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『炎上姫と吸血鬼』~無能な味方に気を付けろ!!!

 

 ロサンゼルスの夜は、いつもより一段と暗く感じた。


「誰も私を理解していない」


 ジェシカ・ウィンターズ、ハリウッドの新星と呼ばれる女優は、サングラスとフードを深く被り、高級クラブの裏口からこっそりと抜け出した。彼女は今、自分の過去の発言が原因で「炎上姫」と呼ばれていた。


 古典的名作ロマンス映画『永遠の誓い』のリメイク版で主演を射止めたはずだった。しかし、その喜びもつかの間、記者会見でのある発言が彼女の人生を変えてしまった。


「昔の作品なんてほんとに下らないわ。私はそれ以上のものを表現しているのよ。王子様が救ってくれるって馬鹿らしいわ。この作品で私を表現するわ」


 原作ファンの怒りは凄まじかった。SNSでは「#ジェシカ降板しろ」がトレンド入り。製作会社からは試写会への出席を断られ、レッドカーペットからも締め出されていた。


「くそっ...」


 暗い路地で一人、ジェシカは唇を噛んだ。気づけば迷い込んだハリウッドの古い映画セット近くの廃墟。足早に歩いていると、霧のような影が彼女の前に現れた。


「こんばんは、ジェシカ・ウィンターズさん」


 透き通るように白い顔、血のように赤い唇。黒いコートを着た男は、まるで古典映画から抜け出てきたように完璧な容姿をしていた。


「あなたは誰?」


「私の名前はヴィクター。映画のファンでね。特に...古典作品が好きなんだ」


 彼の微笑みに浮かぶ尖った犬歯を見て、ジェシカはゾクリとした。


「吸血鬼...」彼女は呟いた。


「その通り。そして、少し遊びたい気分なんだ」彼は優雅に腕を広げた。


「ゲームをしよう。鬼ごっこだ」


「鬼ごっこ?」


「ルールは簡単。朝日が昇るまでに、あなたが生き延びれば勝ち。私に捕まれば...あなたは永遠に私のものになる」


 ジェシカは後ずさった。


「冗談でしょ?」


 ヴィクターの目が赤く光った。


「三十秒あげよう。走るんだ、ジェシカ」


 恐怖に背筋が凍りつくのを感じながら、ジェシカは全速力で走り出した。頭の中で思考が急速に回転する。


 _吸血鬼の弱点は何?日光、聖水、十字架、にんにく...でも今手に入るのは..._


 彼女は脳裏で吸血鬼映画の知識を総動員した。あと一時間もすれば夜明け。だが、その間、どうやって逃げ切るか。


 ジェシカの足が自然と向かったのは、かつて彼女が出演した映画のセット倉庫だった。地下には小道具室がある。そこなら何か使えるものがあるかもしれない。


 暗い倉庫に滑り込んだジェシカは、小道具室を必死に探した。十字架のレプリカ、ニンニクの造花...どれも本物ではなく効果があるとは思えない。


「ジェシカ...どこにいる?」


 ヴィクターの声が倉庫内に響き渡った。ジェシカは息を凝らし、思考を巡らせる。


 そのとき、窓から漏れる月明かりに照らされ、棚の上の物が目に入った。


『永遠の誓い』の原作本だった。


 その瞬間、彼女の頭に閃きが走った。


 _そうだ、あそこしかない!_


 彼女は素早く外に飛び出し、車に飛び乗った。エンジンを鳴らし、一つの場所を目指した。


『永遠の誓い』リメイク版の試写会場。


 今夜、ハリウッドの大物たちが集まる場所。ジェシカが出禁になっている場所。しかし、今は選択肢がなかった。


 車のアクセルを踏み込み、ジェシカはレッドカーペットが敷かれた会場の入り口に向かって突っ込んだ。


 ガラスが砕ける音と共に、彼女の車はロビーに突入した。血まみれの顔で立ち上がったジェシカを、会場にいた人々が恐怖の表情で見つめていた。


