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『ヤンキー美少女総長 アビゲイル a.k.a 凄腕降霊師 西園寺』~安倍晴明編~

 夕焼けに染まる学校の屋上。私――西園寺アビゲイル――は、自分がこんな状況に追い込まれるとは思ってもみなかった。


「アビさん!大変っす!」


 翌日の放課後。私の舎弟のキヨが教室に駆け込んできた。汗だくで息も切れ切れだ。


「どしたの?また近所のチーマーが絡んできた?」


 私は教科書をカバンに詰めながら尋ねた。昨日の夜、珍走団の集会後に変な吸血鬼と戦ったせいで、今朝は寝坊して授業中ずっと寝ていた。


「違うっす!昨日の吸血鬼...」


 私は反射的に口に人差し指を当てて「シーッ」と制した。まわりにはまだ帰りの準備をしているクラスメイトたちがいる。西園寺アビゲイルの二つの顔――ヤンキー総長と降霊師――の一つは、できるだけ学校では隠しておきたい。まあ、もう一つもだけど。


「屋上」


 私は小声で言うと、カバンを持って立ち上がった。


 私たちは急いで屋上に向かった。三月の風が髪を揺らす。夕暮れが近づいていた。


「で、どうしたの?」


 屋上のドアを閉め、人気のないことを確認してから尋ねた。


「昨日の吸血鬼、うちのテリトリーで暴れてるっす!」


「は?」


 私は素っ頓狂な声を上げた。昨日、なんとか撃退したはずだった。


「夜な夜な若い女の子に声かけて、鬼ごっこを仕掛けてるって!負けた子から血を吸ってるらしいっす!」


 私は眉をひそめた。確かに昨日の吸血鬼、負けず嫌いそうな顔をしていた。私が「鬼ごっこなら負けないよ」と挑発したのを根に持ってるのかもしれない。


「西園寺さん!」


 突然、屋上のドアが開き、生徒会長の榊原が駆け込んできた。おとなしい文学少女タイプで、私がヤンキーだって知らない数少ない生徒の一人だ。


「あの、相談が...」


 榊原は息を切らしながら私に近づいてきた。その表情は明らかに何かに怯えていた。


「榊原さん、どうしたの?」


「実は、私の妹が...昨日、変な男に声をかけられて...」


 ピンときた。


「それって、真っ赤な目の?」


 榊原は驚いた顔で頷いた。


「西園寺さん、降霊師として...何か」


「えっ!?榊原さん、私のこと知ってたの!?」


 私は思わず叫んだ。


「ふふ、噂くらい聞いてますよ。群馬で一番の降霊師さんのことは」


 彼女は微笑んだ。なんだかとても大人びた表情だった。


「まぁ、降霊師の方は隠してないけど...」


「ヤンキーの方も知ってますよ?」


「」


 私の顔が真っ赤になる。珍走団総長なのに。恥ずかしい。


「とにかく!」キヨが話を戻す。


「どうするっすか?」


 私はスマホを取り出した。昨日は戦国武将の英霊・本多忠勝様を呼び出して何とか吸血鬼を追い払った。でも、あの吸血鬼、ただの下っ端じゃない。本多忠勝様も苦戦していた。


「本多忠勝様に、もう一仕事お願いするか...」


 その時、背後から冷たい声が響いた。


「それは、できないと思うがね」


 振り向くと、そこには昨日の吸血鬼が立っていた。夕陽に照らされているはずなのに、なぜ...。


「なっ!」


「私も勉強したよ。この学校の屋上には、不思議な結界が張られていてね。日光も通さない」


 吸血鬼は余裕の表情で言った。その口元からは鋭い牙が覗いている。


「キヨ!榊原さん!」


 二人は反射的に私の後ろに隠れた。


「今日は、お友達も一緒か。楽しくなりそうだね」


