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『TO BE』~吸血鬼に襲われたら本能寺バーニング!!!~

 

 月光が冷たく照らす初夏の夜、京の都は静寂に包まれていた。私、織田信長は本能寺で就寝の準備をしていたところだった。側近たちも休息に入り、寺内は水を打ったように静かだった。


「ふむ、明日はハゲネズミ(秀吉)からの報告があるな」


 そう呟いて、私は燭台の灯りを消そうとした瞬間——。


「やぁ、織田殿。こんばんは」


 声の方向を振り向くと、窓際に一人の見知らぬ男が立っていた。青白い肌に赤い瞳。口元からは鋭い牙が覗いている。


「貴様、何者だ?」


 私は咄嗟に刀に手をかけた。


「何者かと問われれば、まぁ...吸血鬼、とでも申しておきましょうか」


 男はにやりと笑った。その表情には人間離れした何かがあった。


「吸血鬼?妖怪の類か」


「ほう、ご存知でしたか。さすがは第六天魔王」


「で、何の用だ?」


「いきなりですが、織田殿。鬼ごっこをしませんか?」


「は?」


 予想外の言葉に、私は思わず素っ頓狂な声を上げてしまった。


「ルールは簡単。朝日が昇るまでに私に捕まらなければ、あなたの勝ち。捕まれば...ふふ、察してください」


「くだらん。警護の者を呼ぶぞ」


 私が声を上げようとした瞬間、吸血鬼は一瞬で私の前に現れ、口を塞いだ。


「無駄ですよ。もう皆、深い眠りに落ちています」


 その言葉に、私は寒気を覚えた。どうやら本当に危険な状況らしい。


「よろしい、受けて立とう」


「素晴らしい。では、十数えたら始めましょう。一、二...」


 数え始めた吸血鬼から離れ、私は急いで廊下へと飛び出した。頭の中では様々な思考が駆け巡る。


 鬼の弱点は何だったか...


 いずれにせよ、今手元にあるのは刀のみ。しかも相手は常人離れした速さを持つ。正面から戦っても勝ち目はない。


 外へ出ると、月明かりが本能寺を照らしていた。このまま逃げ続けて朝を迎えればいいのだが、この吸血鬼の速さではとても...


「見~つけた」


 背後から聞こえる声に、私は身を翻した。既に吸血鬼は数間先に立っていた。


「なんと素早い」


「褒めていただき光栄です。さて、どうします?」


 *このままでは勝ち目がない。考えろ、考えろ...もしや朝日が出るまでというのは…*


 そのとき、私の目に油庫が入った。そうだ、あれしかない。


「貴様、このゲームに勝っても意味はないぞ」


「ほう?」


「朝になれば貴様の勝利も束の間。日本はすぐにハゲネズミに統一され、お前は討伐される」


「なるほど、脅しですか」


「脅しではない。未来だ」


 私は静かに油庫の方へと後退りしながら話を続けた。


「それでも私は今を楽しむ者。さあ、逃げるなら逃げてください」


 吸血鬼が一歩踏み出したその時、私は懐から火打石を取り出し、素早く火を灯した。


「何を...?」


「本能寺の変だ!」


 私は油の入った桶に火を投げ込んだ。


 一瞬にして炎が上がり、油庫から本堂へと燃え広がっていく。


「な、何をする気だ!自分も焼け死ぬぞ!」


 吸血鬼の顔から余裕が消えた。


「ふふ...火は鬼の弱点ではなかったか?」


「い、いや、そんなことは...」


「冗談だ。だが火は光を生む。微弱ながらも太陽に近い光をな!」


 炎は見る見るうちに広がり、夜の闇を赤く染めていく。吸血鬼は炎の光から身を隠すように後ずさった。


「なるほど、光が嫌いなのは本当か」


「く...」


 チャンスとばかりに、私は本堂の反対側へと走り出した。


「逃がさんぞ!」


 吸血鬼は炎を避けながら私を追いかける。だが、四方から立ち上る炎は彼の動きを鈍らせていた。


「この炎、予想以上に...」


 私も煙を吸い込み、咳き込みながら逃げる。やがて本能寺全体が炎に包まれ、夜空は明るく照らされていた。


「織田殿!どこだ!」


 吸血鬼の声が遠のいていく。ついに炎の勢いは収まらず、本能寺全体を焼き尽くすほどになっていた。


 私は寺の裏手から脱出し、遠くから炎上する本能寺を見つめていた。


「これで朝までは...」


「よく考えましたね」


 突然背後から声がした。振り返ると、そこには煤けた顔の吸血鬼が立っていた。


「まさか...」


「炎の中から脱出するのは少々大変でしたよ。しかし、ゲームはまだ終わっていません」


 吸血鬼はゆっくりと私に近づいてきた。既に東の空は白み始めていたが、まだ日は昇っていない。


「負けたな、織田殿」


「そうとも言えん。見ろ、もうすぐ夜が明ける」


「確かに。だから急がねばなりません」


 吸血鬼は私の腕をつかみ、鋭い牙を露わにした。


「待て!約束は...」


「約束通り、捕まえたら私の勝ちです。さて、織田殿。あなたには選択肢があります」


「選択肢?」


「このまま死ぬか、それとも...私のような者になるか」


 私は一瞬考えた。死ぬか、吸血鬼になるか。


「どちらを選んでも、人間の織田信長は本能寺で死ぬことになる」


 吸血鬼は笑みを浮かべた。


「確かに...」


 私は遠くに見える炎上する本能寺を見つめた。あの中に人間の私は死んだことになる。だが、吸血鬼になれば...


「よかろう。私は生き続けたい」


「賢明な選択です」


 吸血鬼の牙が私の首筋に突き刺さる。痛みと共に、体から力が抜けていく感覚。だが同時に、新たな力が流れ込んでくるようだった。


「これで遊戯は終わり。さあ、尾張の信長、日が昇る前に隠れましょう」


 視界が暗くなる中、私の意識は徐々に変容していった。


 ---


 数日後、京の街では噂が広まっていた。


「織田信長、本能寺にて討ち死にせり」


 明智光秀の謀反とされるその事件の真相を知るものはいない。


 月明かりの下、京の裏路地を歩く一人の男。青白い肌に赤い瞳。口元には鋭い牙が覗いている。


「ふむ、これからの世も面白くなりそうだ」


 人ならぬ者となった私、織田信長は夜の闇に溶け込んでいった。歴史からは姿を消したが、新たな「夜の歴史」の中で生き続けることになったのだ。


「天下布武」


 私は月に向かって呟いた。時間はたっぷりある。千年でも、二千年でも...

プロンプト

「『本能寺 TO BE』~吸血鬼に襲われたら本能寺バーニング!!!~場所は戦国時代、夜中に吸血鬼と遭遇した私こと織田信長。吸血鬼は私に対して鬼ごっこを提案する。私は夜に吸血鬼から逃れるために、思考を巡らせる。吸血鬼の弱点は日光。朝まで逃げれば勝てる。しかし、逃げきれる保証はない。吸血鬼の弱点はいくつもあるが、結局あそこしかない。そう本能寺だ。このプロットを元にシリアスコメディ短編小説を書きましょう。」

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