『断頭台吸血鬼』~絶対に解放するな!?~
カラスが鳴く高台に、銀の鎖で縛られた吸血鬼がいた。
「やぁ、少年。また来たのかい?」
吸血鬼は弱々しい声で笑った。肌は日に焼け、ところどころ黒ずんでいる。かつて街中を恐怖に陥れた『吸血鬼』の面影はなかった。
「おじさんはホントに人の血を吸うの?」
十歳になる少年トーマスは、落ち葉を蹴りながら尋ねた。母親からは「高台には絶対に行くな」と言われていたが、好奇心には勝てなかった。
「吸うとも。吸わなければ生きられないからね」
吸血鬼は舌なめずりをした。しかし、その姿はあまりにも痛々しく、トーマスは笑ってしまった。
「私が怖くないのか?」
「怖いよ。でも面白いから来ちゃう」
トーマスは正直に答えた。毎日、学校から帰るとここに来るのが日課になっていた。
「お前はおかしな子だな。ほかの子は皆、怖がって逃げていくというのに」
「だって、おじさんは縛られてるじゃない。それに…」
トーマスは言葉を詰まらせた。
「それに?」
「おじさんは話を聞いてくれる。父さんみたいに」
トーマスの父親は三年前、狩りの最中に行方不明になった。母親は働き詰めで、トーマスと話す時間はほとんどなかった。
「そうか…」
吸血鬼は静かに言った。風が高台を吹き抜け、古びた断頭台がきしんだ。
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夏至の日、トーマスが高台に着くと、吸血鬼は普段よりも元気がなかった。
「今日はなんだか元気ないね」
「ああ、少しね」
吸血鬼は空を見上げた。
「トーマス、お願いがあるんだ」
「なに?」
「明日、夏至の日の翌日は、一年で最も日が長い。この場所に日光が当たる時間も長くなる」
吸血鬼は震える声で続けた。
「私はもう長くない。このまま少しずつ日に焼かれていくよりも、最後くらいは自由に過ごしたい」
「どういうこと?」
「この鎖を外してくれないか。たった数刻だけでいい。そうすれば、自分の意志で最期を迎えられる」
トーマスは困惑した。
「嘘じゃないよ」
吸血鬼は涙を流した。
「私はもう逃げる気力もない。ただ、人間らしく…いや、吸血鬼らしく死にたいんだ」
「でも…」
「頼む、トーマス。これが私の最後のお願いだ」
トーマスは長い間考えた末、うなずいた。
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翌日、トーマスは小さな鍵を持って高台に登った。司祭の家から盗んだものだ。
「来てくれたんだね、トーマス」
吸血鬼は弱々しく微笑んだ。
「約束したから」
トーマスは手を震わせながら鍵を銀の鎖に差し込んだ。鎖が外れる音が、高台に響いた。
「ありがとう、トーマス」
吸血鬼はゆっくりと立ち上がった。そして、トーマスの肩に手を置いた。
「さあ、最後の遊びをしよう」
吸血鬼の目が赤く光った。
「遊び?」
「そう、鬼ごっこだ」
吸血鬼の口元が不気味に歪んだ。
「でも、おじさんは自分で死ぬって…」
「嘘だよ、トーマス。吸血鬼が自ら死を選ぶなんてことがあるかい?」
トーマスは後ずさりした。
「約束したじゃないか!」
「約束?冗談じゃない。私は三百年生きてきた。嘘をつくのも上手いのさ」
吸血鬼は笑った。その笑い声は、かつて街を恐怖に陥れた『吸血鬼』のものだった。
「さあ、逃げろ、トーマス。お前が逃げ切れたら、命は助けてやる」
トーマスは全力で走り出した。断頭台から、町へと続く坂道を駆け下りる。しかし、後ろから不気味な足音が迫ってきた。
「待て、トーマス。最後の血はお前から頂くよ」
トーマスは振り返らず走った。街まであと少し。
しかし、空が急に暗くなった。飛んできた大きな影が、トーマスの前に着地した。
「残念だが、ここまでだ」
吸血鬼はトーマスの首筋に鋭い牙を突き立てた。
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「断頭台の吸血鬼がいなくなっている。またもや犠牲者が」
司祭が町の教会で頭を抱えていた。
「トーマスが…息子が帰ってこないんです…」
「今度は子供か…許せん。断頭台の鎖が外された形跡がある。誰がこんなことを…」
教会の外では、トーマスの母親が泣き崩れていた。そして、町の上空には一羽のコウモリが舞っていた。それは満足げに笑いながら、次の獲物を探していた。
町はまた、恐怖の夜を迎えようとしていた。
プロンプト
「『断頭台の吸血鬼』。この街の高台にいる吸血鬼。そいつは夜な夜な街で鬼ごっこを仕掛けてはヘトヘトになるまで追いかけまわして人々の血を吸っていた罪人。しかし、司祭によって捕らえられて高台の断頭台に縛り付けにされた。毎日日光が5分だけあたる断頭台に銀の鎖で縛りつけられた。大人たちからは行くなと言われていたが、少年は興味本位でそこに行く。吸血鬼は情けない姿で縛り付けられていた。吸血鬼と仲良くなる少年。少年は父親がいなかった。少年は吸血鬼から「数刻でいいから自由になりたい」。泣きながら懇願する吸血鬼。少年は吸血鬼が数刻ののち日光を浴びて自決するという言葉を信じて銀の鎖を外すが。このプロットを元にダークシリアスファンタジーコメディ短編小説を書きましょう。オチはバッドエンドでお願いします。」