 吸血鬼が一歩前に出る。私は数珠を握りしめた。


 でも、本多忠勝様は呼べない。結界の中じゃ...。


 そう思った時、榊原が小声で言った。


「西園寺さん、私...実は陰陽師の血を引いているんです」


「は?」


 思わず振り返ると、榊原は真剣な表情で私を見ていた。


「結界を解くことならできます。でも、時間が...」


 私は吸血鬼を見た。徐々に近づいてくる。ヤンキー生活で鍛えた勘が告げる。


「時間稼ぎね...任せて!」


 私はスカートをまくり上げた。


「ちょ、西園寺さん!?」


 榊原が慌てる。でも心配無用。スカートの下には、走り屋魂満載の派手なスパッツ。赤と黒のチェック柄に、ドクロのワッペンがついている。


「キヨ!伝家の宝刀!」


「おうっす!」


 キヨがバッグから取り出したのは、私専用の特攻服。背中には「西園寺連合総長」の文字が金糸で刺繍されている。


「へぇ...その格好で戦うつもりかい?」


 吸血鬼が笑う。


 私は特攻服を羽織りながら、不敵な笑みを浮かべた。


「戦うんじゃないわ」


「なに?」


「逃げるの」


 私は屋上の端に走った。


「西園寺さん!?」


 榊原が悲鳴を上げる。でも大丈夫。


「7階だろうが10階だろうが...」


 私は手すりを跳び越えた。


「群馬のヤンキーなめんなよォォォォ!」


 空中で私は特攻服を広げた。ハングライダーのように風を捉え、滑空する。


「ナニィィィィィィィィィィィィィィィィィ!?」


 吸血鬼は驚愕の表情を浮かべた。


 実は私の特攻服には特殊な仕掛けがある。裏地に極薄の特殊素材が縫い込まれていて、広げると滑空できるのだ。群馬のヤンキーはみんな持ってる。山国だからね。


 私は校庭に着地すると、すぐさま走り始めた。


「おーい!こっちだよ、吸血野郎!」


 吸血鬼は怒りの形相で屋上から飛び降り、私を追いかけてきた。


「逃げられると思うな!」


 私は校舎の周りを走りながら、スマホを取り出した。


「本多忠勝様、いけますか?」


『結界の外なら呼び出せるぞ、アビゲイル』


 画面に浮かび上がる武将の顔。ありがたい。


「じゃあ、あと10分で榊原の準備が整うから、それまで持ちこたえて!」


『任せろ』


 私は校庭の中央に立ち止まった。今、屋上では榊原が結界を解除する準備をしているはず。キヨが見張りをしている。


「もう逃げないのか?」


 吸血鬼が近づいてきた。


「冗談じゃないわよ。西園寺アビゲイルが逃げるわけないでしょ!」


 私は特攻服の内ポケットから御札を取り出した。


「出でよ、本多忠勝様!」


 御札から光が放たれ、巨大な武者の姿が現れた。鎧を身にまとい、長槍を構える。


「なんだと!?結界があるはずだ!」


「残念でした。ここは結界の外よ」


 本多忠勝様は無言で槍を構えた。


「たいしたことはない!」


 吸血鬼は牙をむき出しに、本多忠勝様に飛びかかった。二つの影が校庭で激しくぶつかり合う。


 私はその戦いを見ながら、屋上を見上げた。キヨが手を振っている。成功の合図だ!


「本多忠勝様!あと少しです!」


『りょうかい!』


 武将の声が響く。吸血鬼を押し込んでいるが、昨日と同じく完全に倒すまでには至らない。


 その時、空から光が降り注いだ。


「結界解除、完了です!」


 榊原の声が屋上から響く。そして彼女は何やら呪文を唱え始めた。


「おん、あびらうんけん!」


 空に巨大な魔法陣が広がる。安倍晴明の式神召喚の印だ!


