『吸血鬼党に清き一票を』
雨の降る東京の夕暮れ時。鈴木正人は駅前の人だかりに目を留めた。スーツ姿の男が演説台に立ち、マイクを握りしめている。
「吸血鬼党に清き一票を!」
正人は思わず足を止めた。男の肌は不自然なほど白く、目は赤みがかっている。吸血鬼のコスプレか何かだろうか。しかし、その声は確かに説得力があった。
「我々吸血鬼党は、まず消費税をゼロにします!汚職はすべて重罪に処します!長年生きてきた我々の知識をもってすれば簡単なことです。また、長命ゆえ二世議員問題も自然と解消されるでしょう!」
正人は思わず頷いていた。昨今の政治に対する不信感。汚職まみれ、利権まみれの政治家たち。確かに、不老不死の吸血鬼なら金にはなびかないかもしれない。世代交代の問題も解決される。
「なんだか妙に説得力があるな」と正人は思った。
選挙日、正人は投票所でペンを握りながら少し躊躇した。しかし、結局彼は吸血鬼党の候補者名を書いた。
そして、正人だけではなかった。吸血鬼党は驚くべき躍進を遂げ、複数の議席を獲得したのだ。
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国会議事堂。閉め切られた会議室で、吸血鬼党の議員たちは昼寝もせずに真面目に討論を続けていた。他の議員たちが疲れを見せる中、彼らの鋭い指摘と論理的な反論に国民は驚きと恐れを感じ始めていた。
「我々は500年前の江戸時代の政策も知っていますし、千年前の平安時代の統治方法も熟知しています。あなた方の短絡的な政策は歴史の教訓を無視しています」と、吸血鬼党の鈴木議員(実年齢652歳)は鋭く総理を批判した。
さらに驚くべきことに、彼らは汚職もしなければ、賄賂も受け取らず、スキャンダルさえもなかった。
「そんな煩悩、くだらない」と、吸血鬼党の党首は記者会見で述べた。
「権力や金のために生きているわけではない。我々は国の永続的な繁栄を望んでいるだけだ」
野党が「血液つまり食料はどうしているのか」と足を引っ張ろうとした時も、吸血鬼党は「秘匿性の高い第三者を経由して我々の支援者から契約書を交わして提供してもらっている」と透明性の高い資料を提示した。
「そういえば、あなたの党の政治資金はどうなっていますか?」と逆に問われた野党議員は言葉に詰まった。
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そして一年後、驚くべきことに吸血鬼党から首相が誕生した。イケメン首相・ドラキュラ・ノブナガ(本名:織田信長、実年齢:496歳)は、日中は活動を控え、夕方から未明にかけて精力的に働いた。
「我々は眠る必要がないので、24時間体制で国民のために働けます」と首相は会見で語った。
約束通り、消費税はゼロになり、汚職撲滅法案も可決された。経済は上向き、国民の支持率は過去最高を記録した。
ただし、秘密裏に毎年一回、国民の献血義務化法案が可決されたことは、多くの国民は知らなかった。「健康診断の一環」として実施され、その血液が夜の官邸でどう使われているかは、公文書からは不可解に削除されていた。
夜の国会議事堂から漏れる赤い光を見て、通りがかりの市民は首をかしげた。
「吸血鬼に票を入れて正解だったのか?」と正人は思いながらも、財布の中の消費税ゼロの領収書を見て苦笑いした。
「まあ、どの政治家も何かしら吸い取っていくものさ。それなら、正直に『吸血鬼です』と言ってくれる方がまだマシかもな」
プロンプト
「『吸血鬼党に清き一票を』。場所は東京。ある雨の日だった。「吸血鬼党に清き一票を」。思わず二度見する私。それはまさに吸血鬼だった。吸血鬼が選挙演説している。「まずは消費税をゼロにします。汚職はすべて重罪に処します。長年生きてきた我々の知識をもってすれば簡単です。長命ゆえ二世議員もなくなります」。納得する私。意味の分からない昨今の政治。汚職まみれ利権まみれ。吸血鬼なら金になびかない。妙に説得力のあるやつらに投票してしまう私。そういう考えの人が多かったらしい。吸血鬼党員はそこそここ当選した。閉め切った国会で昼寝もせずに真面目に鋭い討論をするやつらに我々国民は少しビビる。さらに汚職もしない賄賂もしないスキャンダルさえもない。「そんな煩悩くだらない」。国会答弁で総理をけちょんけちょんにしてしまう。「血液つまり食料はどうしている」という野党の足引っ張りにも「秘匿性の高い第三者を経由して我々の支援者から契約書を書いて貰っている」と透明性が高い資料にビビる野党。「そういえばあなたの党の政治資金ですが」。逆にけちょんけちょんにされる与党と野党。そんなこんなで躍進した吸血鬼党。吸血鬼党から首相が誕生。真っ先に消費税ゼロ。イケメン首相は陽の目を避けて活躍する。秘密裏に毎年一回、国民の献血義務化が通ったのは内緒の話。このプロットを元にシニカルコメディ短編小説を書きましょう。」