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『超合金ヴァンパイア現る!!!』~金属系ドラキュラの対処法~

 

 午後11時23分、東京・新宿の裏路地で、私は人生で初めて吸血鬼と遭遇した。


「え?」


 私の前に立っていたのは、確かに人の形をしていたが、その体は金属でできていた。月明かりを反射して煌めく表面は、まるで最新の高級車のボディのようだった。


「驚いたかい?」


吸血鬼は低く響く声で言った。


「このメタリックなフォルム、美しいと思いませんか?」


 私は返事ができなかった。目の前の存在が何者なのか理解できないでいた。


「私は『超合金ヴァンパイア』。人間の血と金属を愛する新世代の吸血鬼さ」


 彼は自分の腕を掲げて月明かりに照らし、うっとりと眺めた。


「チタンとバナジウムの合金に、少量のタングステンを加えたボディ。耐熱性、耐食性は抜群。そして、このフォルムの美しさ!」


「は、はあ…」


「さて、」


彼は突然、表情を変えた。


「血を吸わせてもらおうか」


 私は咄嗟に一歩後ずさった。


「おや、逃げる気?」


彼は微笑んだ。


「面白い。では、ゲームにしよう。鬼ごっこをしようじゃないか」


「鬼ごっこ?」


「そう。朝日が昇るまで私から逃げ切れれば、君の勝ちだ。私は君の血を諦める。しかし、捕まれば…」


 彼は言葉を濁したが、意味は明確だった。


「待ってください!」


私は叫んだ。


「吸血鬼って、ニンニクとか十字架が弱点じゃないんですか?」


 超合金ヴァンパイアは大声で笑った。


「古い!古すぎる!私はハイテク吸血鬼だ。ニンニクはアレルギーもなければ、十字架も宗教的トラウマとは無縁だ。流れる水?泳げるぞ。日光は…まあ、それだけは避けたいがね」