「出でよ、我が先祖の力!安倍晴明公!」


 魔法陣から一人の陰陽師が姿を現した。平安装束に烏帽子をかぶり、扇を手にしている。


「なに!?」


 吸血鬼は驚愕の表情を浮かべた。


「汝、穢れし者よ」


 安倍晴明は静かに扇を広げた。


「この世ならざる場所へ還るがよい」


 扇を一振りすると、吸血鬼の周りに五芒星が浮かび上がった。


「くっ...群馬県舐めてると...ただじゃ...」


 吸血鬼の体が徐々に光に包まれ、消えていった。


「勝った...?」


 私は呆然と立ち尽くした。


「西園寺さーん!」


 榊原が屋上から手を振っている。


「やりましたね!」


 私は疲れた体で手を振り返した。


「いやー、群馬すげぇっす!」


 キヨも屋上から叫んでいる。


 本当に群馬県って何なんだろう。陰陽師の血を引く生徒会長に、特攻服で滑空するヤンキーに、御札で武将を呼び出す降霊師...。


「まぁ、これでいいか」


 私は空を見上げながらつぶやいた。


「アビゲイル、よくやった」


 安倍晴明は私に微笑みかけた。


「私の血を引く者と共闘するとは、興味深い縁だ」


「え、あの...ありがとうございます」


「また必要な時は呼ぶがよい。群馬の降霊師よ」


 そう言うと、安倍晴明は魔法陣と共に消えていった。


 後日、榊原と私は学校帰りに話をすることになった。


「西園寺さんは降霊師として有名だけど、なんでヤンキーなの?」


「それはね、群馬のヤンキーたちの中に悪霊憑きがいて...」


「なるほど!」


「そこで私が降霊師として除霊したら、感謝されてそのままリーダーになっちゃって...」


「群馬、怖い...」


 榊原はドン引きした顔をしたが、すぐに笑顔になった。


「でも、いいコンビになれそうね。私たち」


「そうね、群馬最強の陰陽師と降霊師コンビ...」


 私たちは並んで歩きながら、夕焼けに向かって笑った。


 これからの群馬の妖怪退治は、私たちに任せてほしい。

プロンプト

「『ヤンキー美少女総長 アビゲイル a.k.a 凄腕降霊師 西園寺』~安倍晴明編~

「おい、アビさん!大変っす!」

翌日の放課後。私の舎弟のキヨが教室に駆け込んできた。

「どしたの?また近所のチーマーが絡んできた?」

「違うっす!昨日の吸血鬼...」

私は口に人差し指を当てて「シーッ」と制した。まわりにはまだ帰りの準備をしているクラスメイトたちがいる。

「屋上」

私たちは急いで屋上に向かった。夕暮れが近づいていた。

「で、どうしたの?」

「昨日の吸血鬼、うちのテリトリーで暴れてるっす!」

「は?」

「夜な夜な若い女の子に声かけて、鬼ごっこを仕掛けてるって!負けた子から血を吸ってるらしいっす!」

私は眉をひそめた。確かに昨日の吸血鬼、負けず嫌いそうな顔してたけど...。

「西園寺さん!」

今度は生徒会長の榊原が駆け込んできた。おとなしい文学少女タイプで、私がヤンキーだって知らない数少ない生徒の一人だ。

「あの、相談が...」

「榊原さん、どうしたの?」

「実は、私の妹が...昨日、変な男に声をかけられて...」

ピンときた。

「それって、真っ赤な目の?」

榊原は驚いた顔で頷いた。

「西園寺さん、降霊師として...何か」

「えっ!?榊原さん、私のこと知ってたの!?」

「ふふ、噂くらい聞いてますよ。群馬で一番の降霊師さんのことは」

「まぁ、降霊師の方は隠してないけど...」

「ヤンキーの方も知ってますよ?」

「」

私の顔が真っ赤になる。珍走団総長なのに。

「とにかく!」キヨが話を戻す。

「どうするっすか?」

私はスマホを取り出した。

「本多忠勝様に、もう一仕事お願いするか...」

その時、背後から冷たい声が響いた。

「それは、できないと思うがね」

振り向くと、そこには昨日の吸血鬼が立っていた。夕陽に照らされているはずなのに、なぜ...。

「なっ!」

「私も勉強したよ。この学校の屋上には、不思議な結界が張られていてね。日光も通さない」

「キヨ!榊原さん!」

二人は私の後ろに隠れた。

「今日は、お友達も一緒か。楽しくなりそうだね」

吸血鬼が一歩前に出る。私は数珠を握りしめた。

でも、本多忠勝様は呼べない。結界の中じゃ...。

そう思った時、榊原が小声で言った。

「西園寺さん、私...実は陰陽師の血を引いているんです」

「は?」

「結界を解くことならできます。でも、時間が...」

私は吸血鬼を見た。ヤンキー生活で鍛えた勘が告げる。

「時間稼ぎね...任せて!」

私はスカートをまくり上げた。

「ちょ、西園寺さん!?」

榊原が慌てる。でも心配無用。スカートの下には、走り屋魂満載の派手なスパッツ。

「キヨ!伝家の宝刀!」

「おうっす!」

キヨがバッグから取り出したのは、私専用の特攻服。背中には「西園寺連合総長」の文字。

「へぇ...その格好で戦うつもりかい?」

吸血鬼が笑う。

私は特攻服を羽織りながら、不敵な笑みを浮かべた。

「戦うんじゃないわ」

「なに?」

「逃げるの」

私は屋上の端に走った。

「西園寺さん!?」

榊原が悲鳴を上げる。でも大丈夫。

「7階だろうが10階だろうが...」

私は手すりを跳び越えた。

「群馬のヤンキーなめんなよォォォォ!」

このプロットを元に短編コメディライトノベル小説を書いてください。」

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