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『ロックフェスティバルに現れた吸血鬼のドラムロールに酔いしれろ!』

対バン:複数のアーティストが出演し、順番に演奏をおこなうライブ形式

 

 山梨県の小さな町に、満月が白く浮かび上がる夜。私、ブラッド・マウンテンは富士山を背景に佇んでいた。高貴な吸血鬼として生きること数百年、最近の人間狩りはどこか味気なく感じていた。


「毎晩同じことの繰り返しか」と私は呟いた。黒いマントが夜風に揺れる。


「この富士山を舞台に鬼ごっこなどいかがだろう?逃げ惑う人間を追いかけながら、名峰の景色も楽しめる。一石二鳥というものだ」


 計画を練りながら山の麓へ降りると、異様な熱気と人の群れに気づいた。どうやら音楽フェスティバルが開催されているらしい。


「人間が集まる場所に吸血鬼あり」と私は微笑んだ。B型の血液が好みだが、今夜はどんな血液型でも構わない。新しい娯楽を求めるこの私には、どんな血も甘露に思えるだろう。


 会場の裏手に回ると、派手なメイクと衣装に身を包んだ四人組の若者たちがいた。ビジュアル系バンドのようだ。


「おい、ファンなら後にしてくれよ」大柄な男が不機嫌そうに言った。ドラマーらしい。


「失礼ながら、ファンではございません」と私は丁寧に頭を下げた。


「ただ、少々お腹が空いておりまして」


「なんだよ、それ」


 ドラマーの男は苛立ちを隠さず私の肩を押した。


「お触りはご遠慮願いたい」


 私は軽く彼を投げ飛ばした。肉体言語でわからせるのも時には必要だ。


「うわあああっ!」


 男は派手に空中回転してステージの機材に激突した。スタイリッシュな着地とは言い難い。


「アツシ!大丈夫か!?」


 ギタリストらしき男が駆け寄った。


「ああああああああ!ドラムのアツシの足と腕が!これじゃあ、演奏はできない!」


 ボーカルと思しき派手な髪の男が叫んだ。


「こいつの代わりに俺たちの高難易度超絶技巧の楽曲をプレイできる奴なんてそうそういない!それに俺たちのバンドイメージに合うイケてるルックスのメンズなんているわけない!ましてや俺たちは音楽界でも孤高の存在、ほかのアーティストと仲良くないから協力してくれるはずない!」


 彼のビブラートの効いた説明は、仲間が痛がっている状況とは不釣り合いなほど詳細だった。流石プロフェッショナルだ。


「これは失礼した。私が代わりに演奏しよう」と私は提案した。数百年生きていれば楽器の一つや二つ弾けるようになるものだ。


「なんだってえええ!?」


 ボーカルはシャウトのような声で驚いたが、すぐにマネージャーらしき人物に連絡を取り始めた。


 控室で私は機材に触れた。どうやらこのバンド「BLOOD SCREAM」は、なかなかの技巧派バンドらしい。楽譜を見ると、複雑なリズムパターンが並んでいる。


「大丈夫ですか?」とベーシストが心配そうに聞いてきた。


「問題ありません。吸血鬼の指は非常に器用でして」と私は答えた。


「は?吸血鬼?」


 彼は笑った。


「ネタ好きなヤツだな。そのルックスならバンドにもマッチするぜ」


 練習中、私は彼らの曲を完璧に演奏した。そのとき、裏口から別のバンドメンバーらしき者たちがニヤニヤしながら覗き込んでいるのに気づいた。


「あいつら...」


 ギタリストが歯を食いしばった。


「『毒蛇の牙』のメンバーだ。いつも俺たちの足を引っ張ろうとしてる」


 いよいよ本番。ステージに立つと、熱気に包まれた観客たちの歓声が轟いた。


「今夜は特別なゲストドラマーを迎えて演奏します!」


 ボーカルのアナウンスに、さらに歓声が上がる。


 演奏が始まると、バンドメンバーたちは驚くほどの実力を発揮し始めた。私のドラミングが彼らを引き上げているようだ。


(なんだ、これ!演奏しやすいぞ!)