「じゃあ、朝まで逃げ切れば…」


「その通り!」


彼は指を鳴らした。


「でも、それまでに捕まえるさ。ゲーム開始は…今だ!」


 私は反射的に走り出した。背後からは金属が擦れる音が聞こえる。


「待てよ〜、血を分けてくれよ〜」


 超合金ヴァンパイアの声は、予想以上に間抜けだった。


 新宿の雑踏を全力で駆け抜けながら、私は思考を巡らせた。普通の吸血鬼なら、ニンニクや十字架で追い払えるはずだ。しかし、この超合金ヴァンパイアには通じない。


「金属…金属の弱点は…」


 そう考えている間に、背後から轟音が響いた。振り返ると、超合金ヴァンパイアが電柱をなぎ倒しながら追いかけてきていた。


「滅茶苦茶だなあいつ!」


 私は急いで路地に逃げ込んだ。道端にあった自転車を拾い上げ、必死にペダルを漕いだ。


「逃げられるとでも思ったか!」


 背後からの声に続いて、恐ろしい音が聞こえた。金属の体が地面を蹴る音、そして…車のアラームが鳴り響く音。


「まさか…」


 振り返ると、超合金ヴァンパイアが路上駐車の車を持ち上げ、私に向かって投げつけていた。


「冗談じゃない!」


 私は自転車ごと地面に倒れ込み、かろうじて飛んできた車を避けた。


「おいおい、壊れやすいなあ、車って」


 超合金ヴァンパイアが近づいてくる。その歩みは遅いが、確実だ。


「まだ朝まで4時間ある。どこへ逃げる?」


 私は再び走り出した。頭の中で超合金ヴァンパイアの弱点を考える。


「金属…金属の弱点は…腐食!酸化!磁石!」


 そうだ、磁石は金属を引き寄せる。もし強力な磁石があれば…


「でも、どこで手に入れる?」


 走りながら周囲を見回すと、電気街の方角が目に入った。


「そうだ、秋葉原なら何かあるかも!」


 私は方向転換し、秋葉原へ向かった。超合金ヴァンパイアは相変わらず、街の設備を破壊しながら追いかけてくる。


「滅茶苦茶だなあいつ…」


 秋葉原に着くと、深夜にもかかわらず一部の店はまだ開いていた。24時間営業の電器店に飛び込み、店員に叫んだ。


「強力な磁石ありますか?!」


 店員は驚いた顔をしたが、奥から巨大な工業用電磁石を持ってきた。


「これは試作品の…」


「いくらですか?」


「30万円ですが…」


「買います!」


 私はクレジットカードを投げつけ、電磁石を抱えて店を飛び出した。


「ちょっと、説明書は…」


 店員の声は聞こえなくなった。


 電磁石を持って路地に隠れ、超合金ヴァンパイアを待った。


「どこだ…血の匂いがする…」


 彼の声が近づいてきた。私は震える手で電磁石のスイッチを入れた。


「見つけたぞ!」


 超合金ヴァンパイアが路地の入り口に現れた瞬間、電磁石が強力な磁力を発生させた。


「なっ…なんだこれは!」


 超合金ヴァンパイアの体が突然、電磁石に向かって引っ張られた。


「ちょっ…やめろ!私のボディが…変形する!」


 彼は抵抗しようとしたが、磁力は強力だった。彼の体は少しずつ電磁石に引き寄せられていく。


「このままでは…私のフォルムが台無しに!」


 超合金ヴァンパイアは悲鳴を上げながら、自分の体が変形していくのを見ていた。


「ああ!私の美しいボディ!」


 電磁石に引き寄せられたヴァンパイアは、もはや人型を保てなくなっていた。


「待て!待ってくれ!降参だ!」


 彼は叫んだ。


「朝まで逃げ切る必要はない。君の勝ちだ!」


 私はおそるおそる電磁石のスイッチを切った。超合金ヴァンパイアはボコボコに変形した体で床に倒れこんだ。


「なんてことをしてくれたんだ…」


彼は呟いた。


「私の美しいフォルム…」


「あなたこそ、なんてことを…」


私は街の破壊された様子を指差した。


「あ、あれは…熱くなりすぎた。すまない」


 超合金ヴァンパイアは立ち上がろうとしたが、体の一部が歪んでいて難しそうだった。


「じゃあ、もう私を追いかけたりしないんですね?」


「ああ…約束する。だが、一つ条件がある」


「なんですか?」


「この体…直してくれないか?」


 超合金ヴァンパイアは哀れな目で私を見た。


「ナルシストなんだな、あなたは」


「美は永遠だ。それは不滅の吸血鬼である私にとって、最も重要なことなのさ」


 私は深いため息をついた。


「わかった。でも、二度と人間を襲わないと約束して」


「約束する。人間の血の代わりに…」


「代わりに?」


「金属磨き剤を分けてくれないか?このボディ、ピカピカに保つのが大変でね」


 私は笑いを堪えきれなかった。


「了解。友達になれそうですね」


「友達?」


超合金ヴァンパイアは驚いた顔をした。


「私は不死の存在だぞ?」


「だからこそ、いい友達になれるかもしれない。名前は?」


「名前?」


彼は考え込んだ。


「メタリカ…いや、アイアンメイデン…それとも…」


「シンプルに『メタル』でいいんじゃない?」


「メタル…」


彼はその名前を味わうように言った。


「悪くない。君は?」


「俺は大槻だ。大槻健司(ケンジ)


「大槻健司と超合金ヴァンパイア・メタル…」


彼は口の端を上げた。


「なかなか面白い組み合わせだな」


 東の空が明るくなり始めた。メタルは慌てて影に隠れた。


「日が昇る前に隠れなきゃ」


「わかった。じゃあ、また夜に」


 メタルは微笑んだ。


「また夜に会おう、大槻健司。そして、金属磨き剤を忘れるなよ」


 私は笑いながら頷いた。吸血鬼退治の朝は、意外な友情の始まりだった。


 ***


 プロローグ


 東京都渋谷区の小さなアパートで、一人の男が起床した。部屋の隅には、磨き上げられた金属の彫刻が置かれていた。


「おはよう、メタル」


 彫刻は動かなかった。日中、超合金ヴァンパイアは眠りにつく。


 男は金属磨き剤とクロスを取り出し、彫刻を優しく磨き始めた。


「今夜も一緒に出かけようか」


 窓の外では、東京の街が新しい一日を迎えていた。

プロンプト

「『超合金ヴァンパイア現る!!!』~金属系ドラキュラの対処法~。場所は東京、夜中に吸血鬼と遭遇した私。吸血鬼は私に対して鬼ごっこを提案する。私は夜に吸血鬼から逃れるために、思考を巡らせる。ふつうの吸血鬼の弱点は日光。朝まで逃げれば勝てる。しかし、逃げきれる保証はない。吸血鬼の弱点はいくつもあるが、こいつは見た目が金属。「このメタリックなフォルム美しいと思いませんか」。超合金だ。しかもナルシスト。ニンニクも十字架も流れる水も効き目がなさそうだ。そうこうしていうちにヴァンパイアは電柱や車をなぎ倒しながら追いかけてくる。「滅茶苦茶だなあいつ」。このプロットを元にシリアスコメディ短編小説を書きましょう。」

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