『あざとヴァンパイア』
♡ 第一章 運命の坂道
東京の夜は冷たく、坂道に街灯の光がぽつりぽつりと落ちている。俺と田中は秋葉原からの帰り道、いつものようにアニメの話で盛り上がっていた。田中は典型的なドルヲタで、推しのアイドルの話になると目を輝かせる男だ。
「今度のライブ、絶対最前列取るからな!」
田中の熱弁を聞き流しながら、俺は坂の向こうから現れた人影に気づいた。薄いピンクのワンピースを着た小柄な女の子が、まるで浮いているように歩いてくる。
「え…可愛い」
思わず口に出してしまった。清楚系で、まさに二次元から飛び出してきたような美少女だった。大きな瞳に、桜色の唇。月光に照らされた白い肌が儚げに光っている。
田中も俺の視線に気づき、振り返った瞬間——彼の運命は決まった。
「うわあああああ!天使だ!天使が降臨した!」
♡ 第二章 あざとの化身
少女はにっこりと微笑むと、小首をかしげた。
「こんばんは♡ 夜中にお疲れさまです」
声も可愛い。アニメ声そのものだ。田中の鼻息が荒くなるのが聞こえる。
「あの…もしかして道に迷っちゃって…」
少女は困ったような表情を浮かべ、指を唇に当てる仕草をした。その瞬間、俺は気づいてしまった。彼女の犬歯が、異様に鋭く尖っていることに。
(まさか…)
「アタシのためにぃ、血をちょうだい(⋈◍>◡<◍)。✧♡」
少女は両手をハートの形に組み、上目遣いでお願いポーズを決めた。完璧すぎる「あざとさ」だった。
田中は完全にイチコロだった。
「うおおおお!飲み尽くしてぇぇぇ!俺の血、全部あげる!」
鼻息を荒くして吸血鬼——間違いなく吸血鬼だ——に近づいていく田中を見て、俺は悟った。
(こいつはもうだめだ)
♡ 第三章 生存戦略
頭を高速回転させる。吸血鬼の弱点は日光。朝まで逃げれば勝てる。しかし、こんな可愛い吸血鬼から逃げきれる保証はない。十字架?持ってない。にんにく?コンビニまで走るのも危険だ。
しかし、俺には秘策があった。
「ちょっと待って!」
俺は吸血鬼の前に立ちはだかった。
「君、本当に血が欲しいの?」
「もちろんです♡ お腹ペコペコなんです〜」
吸血鬼は頬を膨らませて、拗ねるような表情を作った。あざとさMAXだ。田中が「かわいいいいい」と悶絶している。
「なら、もっと良い場所を知ってる」
俺はスマホを取り出し、素早く検索した。
「今、渋谷でアイドルの深夜イベントやってる。そこにはドルヲタが何百人も集まってる」
♡ 第四章 ドルヲタ・オールユーキャンイート
三十分後、俺たちは渋谷のライブハウス前にいた。深夜にも関わらず、推しのためなら何でもするドルヲタたちが長蛇の列を作っている。
「すごーい♡ こんなにたくさんの人が!」
吸血鬼の目がキラキラと輝いた。まるで食べ放題のレストランを見つけた子供のようだ。
「みなさん〜、お疲れさまです♡」
吸血鬼が列に向かって手を振ると、ドルヲタたちは一斉に振り返った。そして——
「「「天使だああああああ!」」」
阿鼻叫喚である。ドルヲタたちは我先にと吸血鬼に群がった。
「俺の血を吸って!」
「僕のほうが美味しいよ!」
「推しより可愛い!結婚して!」
♡ 第五章 計画通り
吸血鬼は大喜びで、次々とドルヲタたちの血を吸い始めた。もちろん、あざとポーズ付きだ。
「いただきま〜す♡」「美味しい〜♡」「もっとちょうだい♡」
ドルヲタたちは血を吸われながらも恍惚の表情を浮かべている。まさに本望といった顔だ。
田中も行列に並んで順番待ちをしている。
「俺の番まだ〜?」
俺はそっとその場を離れた。作戦は成功だ。吸血鬼はドルヲタたちの血で満足し、俺は無事に生き延びることができる。完璧な生存戦略だった。
♡ エピローグ 翌朝
翌朝、ニュースが流れた。
「昨夜、渋谷で謎の集団失血事件が発生。被害者たちは皆、幸せそうな表情を浮かべており…」
俺は田中に電話をかけた。
「おい、大丈夫か?」
「最高だった…天国って本当にあったんだな…」
田中の声は虚ろだったが、なぜか満足げだった。
その日の夕方、俺のスマホに見知らぬ番号からメッセージが届いた。
『昨日はありがとうございました♡ とっても美味しかったです〜♡ 今度は貴方の血も飲んでみたいな…♡ またお会いしましょうね♡』
添付された自撮り写真には、ピースサインをする可愛い吸血鬼が写っていた。
俺は慌ててスマホの電源を切った。しかし、心の奥底では気づいていた。
次に会うときは、きっと逃げられないだろう、と。
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☆あざとヴァンパイアは今夜もどこかで、可愛いポーズと共に獲物を狙っている…☆
プロンプト
「『あざとヴァンパイア』。場所は東京の坂道で、夜中に吸血鬼と遭遇した私たち。「え…可愛い」。それは清楚系で可愛い女子だった。一緒に居たドルヲタはその可愛さに魅了される。「アタシのためにぃ、血をちょうだい(⋈◍>◡<◍)。✧♡」。友人はイチコロだった。「飲み尽くしてぇぇぇ」。鼻息を荒くして吸血鬼に近づく。(こいつはもうだめだ)。あざと可愛い吸血鬼から逃れるために、思考を巡らせる。吸血鬼の弱点は日光。朝まで逃げれば勝てる。しかし、逃げきれる保証はない。吸血鬼の弱点はいくつもあるが、結局あそこしかない。そうドルヲタの集いだ。作戦はこうだ。ドルヲタの血を飲ませまくって満足させる。自分だけが助かる生存戦略だ。このプロットを元にシリアスコメディ短編小説を書きましょう。」