「助けて!吸血鬼が追ってくる!」


 しかし、誰も彼女の言葉を信じなかった。警備員が彼女に近づいてくる。その時、黒い影が会場に滑り込んできた。


「見事だ、ジェシカ」ヴィクターが拍手した。


「しかし、これで終わりだ」


「違うわ」ジェシカは微笑んだ。


「見て」


 天井のガラス窓から、朝日の最初の光が差し込み始めていた。ヴィクターの肌が煙を上げ始める。


「やった!勝ったわ!」ジェシカは叫んだ。


 しかし、ヴィクターは笑った。彼の肌から煙が上がっていたが、彼は消えなかった。


「古い映画の知識で私を倒せると思ったのか?残念だが、現実の吸血鬼はそう簡単には倒せない」


 彼がジェシカに近づいていく。恐怖で固まる彼女。


 その時、会場の中央に立っていた年配の女性が一歩前に出た。


「ヴィクター・ブラッド、あなたね」


 ヴィクターが凍りついたように動きを止めた。


「エレノア・ハリス...『永遠の誓い』の原作者...」


 エレノアは厳しい目でジェシカを見た。


「あなたが私の作品を「下らない」と言った子ね」


 ジェシカは震える声で言った。


「ご...ごめんなさい。私、間違ってました」


 エレノアはヴィクターに向き直った。


「あなたも間違っているわ。私の作品の真の意味を理解していない」


 彼女は手に持っていた本を開いた。


「真の愛は救済だけではなく、自己犠牲と成長の物語」


 エレノアの言葉が響く中、ヴィクターの体が徐々に透明になっていった。


「違う...私は...」


 しかし、彼の声は次第に弱まり、やがて完全に消えた。


 安堵のため息をつくジェシカ。しかし、エレノアの冷たい視線は変わらなかった。


「あなたはまだ理解していない。あなたがこの役を演じる資格はない」


「でも...」


「いいえ、もう遅いわ」エレノアはプロデューサーに目配せした。


「彼女を映画界から追放させなさい」


 試写会場から引きずり出されるジェシカ。彼女はついに理解した。真の敵は自分の傲慢さだったことを。


 夜が明けた頃、ジェシカはホテルの一室で一人、携帯の画面を見つめていた。SNSはすでに彼女の暴走について炎上していた。


「追放か...」


 ため息をつく彼女の首筋に、二つの小さな穴があった。彼女はそれに気づかない。


 部屋の隅の暗がりで、赤い瞳が光っていた。


 ヴィクターの声が彼女の耳元でささやいた。


「物語はまだ終わっていない、ジェシカ。あなたはもう私と同じだ」


 ジェシカの目が赤く光り、唇が不気味な笑みを浮かべた。


「永遠の誓い...」

プロンプト

「『炎上姫と吸血鬼』~無能な味方に気を付けろ!!!。場所はユナイテッドステイツオブアメリカ。私は名作ロマンス映画のリメイクの主演に抜擢された女優。しかし、最近「昔の作品なんてほんとに下らないわ。私はそれ以上のものを表現しているのよ。王子様が救ってくれるって馬鹿らしいわ。この作品で私を表現するわ」という原作をリスペクトしない的外れなポリコレ論と実力の伴わない発言に炎上中だった。お忍びで夜遊び中に吸血鬼と遭遇した私。吸血鬼は私に対して鬼ごっこを提案する。私は夜に吸血鬼から逃れるために、思考を巡らせる。吸血鬼の弱点は日光。朝まで逃げれば勝てる。しかし、逃げきれる保証はない。吸血鬼の弱点はいくつもあるが、結局あそこしかない。そう試写会だ。私は出禁になっていたレッドカーペットに車で突っ込む。オチはバッドエンドでお願いします。このプロットを元にシリアスコメディ短編小説を書きましょう。」

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