 ギタリストが目を見開いていた。


 中盤、私のドラムペダルが突然動かなくなった。裏で「毒蛇の牙」のメンバーがほくそ笑んでいる。どうやら妨害工作をしたらしい。


「問題ない」私は冷静に言った。そして、超絶技巧と超速スピードで足の代わりに右手の小指と薬指だけでペダルの役割をこなし始めた。左手と残りの右手の指で通常のドラミングを続ける。


 観客は熱狂した。「BLOOD SCREAM」の演奏は過去最高の評価を受け、「毒蛇の牙」のメンバーたちは悔しそうに会場を後にした。


 ライブ後、バンドのメンバーたちは興奮気味に私に駆け寄ってきた。


「マジで何者?こんな演奏、人間業じゃないぜ!」


「申し上げた通り、吸血鬼です」と私はボウタイを整えながら答えた。


「冗談はいいから、次のツアーも一緒にやらないか?」


 ボーカルが真剣な表情で言った。


「アツシの代わりに正式メンバーになってくれよ」


「恐縮です」と私は丁寧に断った。


「私は夜の帝王。人間の血を啜ることが本職でして」


「またまたぁ〜」


 彼ら(アツシ以外)は笑った。


 私は微笑み返し、夜空に消えた。富士山を舞台にした鬼ごっこは今夜はお預けだ。代わりに得たものは、新たな刺激と、ひょっとすると...友情と呼べるものかもしれない。


 血を吸うことだけが吸血鬼の喜びではないと知った、平成の夏の夜だった。

プロンプト

『『ライブ前のミュージシャン!』。

場所は平成の山梨県某フェスティバル。私は吸血鬼。夜の帝王。今日も人間の生き血を吸う。しかし、最近マンネリ化してきた。私はふと富士山を舞台にした鬼ごっこを提案することを思いつく、逃げ惑う人間を狩る。血を吸うだけではなく富士山の景色も楽しめる。人が多い、どうやら音楽フェスがあるらしい。そのとき、4人組のビジュアル系の男たちがいた。「なに?ファン?ライブの後にしてくれない」。ドラマーっぽい大男は少しイラついていた。私は簡単に投げ飛ばす。「こういうときは肉体言語でわからせるしかない」。男はスタイリッシュなリアクションで吹っ飛ぶ。「ああああああああ!ドラムのアツシの足と腕が!これじゃあ、演奏はできない!こいつの代わりに俺たちの高難易度超絶技巧の楽曲をプレイできる奴なんてそうそういない!それに俺たちのバンドイメージに合うイケてるルックスのメンズなんているわけない!ましてや俺たちは音楽界でも孤高の存在、ほかのアーティストと仲良くないから協力してくれるはずない!」。バンドメンバーが重傷で痛がっているにもかかわらず、ボーカルが状況をわかりやすく丁寧に説明してくれる。流石、アーティストだ。ビブラートが効いていて聞きやすい。「代わりに私が演奏しよう」。ボーカルは「なんだってえええ」というシャウトとともに手早くマネージャーに連絡して段取りを取った。本番前の練習で私は機材の調整をする。そのとき、裏で別のバンドグループがニヤニヤしながら見つめていた。本番。私たちは見事な演奏でバンドを引っ張る。(なんだコイツ!演奏しやすい)。バンドメンバーは本来の実力以上のパフォーマンスを魅せる。そのとき、私の機材の一部が故障した。裏で例の別のバンドグループがニヤニヤしていた。(このバンドってもしかして嫌われているのか)。私はそんなトラブルは意に介していない。超絶技巧でこのトラブルを乗り切る。その後、メンバー交代の打診を受けたが、控えめに断った。このプロットを元にシリアスコメディ短編小説を書きましょう。

登場人物:

・私こと吸血鬼ブラッド・マウンテン:高貴な吸血鬼、あらゆる分野を極める律儀で礼儀を重んじるノリのいい吸血鬼。ナイスガイ。血液型でいえばB型、吸血鬼でいえば保守派。」

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