『西遊記 with ドラキュラ…コイツ呼んだの誰!』
天竺への道のりも残すところわずかとなった午後のこと。三蔵法師は振り返ると、いつものように弟子たちに感謝の言葉を述べた。
「ここまでありがとう。孫悟空、猪八戒、沙悟浄…」
そして、なぜか黒いマントを羽織り、つば広の帽子で直射日光を避けている怪しげな人影に向かって続けた。
「…吸血鬼」
(いや…コイツいつから仲間になったの?!)
孫悟空は脳内で全力ツッコミを入れながらも、師匠の前では神妙な顔で頷いた。猪八戒と沙悟浄も同様に、心の中で大混乱しながらも表面上は平静を装っていた。
一方、問題の吸血鬼は何食わぬ顔で「はい」と返事をし、マントの端をひらりと翻した。その仕草があまりにも自然すぎて、三人の混乱は更に深まった。
「気をつけてください。この先に鬼がいるようです」
三蔵法師が前方を指差して警告すると、孫悟空たちは一斉に思った。
(いや!隣!隣にいるから!一番ヤバいの隣にいるから!)
しかし、当の吸血鬼は「そうですね、用心しましょう」と真面目に相槌を打っている。その口元からは、うっすらと牙が覗いているのに、三蔵法師はまったく気がついていない。
「鬼どもめ!三蔵法師さまに近づいたら許さんぞ!」
孫悟空が如意棒を振り回して威嚇すると、吸血鬼も「その通りです」と賛同した。
(お前も鬼の仲間だろ!なんで一緒になって怒ってるんだよ!)
猪八戒は心の中で絶叫した。
「みんな、団結力があって素晴らしいですね」
三蔵法師がにこやかに微笑むと、吸血鬼は「光栄です」と丁寧にお辞儀をした。その際、帽子が少しずれて、額に十字架の形の火傷跡が見えたが、やはり三蔵法師は気がつかない。
(見えてる!見えてるから!どう見ても怪しいから!)
沙悟浄も内心でパニックになっていた。
「では、今日はここで野宿としましょう。薪を集めてきてください」
三蔵法師の指示に、孫悟空たちは「はい」と返事をしながら立ち上がった。吸血鬼も一緒に立ち上がろうとしたが、
「あ、私は日光に弱いので…夜になったらお手伝いします」
「そうですね、体調を崩しては大変です。ゆっくり休んでいてください」
(だから!それで気がつけよ!)
三人は同時に心の中で突っ込んだ。
夜になると、吸血鬼は元気に動き回り、完璧に火起こしを手伝った。その手際の良さに三蔵法師は感心している。
「素晴らしい。まるで慣れているようですね」
「ええ、長年の経験で」
(何百年生きてるか分からないもんな…)
孫悟空がそう思っていると、吸血鬼が振り返って小声で言った。
「実は私、千年以上生きているんです」
(言うな!余計なこと言うな!)
しかし三蔵法師は「長寿の秘訣を教えてください」と興味深そうに尋ねている。
「血…いえ、野菜ジュースをよく飲むことです」
(嘘下手か!)
こうして奇妙な一行は、今夜も平和(?)な夜を過ごすのであった。
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翌朝、三蔵法師が「おはようございます」と声をかけても、吸血鬼だけは棺桶…いや、テントから出てこない。
「体調が悪いのでしょうか」
心配する三蔵法師に、孫悟空たちは複雑な表情で答えた。
「まあ…朝は苦手なタイプなんでしょう」
(永遠に苦手だろうな…)
そんな彼らの珍道中は、今日も続いていく。天竺まで、あと少し。果たして吸血鬼の正体がバレる日は来るのだろうか。
それとも、このまま最後まで気がつかないのだろうか。
答えは神のみぞ知る、である。
プロンプト
「『西遊記 with ドラキュラ…コイツ呼んだの誰!』。場所は中国、私たちは天竺に向かっていた。「ここまでありがとう。孫悟空、猪八戒、沙悟浄…吸血鬼」。(いや…コイツいつから仲間になったの?!)。孫悟空、猪八戒、沙悟浄は脳内でツッコミながら三蔵法師の話を聞いていた。一方直射日光を避けるような恰好をして何食わぬ顔で同行する吸血鬼。「気をつけてください。この先に鬼がいるようです」。(いや!隣!隣!)。そして、吸血鬼は相槌をうつ。「鬼どもめ!三蔵法師さまに近づいたら許さんぞ!」。この西遊記は普通の西遊記に吸血鬼が加わったシュールな掛け合いが特徴です。おもに孫悟空、猪八戒、沙悟浄が脳内で突っ込みを入れます。このプロットを元にシュールコメディ短編小説を書きましょう。」