『吸血鬼に襲われたら学歴で撃退しろ!!!』
東京の闇に紛れて、私は逃げていた。
「もう、諦めたらどうだ?」
甘い声が背後から聞こえてくる。振り返ると、月明かりに照らされた吸血鬼の姿があった。黒いマントを身にまとい、その赤い瞳は暗闇の中でも鮮明に輝いている。
「鬼ごっこ、楽しいと思わないか?」
吸血鬼は薄く微笑んだ。
「朝日が昇るまで逃げ切れれば、君の勝ちだ。捕まえたら…」
彼は鋭い牙を見せた。
「分かるな?」
私は息を整えながら周囲を見回した。新宿の裏路地。時計を見ると午前1時。朝日が昇るまであと5時間。5時間も彼から逃げ切れるとは思えない。
吸血鬼の弱点—十字架、ニンニク、流水…。しかし、そんなものは持ち合わせていない。
そのとき、ふと閃いた。
「ちょっと待って」
私は立ち止まり、彼に向き直った。
「君は何年生まれ?」
吸血鬼は少し驚いた表情を見せる。
「1786年だが…それがどうした?」
「へえ、そうなんだ」
私はカバンからゆっくりと学生証を取り出した。
「ところで、僕は東京大学理学部物理学科の卒業生なんだ」
吸血鬼は首を傾げた。
「それがなにか?」
「理Ⅰ。偏差値72」
私は続けた。
「センター試験は98%。全国模試では常に上位0.5%以内だった」
吸血鬼の表情が微妙に変化する。
「それで?」
「大学院では量子力学の研究をしていて、学会でも論文が評価されたんだ。小〇方〇子がSTAP細胞の発表をした頃、僕は既に査読論文を3本出していた。そして…」
「待て」
別な吸血鬼が手を上げた。彼の動きは少し落ち着いている。
「東大と言ったな?」
「そう。日本最高峰の大学だ。知らないのか?世界ランキングでも上位だよ?」
その吸血鬼は少し距離を置いた。
「私はオックスフォードで学んだことがある」
「へえ、オックスフォード?」
私は少し笑った。
「いつ頃?」
「1820年代だ」
「ああ、なるほど」
私は同情するように頷いた。
「現代の教育システムからはかなり遅れてるね。今の東大のカリキュラムは世界基準で…」
「黙れ!」
吸血鬼が唸った。
「私はハーバードにも通っていた!」
「へえ、でも英語のネイティブじゃないのに東大に入るのはもっと難しいって知ってた?日本語という言語の複雑さからして、バイリンガルになること自体が…」
吸血鬼は明らかに動揺していた。そのとき、暗闇から別の声が聞こえてきた。
「私はケンブリッジとMITのダブルディグリーだ」
新たな吸血鬼が現れた。スーツを着た知的な風貌の男性だ。
最初の吸血鬼が反撃する。
「私はソルボンヌでも学んでいた!しかも18世紀の本場の教育だ!」
「それは古すぎて価値がない」
第三の声。今度は女性の吸血鬼が姿を現した。
「私は東工大と北京大学のジョイントプログラムを修了し、シンガポール国立大学で博士号を取得した。アジア圏の教育を網羅している」
「アジア圏?」
最初の吸血鬼が鼻で笑う。
「西洋の古典教育こそが基礎だ!」
「いや、現代のAI技術と量子コンピューティングを学んでいなければ時代遅れだ」
スーツの吸血鬼が反論する。
私はその場の熱が高まるのを見て、そっと後ずさりした。吸血鬼たちは完全に学歴マウントの応酬に夢中になっている。
「プリンストンでアインシュタインから直接指導を受けた私に比べればな!」
「私はスティーブン・ホーキングとの共著論文がある!」
「私の博士論文は吸血鬼の代謝に関する革新的研究で、ネイチャーの表紙を飾ったぞ!」
声が重なり合い、時には英語、フランス語、ラテン語、古代ギリシャ語まで飛び交う学術的自慢大会に発展していた。
私は静かに路地を抜け、駅の方向へと歩き始めた。振り返ると、吸血鬼たちは今や黒板を取り出し、数式を書いて議論している。中には名刺を交換している者もいる。
朝日が昇る頃、私はすでに自宅のベッドで横になっていた。窓からは朝の光が差し込み、遠くで鳥のさえずりが聞こえる。
スマホを手に取り、検索バーに入力した。
「高学歴吸血鬼 学会 参加方法」
次の満月の夜、私は新たな論文を手に、彼らの集会に向かうつもりだ。吸血鬼になるつもりはないが、彼らとの学術交流は面白そうだ。結局、学問に貪欲なのは人間も吸血鬼も変わらない。
ただ、次回は念のためニンニクのスプレーも持っていこう。万が一、東大以上の学歴を持つ吸血鬼に出会ったときのために。
プロンプト
「『吸血鬼に襲われたら学歴で撃退しろ!!!』。場所は東京、夜中に吸血鬼と遭遇した私。吸血鬼は私に対して鬼ごっこを提案する。私は夜に吸血鬼から逃れるために、思考を巡らせる。吸血鬼の弱点は日光。朝まで逃げれば勝てる。しかし、逃げきれる保証はない。吸血鬼の弱点はいくつもあるが、結局あそこしかない。そう学歴だ。私は学歴(東大)を武器に吸血鬼に立ち向かう。吸血鬼は学歴でマウントを取る私にじょじょに圧される。そのとき、高学歴吸血鬼たちが現れる。吸血鬼たちの間で学歴マウント合戦がはじまる。私はこっそりと消える。このプロットを元にシリアスコメディ短編小説を書きましょう。」