『胸熱な展開に吸血鬼』~覚醒フラグは不発に終わりました~
「クソッ!こんなところで負けるわけには!」
息を切らして走る俺の足音が廊下に響く。城の壁は赤く染まり、窓から見える夜空には無数の松明が星のように点在していた。
王国史上最弱と呼ばれる俺——アルフレッド・フォン・ノースキル。その名の通り、ろくなスキルも持たない落ちこぼれ王子である。本来なら王位継承権など最初から持っていなかったはずだが、疫病で兄姉が全て逝ってしまい、残ったのは不運にも俺だけだった。
そんな俺の城が今、クーデターで襲撃されている。
「殿下、こちらです!」
俺の前に立っていたのは、執事のアルバート。白髪の老人だが、この王国でも一目置かれる実力者だ。そして唯一、俺を王子として扱ってくれる人物でもあった。
「もうダメだ、アルバート。逃げるぞ!」
「ご安心を。密通路を抜ければ安全な場所へ——」
その時、廊下の先から黒装束の集団が現れた。どうやら追手が俺たちの逃げ道を塞いだようだ。
「殿下、私は置いてお逃げください」
アルバートは静かに、だが毅然とした声で言った。
「何言ってるんだ!お前も一緒に——」
「私が時間を稼ぎます。殿下には必ず生き延びていただきたい」
ハッと気づくと、アルバートは追手に向かって歩き出していた。
「待て、アルバート!」
俺は震える足を抑えながら叫んだ。だが、アルバートは振り返らなかった。
「殿下の才能は、私には見えています。あなたには必ず王の資質が——」
追手の一人が放った矢がアルバートの肩を貫いた。老執事の悲鳴に、俺は葛藤する。逃げるべきか、それとも——。
「待て!」
思わず、俺は声を上げていた。
追手の男が薄笑いを浮かべる。
「ノースキルの出来損ない王子が何をいきがっているんだ?お前のような無能が王になるくらいなら、この国は滅びた方がましだ」
その言葉に、胸の奥で何かが燃え上がるのを感じた。
「俺は......俺は......!」
全身が熱くなる。まるで体中の血が沸騰しているかのようだ。
「な、なんだ!その炎は!」
追手の男が驚愕の声を上げる。俺の体から炎が立ち上り、廊下を赤く照らしていた。これが父から受け継いだという伝説の王の才能——スキル「炎帝」の力なのか?
ついに俺の中に眠っていた真の力が目覚めたのだ!今こそ敵を薙ぎ払い、アルバートを救い、王国を取り戻す時だ!
俺は拳を固め、スキルを発揮しようとした。その瞬間——
「お疲れ様です」
廊下の天井から黒いマントをなびかせて現れたのは、銀髪の美青年だった。彼の口元から覗く鋭い牙が、その正体を物語っている。
吸血鬼だ。
「ちょっと失礼します」
吸血鬼は言うが早いか、光のように追手の間を駆け抜けた。悲鳴も上げられず、黒装束の男たちは次々と倒れていく。
「お、おい......」
わずか数秒で、追手は全滅していた。吸血鬼は優雅に着地すると、口元の血を拭った。
「無法者はなんの躊躇もなく食料にできるからいい。今日の晩餐には十分ですね」
彼は俺を一瞥すると、突然サムズアップをして見せた。
「その炎、カッコいいですね。でも私が片付けましたので、もう大丈夫ですよ」
「え?」
俺は自分の体を見下ろした。確かに燃え上がっていたはずの炎が、いつの間にか消えている。
「お、おれの覚醒フラグが...」
吸血鬼は肩をすくめると、「では」と短く告げ、来た時と同じように天井へと飛び去っていった。
部屋に残されたのは、呆然とする俺と、肩を押さえながらも生き延びたアルバートだけだった。
「殿下...あの炎は...」
「...消えた」
俺はガッカリとつぶやいた。せっかく熱い展開が来て、ついに覚醒したと思ったのに、吸血鬼のせいで台無しだ。
翌日、城の状況は落ち着いていた。クーデターは鎮圧され、犯人たちは「原因不明の集団失血死」として処理された。そして俺はというと、相変わらずのノースキル王子として日常を送っていた。
「殿下、今夜は満月です。お気をつけください」
執事のアルバートが言う。彼の肩の傷は、不思議なことにすっかり治っていた。
「満月がどうしたって?」
「満月の夜は、怪しいものが出るとか...」
「怪しいもの?」
その時、窓の外に人影を感じた。見ると、見覚えのある銀髪の美青年が、サムズアップをしながら空を飛んでいる。
「...吸血鬼か」
「何か言いましたか、殿下?」
「いや、なんでもない」
太陽が沈み、夜の帳が下りてきた。俺は窓の外を見つめながら思う。
覚醒フラグは不発に終わったな…
プロンプト
「『胸熱な展開に吸血鬼』~覚醒フラグは不発に終わりました~。「クソ!。こんなところで負けるわけには!」。場所は異世界。落ちこぼれ王子である俺は城を襲撃されて逃げていた。「私は置いてお逃げください」。唯一俺の才能を信じていた執事は自分を犠牲に追ってから逃がそうとした。執事の悲鳴に俺は葛藤する。「待て!」。俺は震える足を抑えながら叫んだ。「ノースキルの出来損ない王子が何をいきがっているんだ」。追手は俺を嘲笑う。そのとき、俺の中の王の才能。スキル「炎帝」が覚醒する。「な!なんだ!その炎は!」。俺はスキルを発揮しようとした。そのとき、「お疲れ様です」。吸血鬼が突然現れて追手を倒す。「無法者はなんの躊躇もなく食料にできるからいい」。吸血鬼は俺を一瞥してサムズアップして消える。「お、おれの覚醒フラグが…」。気が付くと、炎帝スキルは消えていた。このプロットを元にシリアスファンタジーコメディ短編小説を書きましょう。」