『朝まで討論!吸血鬼に襲われたら!!』
スタジオの照明が明るすぎて、視聴者は司会者・田中の額の汗まで見えてしまう。彼は鮮やかなブルーのスーツに身を包み、カメラに向かって完璧な笑顔を浮かべていた。それはまるで「この番組は完全にコントロール下にある」と言わんばかりの微笑み。だが、その目は別の物語を語っていた。
「さて、今日の議題は『吸血鬼に襲われたらどうするべきか』です。では始めましょう」
カメラがパネリストたちに向けられる。左から順に、インテリ風のショーンV、左翼系記者の餅月、ネット民代表の南村、そして「激ヤバフリージャーナリスト」と揶揄される横槍田が並んでいた。スタジオには緊張感と、何故か軽いポップコーンの香りが漂っていた。
ショーンVが喉を鳴らし、メガネを指で押し上げる。
「そういう場合はまずはどこかに逃げ込むべきなんですよ。科学的に考えて、吸血鬼は招かれなければ家に入れないという性質があります。これはブラム・ストーカーの『ドラキュラ』から来ている設定で―」
餅月が腕を組み、ショーンVの発言を遮った。
「話し合いしないんですか?暴力は最後の手段であるべきです。吸血鬼にも権利があるのではないでしょうか。共存の道を探るべきです」
スタジオが一瞬静まり返る。そして突然、南村が大きく笑い出した。
「襲われているのに話し合いw」
彼はスマホを見ながら言った。
「今、このハッシュタグがトレンド入りしてますよ。#餅月は吸血鬼と話し合いたい。もう、ミームになってますね」
餅月は顔を赤らめながらも、決して譲らない表情を浮かべた。
「人間と吸血鬼の間の不信感を解消するための第一歩として―」
そこへ横槍田が身を乗り出してきた。彼の髪は乱れ、目は何かに取り憑かれたように輝いていた。
「ところで吸血鬼ってどういう理念なんですか?私の独自取材によると、吸血鬼は実は政府によって作られた生物兵器で、彼らの血には特殊な化学物質が―」
司会の田中が慌ててカットイン。
「少し話が逸れているようですね。具体的な対策に戻しましょう」
「それが対策の本質なんですよ!」
横槍田は声を荒げた。
「敵を知ることが先決です!私のブログでは既にまとめサイトの情報を元に三万字の記事で解説済みで―」
パネリスト同士の議論はますます加熱し、もはや誰も誰の話も聞いていない状態になっていた。カメラは徐々にズームアウトし、スタジオ全体を映し出す。
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一方、都内某所のとあるマンションの一室。暗い部屋の中で、数人の影が液晶テレビの前に集まっていた。
「どうやら有意義な話し合いになっていないな」
長身の男が言った。その目は異様な赤さで輝いていた。
「我々の対処法を引き出して対策を練ろうとしたが…」
もう一人の影が笑った。その口元からは鋭い牙が覗いていた。
「だが、獲物は決まったな。こいつらを助けたいと思うやつなど…」
彼らの高笑いが部屋に響き渡る。
テレビに映る討論番組では、パネリストたちがまだ激論を交わしていた。
「ニンニクは効果があるのか、それとも単なる迷信なのか、焼き肉屋に...」とショーンVが熱く語る。
「外国の吸血鬼と日本の吸血鬼は違うんですよ!」と横槍田が叫ぶ。
「SNSで吸血鬼との対話チャンネルを設立すべきです」と餅月が提案。
「リアルでの吸血鬼経験者の声をまとめてみた」と南村がスマホを見せる。
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翌朝のワイドショー。
「昨夜の『朝まで討論!』の出演者全員が謎の失踪を遂げました。警察は現在捜査中ですが、スタジオには奇妙なことに赤いワインのようなものが…」
テレビの前で朝食を食べていた主婦は息子に向かって言った。
「ほら、だから言ったでしょ。あんな番組に出たら命取りになるって」
少年はシリアルをかき混ぜながら返事した。
「でも面白かったじゃん。視聴率、珍しく今年最高の4%だってさ」
その頃、あるマンションの窓には黒いカーテンが引かれ、新たな『朝まで討論!』の企画会議が始まっていた。次回のテーマは「狼男に変身したらどうするべきか」。
生放送をお楽しみに。
プロンプト
「『朝まで討論!吸血鬼に襲われたら!!』。「さて、今日の議題は『吸血鬼に襲われたらどうするべきかです』では始めましょう」。真面目そうな髪型の爽やか系アナウンサーが司会をする。インテリ風な見た目のショーンVがまず初めに語り出す。「そういう場合はまずはどこかに逃げ込むべきなんですよ」。それに釘をさすようになんちゃって左翼系記者の餅月は言う。「話し合いしないんですか」。ネット民の藩王「襲われているのに話し合いw」。そこにさらに話の腰を折るように討論しない系かまって系情報はまとめサイトオンリーの激ヤバフリージャーナリストの横槍田。「ところで吸血鬼ってどういう理念なんですか」。最後に、都内某所で謎の集団が集まっていた。「どうやら有意義な話し合いになっていないな、我々の対処法を引き出して対策を練ろうとしたが…」。そういうと別な奴が言った。「だが、獲物は決まったな、こいつらを助けたいと思うやつなど…」。謎の集団は高笑いする。このプロットを元にシニカルコメディ短編小説を書きましょう。」




