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『吸血鬼に襲われたら、ドーピング!!!』~にんにく注射~

 

 東京の闇は深く、街灯の光すら飲み込んでいくような夜だった。


 俺、アサクラ誠一、プロの総合格闘家。リングの上では「デスクラッシャー」の二つ名で恐れられている。だが今夜、俺が恐れているのは目の前に立つ青白い顔の男だった。


「逃げてみたらどうだ?」


 男は唇の端を上げ、鋭い犬歯を見せた。血の色をした瞳が俺を値踏みするように見つめている。


「おまえなら、面白い獲物になるだろう」


 吸血鬼だ。そんなものが実在するなんて、数時間前の俺は笑っただろう。


 しかし今、寝静まった代々木公園の片隅で、俺は現実を突きつけられていた。


「鬼ごっこをしよう。朝日が昇るまで俺から逃げ切れたら、命は助けてやる」


 吸血鬼は腕時計を見た。


「今、午前2時だ。朝日が昇るまで4時間半ある。十分な時間だな」


 俺は無言で拳を固めた。格闘技のチャンピオンである俺が、逃げるなんてふざけた話だ。しかし、この相手は人間ではない。


「考える時間をやる。15分後に追いかけるぞ。その間に好きなところへ行け」


 吸血鬼は木の下のベンチに座り、本を取り出した。まるで公園でくつろぐ普通の男のように。


 俺は踵を返し、走り出した。


 ---


 頭の中で選択肢を整理する。


 吸血鬼の弱点。映画やマンガで見たことはある。


 太陽光、十字架、ニンニク、流水、木の杭...


 だが、どれも今の状況では使えない。太陽が昇るまで生き延びられる保証もない。


 走りながら、俺はポケットの中のものを確認した。


 スマホ、財布、そして...そうだ。


 トレーニング用の注射器だ。


 禁止薬物ではない。完全に合法な栄養補助剤だ。しかし、ある思いつきが俺の頭をよぎった。


 ---


「24時間営業の薬局...」


 俺は立ち止まり、スマホでマップを確認した。近くに一軒あった。


 薬局には15分後に到着した。


「すみません、ニンニクのサプリメントありますか?」


 店員は眠そうな目で俺を見た。


「棚の奥にあります」


 俺はニンニクエキスの濃縮カプセルを手に取った。これだ。


 レジで支払いを済ませると、すぐに店の裏に回った。注射器を取り出し、カプセルの中身を慎重に吸い上げる。


「こんなことが効くのか?」


 疑問は残るが、他に選択肢はない。


 俺は躊躇なく自分の腕に注射した。


「くっ...」


 ニンニクの強烈な臭いが体内から湧き上がる感覚。


 そして待つ。


 ---


「見つけたぞ」


 薬局の裏でうずくまる俺の前に、吸血鬼が立っていた。


「もう諦めたのか?つまらん」


 吸血鬼が近づいてくる。しかし、その足が止まった。


「何だこの臭いは...」


 吸血鬼の顔が歪んだ。


「お前、何をした?」


 俺はニヤリと笑った。


「ドーピングさ。吸血鬼キラーの」


「馬鹿な...」


 吸血鬼が一歩後ずさる。


「人間の体内にニンニクを注入するなど...卑怯だぞ」


 俺は立ち上がった。体中からニンニクの臭いが発散している。


「格闘技のリングでは反則かもしれないが、命がかかったゲームなら何でもありだろ?」


 吸血鬼は顔を覆った。


「近づくな!」


 俺は一歩前に出た。


「どうした?追いかけっこは終わりか?」


 吸血鬼は苦しそうに後退する。


「覚えておけ...次は...」


 言葉を残して、吸血鬼は夜の闇に消えていった。


 ---


 朝日が昇り始める頃、俺はジムに戻っていた。


「アサクラ、何だその臭いは!シャワーを浴びてこい!」


 コーチが鼻をつまみながら叫ぶ。


「すみません、昨夜ちょっとした...スタミナ強化のトレーニングをしてまして」


 俺は照れくさそうに頭を掻いた。


「次の試合の対戦相手は吸血鬼じゃないんだぞ!」


 コーチは冗談めかして言った。


 もし本当に知ったら、気絶するだろうな。


 俺は笑いながらシャワールームへ向かった。次の夜に備えて、ニンニクのサプリは買い置きしておこう。


 吸血鬼との戦いは、まだ始まったばかりだから。

プロンプト

「『吸血鬼に襲われたら、ドーピング!!!』~にんにく注射~。場所は東京、夜中に吸血鬼と遭遇した私こと総合格闘家アサクラ。吸血鬼は私に対して鬼ごっこを提案する。私は夜に吸血鬼から逃れるために、思考を巡らせる。吸血鬼の弱点は日光。朝まで逃げれば勝てる。しかし、逃げきれる保証はない。吸血鬼の弱点はいくつもあるが、結局あれかない。そうドーピングだ。このプロットを元にシリアスコメディ短編小説を書きましょう。」

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