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『君の瞳に…ヴァンパイア!?』

 東京の夜。いつもの帰り道のはずだった。


 俺は残業を終え、会社を出た。時計は午後11時45分を指していた。地下鉄はもう終電間近で、急いでいた。遠回りになるが、近道として知られる古い神社の裏手の細道を通ることにした。


 街灯の少ない細道。木々の間から漏れる月明かりだけが頼りだった。


「こんばんは」


 突然、甘い声が闇から響いた。振り向くと、そこには西洋風の服装をした細身の男性が立っていた。見たことのない美しさ。しかし、その瞳には普通ではない何かが宿っていた。


「ちょっと話をしませんか?」


 男は微笑んだ。その時、月明かりが男の顔を照らし、その牙が一瞬だけ光った。


 ——吸血鬼だ。


 映画やアニメでしか見たことのない生き物が、今、目の前に立っている。脳裏に「逃げろ」という警告が走った。


「逃げる気ですか?」


 男はクスリと笑った。


「面白い。ゲームにしましょうか?鬼ごっこです。あなたが朝まで逃げ切れば勝ち。捕まえたら、私の勝ち。シンプルでしょう?」


 冗談のようなことを言っているのに、その目は真剣だった。


「お断りします」


 俺は冷静を装って言った。


「選択肢はありませんよ」男は指を鳴らした。「さあ、10秒差し上げます。9…8…」


 俺は走った。全力で。


 ***


 頭の中では情報が錯綜していた。吸血鬼の弱点とは?日光、十字架、ニンニク、銀…どれも今の俺には手に入らない。


 日光が昇るまであと5時間以上。教会。そうだ、教会に行けば。


「まだまだ遅いですね」


 振り向くと、彼が10メートルほど後ろを歩いてきていた。走っている俺に対して、彼は優雅に歩いているだけ。しかし、間隔は徐々に縮まっていた。


「体力を消耗させてどうするんです?血が薄まりますよ」


 彼は笑った。


 絶望感が押し寄せる。しかし、諦めるわけにはいかない。頭には恋人・美咲の顔が浮かんだ。彼女と過ごす未来のために。


 予想外の動きをしよう。俺は急に方向転換し、繁華街へと走った。人混みに紛れ込もうとしたが、深夜の街にそれほどの人出はなかった。


 しかし、24時間営業のコンビニが目に入った。これだ。公共の場で彼は何もできないはずだ。


 コンビニに駆け込み、店員に「助けてください!」と叫んだが、振り返った店員の目は虚ろだった。そして、ドアが開き、彼が入ってきた。


「商売の邪魔はしたくありませんから、続きは外でやりましょうか」


 店員は何も反応せず、俺たちを見ていなかった。彼は既に店員を催眠状態にしていたようだ。


 再び逃走。今度は明確な目的地を持って。青山の教会へ向かおう。


 ***


 道中、何度も彼と鉢合わせた。彼はまるで遊んでいるようだった。俺の逃げ道を予測し、先回りする。疲労と恐怖で体は限界に近づいていた。


 そして、ついに教会が見えた。急いで門をくぐり、教会の扉を開けた。


 彼は門の前で立ち止まった。


「なるほど、古典的ですね」


 教会の中に入り、扉を閉めた。安全だ。しかし油断はできない。


 教会の祭壇に駆け寄り、十字架を手に取った。これで守れるはずだ。


 しばらくして、教会の窓から彼の姿が見えた。門の前で立ち尽くしていた彼が、ゆっくりと教会に近づいてきた。


「まさか…入れるのか?」


 恐怖で足がすくんだ。彼は門をくぐり、教会の扉の前まで来た。扉は閉まっている。彼はノックした。


「開けてくれませんか?話し合いましょう」


「帰れ!」


 俺は十字架を強く握りしめた。


「残念です。でも、ゲームは楽しかった」


 彼は扉に手を当てた。


「あなたの勝ちにしておきましょう。ただし…」


 彼は何かを呟き始めた。聞いたことのない言語。それは呪文のようだった。


「お別れのプレゼントです。次にあなたが愛する人の目を見るとき、私たちの縁は続きます」


 彼はそう言って、夜の闇に消えていった。


 ***


 朝日が昇り、俺は疲労困憊で家に戻った。


「おかえり!大丈夫?顔色悪いよ」


 美咲が心配そうに俺を迎えた。


「信じられないようなことがあったんだ」


 俺は昨夜の出来事を話そうとした。


「どうしたの?」


 美咲が俺の目を覗き込んだ。


 その瞬間、彼女の瞳に見覚えのある姿が映った。西洋風の服装をした細身の男。吸血鬼だ。彼は美咲の瞳の中で微笑み、俺に向かって指を振った。


「どうしたの?急に青ざめて…」


 俺は言葉を失った。


「なんでもない…ちょっと疲れてるだけ」


 美咲の瞳の中の吸血鬼は、これからも俺を見続けるだろう。そして、いつか…


 俺たちの鬼ごっこは、まだ終わっていなかった。


「あのさ、美咲…今夜は教会でディナーなんてどうかな?」


 彼女は首を傾げた。


「珍しい、いいね!」


 吸血鬼との駆け引きは、これからも続く。でも次は、俺から仕掛けるつもりだ。


 彼女の瞳の中で、吸血鬼が困惑したように見えた気がした。

プロンプト

「『君の瞳に…ヴァンパイア!?』。場所は東京、夜中に吸血鬼と遭遇した私。吸血鬼は私に対して鬼ごっこを提案する。私は夜に吸血鬼から逃れるために、思考を巡らせる。吸血鬼の弱点は日光。朝まで逃げれば勝てる。しかし、逃げきれる保証はない。吸血鬼の弱点はいくつもあるが、結局あそこしかない。そう教会だ。なんとか吸血鬼から逃げきれた私だったが、扉越しに吸血鬼はなにかの呪いをかける。バッドエンド。家に帰って恋人にこのことをしゃべろうとすると、彼女の瞳にあの吸血鬼が映る。このプロットを元にシリアスコメディ短編小説を書きましょう。」

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