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「アイドルグループ『DRACULA』」~脱退するメンバーの代わりは吾輩だ~

 

「お前ら、聞いてくれ…オレ、脱退するわ」


 スタジオに響き渡る赤東(あかひがし)の言葉に、俺たち『DRACULA』のメンバー全員が凍りついた。


「なっ…何言ってんだよ、赤東!」


 土井が叫ぶ。


 明日から始まる全国ツアー『DRACULA NIGHT BLOOD』。チケットは完売、グッズも制作済み。そして何より、俺たち――土井、楽木(らくぎ)、赤東、千葉、上田、立仙(りっせん)、相賀――の頭文字を取った『DRACULA』というグループ名。Aが抜ければ、『DRCULA』になってしまう。もはやドラキュラでもなんでもない。ていうかスペルミスだ。ぶっちゃけ、相賀は不人気メンだし、たぶんA2つを相賀だけでは担えない。


「マジでごめん…親父が倒れてさ、実家の焼肉店を手伝わなきゃならなくなった」


 赤東は頭を下げたまま、荷物をまとめ始めた。


「ちょっと待て!」


 マネージャーの風間さんが割って入る。


「ライブのキャンセル料、違約金、全部で五千万はくだらないぞ!Aのメンバーを探さないと!」


「でも明日からツアーですよ!」


 楽木が真っ青な顔で言う。


「だったら今夜中に見つけるしかないだろ!」


 風間さんが叫んだ。


 俺たち全員と風間さんは、夜の東京の街に繰り出した。夜遅くまで開いているカラオケ、ライブハウス、路上ライブをしている場所を片っ端から回る。だが、アイドルとして通用するAの頭文字を持つ人材は見つからない。


「もう諦めるしかないか…」


 午前2時、銀座の裏通りで立ち止まった俺たちの前に、黒いマントの男が現れた。


「君たちの悩みが聞こえてくるよ…」


 不気味に輝く赤い瞳。異様に白い肌。そして尖った犬歯。


「吸血鬼!?」


 上田が叫ぶ。


「私は赤羽アルカード。Aで始まる名前だよ」


「冗談じゃない!本物の吸血鬼なんて…」


 相賀が言いかけた時、アルカードは一瞬で姿を消し、次の瞬間には俺たちの後ろに立っていた。


「本物も何も、君たちこそ『DRACULA』を名乗っているじゃないか」


 アルカードは優雅に笑う。


「面白い提案がある。私と鬼ごっこをしないか?朝日が昇るまで私から逃げ切れれば、君たちのグループに加わってもいい」


「本気で言ってるのか?」千葉が目を丸くする。


「もちろん。ただし捕まえたら…」


 アルカードは舌なめずりをした。


「一滴だけ、血をいただく」


 風間さんは顔を青くして言った。


「相棒たち、他に方法がない、受けるしかないだろう」


 こうして奇妙な鬼ごっこが始まった。


 俺たちはまず東京タワーに逃げ込んだ。高所なら吸血鬼も登りにくいだろうと考えたのだ。


「愚かだな」


 振り返ると、エレベーターからアルカードが出てきた。


「吸血鬼は変身できるんだよ。コウモリになれば、こんな高さ、一瞬さ」


 俺たちはパニックになって階段を駆け下りた。


 次に向かったのは、浅草寺。神聖な場所なら吸血鬼は入れないはずだ。


 だが、アルカードは涼しい顔で境内を歩いていた。


「信仰心のある吸血鬼と違って、私は仏教の力は怖くないんだ」


 逃げる俺たちを見て、アルカードは優雅に微笑む。


「ああ、それに日本のニンニクは西洋のものより臭いが弱いから効かないよ」


 立仙が持っていたニンニクの首飾りを見て、アルカードは笑った。


 時計は午前4時を指している。あと2時間ほどで夜が明ける。


 俺たちは東京中を走り回った後、最後の望みをかけて渋谷のクラブに逃げ込んだ。大勢の人混みの中なら、見つかりにくいはずだ。


「いいところに来たね」


 振り返るとそこにアルカードがいた。ディスコライトに照らされた彼の姿は、まるでステージに立つスターのようだった。


「もうすぐ夜が明ける。最後にひとつ質問させてくれ」


 アルカードが言う。


「君たちはなぜアイドルになったんだい?」


「人々を…楽しませたいからだ」俺は息を切らしながら答えた。


「ならば私も同じだよ」


 アルカードは笑った。


「私は何百年も生きている。毎日が退屈でね。人々を恐れさせるだけでは面白くない。楽しませたいんだ」


「でも…吸血鬼がアイドル?」


「私は演技が得意だ。そして何百年も培った歌とダンスのスキルがある」


 アルカードが軽やかにステップを踏むと、クラブにいた人々が思わず見入ってしまうほどの完璧なダンスを披露した。その後、彼は歌い始めた。澄み切った美しい声が会場を包み込む。


「素晴らしい…」


 風間さんが呟いた。


「だろう?」


 アルカードは自信満々に言った。


「そして、私は何百年も昼間は眠っている。夜のライブパフォーマンスに最適だ」


 空が白み始めた頃、俺たちとアルカードは屋上にいた。


「君たちの勝ちだ」


 朝日が昇り始めると、アルカードはマントで身を覆った。


「約束通り、君たちのグループに加わろう」


「でも…本当に大丈夫なのか?日光は…」


「心配しなくていい」


 アルカードはサングラスとマスクを取り出した。


「現代の吸血鬼は適応しているんだ。この日焼け止めとこれさえあれば」


 こうして『DRACULA』に本物の吸血鬼が加入した。


 全国ツアー『DRACULA NIGHT BLOOD』は大成功を収めた。特に夜公演は、アルカードの本領が発揮された。彼の不思議な魅力と超人的なパフォーマンスに、ファンは熱狂した。


 そして、アルカードはグループ内で「アッくん」というニックネームで親しまれるようになった。


「なあ、アッくん」


 ある日、相賀が尋ねた。


「本当に俺たちの血は吸わないんだよな?」


 アルカードは不敵な笑みを浮かべると答えた。


「大丈夫だよ。僕はもう…ファンの愛を吸って生きているからね」


 その瞬間、アルカードの目が赤く光ったような気がしたが、みんなで笑い飛ばした。


 結局、『DRACULA』という名前に相応しいメンバーが加わったことで、グループの人気は急上昇。吸血鬼伝説と現代アイドルカルチャーの奇妙な融合は、新たなエンターテインメントの形を生み出したのだった。

プロンプト

「「アイドルグループ『DRACULA』」~脱退するメンバーの代わりは吾輩だ~。土井、楽木、赤東、千葉、上田、立仙、相賀のアイドルグループ『DRACULA』」。全員の頭文字をとったが、今日、赤東が脱退を宣言する。「ライブのキャンセル料、違約金なんて払えねえよ!Aのメンバーを探さないと!」。次の日から始まる全国ツアーのため、メンバーを探すために夜の街を駆ける俺たちとマネージャー。場所は東京、夜中に吸血鬼と遭遇した俺たち。吸血鬼は俺たちに対して鬼ごっこを提案する。俺たちは夜に吸血鬼から逃れるために、思考を巡らせる。吸血鬼の弱点は日光。朝まで逃げれば勝てる。しかし、逃げきれる保証はない。吸血鬼の弱点はいくつもあるが、結局あれしかない。そう勧誘だ。このプロットを元にシリアスコメディ短編小説を書きましょう。」

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