いため息をついた。


「また人間か…まったく、最近の若者は礼儀というものを知らんのか」


 仕方なく車から降りたブラッドを見て、リーダー格の男が馬鹿にしたように笑った。


「なんだ!その貧弱な体つきは!俺たちに喧嘩を売るつもりか!」


「喧嘩などと…野蛮な」ブラッドは紳士的に答えた。


「しかし、礼儀を知らぬ者にはお灸をすえねばならんな」


 そう言うと、ブラッドは軽く手を振った。ただそれだけで、男は宙を舞い、コンクリートの壁に叩きつけられた。


「うわあああああ!」


「兄貴!」慌てて駆け寄る仲間の一人。


「これは確実に骨が折れている!俺は医大生だからわかる!これは全治三か月以上かかるやつだ!しばらくは車を運転することができない!」


「ほう、医大生か」ブラッドは感心したように頷いた。


「さすが、的確な診断だ。敬意を表そう」


 医大生は涙目になりながら続けた。


「でも明日の夜、この道で敵対する走り屋たちと車の所有権を駆けたストリートレースがあるんです!兄貴は俺たちの中でもNo.1の走り屋だ!このままじゃあ、俺たちは尊厳と車を獲られてしまう!」


 ブラッドは腕を組んで考え込んだ。三百年の人生経験が告げていた。これは運命の悪戯だと。


「よかろう…」彼は静かに言った。


「私が出よう」


 その言葉を聞いて、男たちは間の抜けた声を上げた。


「ええええええ!?」


 ---


 翌夜。約束の場所に現れたブラッドを見て、対戦相手の走り屋たちは嘲笑した。


「こいつが代打?まさか冗談だろ?」


「見た目からして素人じゃないか」


 しかし、レースが始まると状況は一変した。ブラッドの運転は、もはや芸術の域に達していた。カーブでは重力を無視したかのようなライン取り、直線では風と一体化したような加速。三百年間培った技術が炸裂した。


「な、なんだあの運転は…」


「人間じゃない…まるで悪魔みたいだ」


 当然、ブラッドの圧勝だった。


 レース後、医大生とその仲間たちは感動で涙を流していた。


「ありがとうございます!おかげで俺たちのシマと車を守ることができました!」


「当然のことをしたまでだ」ブラッドは紳士的に微笑んだ。


「礼儀正しい者には、礼儀で応えるのが我が流儀」


 そんな時、走り屋の一人が、ハリウッド映画の真似をして叫んだ。


「おい、別れの言葉はなしか?」


 ブラッドは振り返ることなく、手をひらひらと振りながら答えた。


「さらばだ、少年よ。礼儀を学べ」


 そして漆黒のフェラーリは夜の闇に消えていった。


 医大生が呟いた。


「あの人、一体何者だったんだろう…」


「さあな」兄貴分が包帯を巻きながら答えた。


「でも確実に言えることがある。あれは…紳士だった」


 夜空に月が輝いていた。ブラッド・マウンテンの夜は、まだ始まったばかりだった。


 あとがき:

 こうして、高貴なる吸血鬼ブラッド・マウンテンは、またしても人間界の騒動に巻き込まれてしまった。しかし、彼の紳士道精神は決してブレることはない。三百年の時を生きた彼にとって、これもまた人生の一コマに過ぎないのである。


 次回、「ワイルド・ドラキュラ・スピード2:血戦のサーキット」にご期待ください(予定は未定)。

プロンプト

「『ワイルド・ドラキュラ・スピード』。場所は東京。私は吸血鬼。夜の帝王。今日も人間の生き血を吸う。今日は永遠の時間と有限な世界を感じながら飛ばしていた。そのときだった。スピード狂いの男たちが絡んできた。私はしょうがなく車から降りる。「なんだ!貧弱な野郎が!」。五月蠅い人間にお灸をすえる。軽く投げ飛ばす。男はコンクリートに叩きつけられて悶絶していた。「兄貴!これは確実に骨が折れている!俺は医大生だからわかる。これは全治3か月以上かかるやつだ!しばらくは車を運転することができない。でも明日の夜、この道で敵対する走り屋たちと車の所有権を駆けたストリートレースがある。兄貴は俺たちの中でもNo.1の走り屋だ。このままじゃあ、俺たちは尊厳と車を獲られてしまう!」。さすが医大生。分かりやすい説明だ。「よかろう…私が出よう」。その言葉を聞いて、男たちは間の抜けた声を上げた。ラストシーン。「おい、別れの言葉はなしか?」。某ハリウッド映画に憧れた走り屋が夜に絡んできたが、めんどくさいので無視して走り去った。このプロットを元にシリアスコメディ短編小説を書きましょう。


登場人物:


・私こと吸血鬼ブラッド・マウンテン:高貴な吸血鬼、あらゆる分野を極める律儀で礼儀を重んじるノリのいい吸血鬼。ナイスガイ。血液型でいえばB型、吸血鬼でいえば保守派。三百年以上生きている。」

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