『HIPHOPな吸血鬼に襲われたら、天麩羅でもてなせ!!!』~大葉でオーバードーズ?~
真夜中の東京、私の天ぷら屋「匠」の片付けも終わりに近づいていた。油を濾して明日に備えていると、店の外から異様な気配を感じた。
「Yo!人間さんよ。今夜はあんたが俺のディナーだ。AHA...」
振り向くと、そこには黒いパーカーを着た吸血鬼が立っていた。首からはゴールドのチェーンが光り、腰の位置で組まれた両手の爪は鋭く光っている。
「待ってください」
私は冷静を装いながら言った。
「まずは私の天ぷらを召し上がってはいかがですか?」
吸血鬼は片眉を上げ、不敵な笑みを浮かべた。
「面白い。じゃあ、ゲームをしようか。あんたの天ぷらで俺を満足させられたら命は助けてやる。でも、まずいもんだったら...」
彼は鋭い牙を見せながら笑った。
私は即座に包丁を握り、仕込みを始めた。まずは出汁から。かつお節と昆布で引いた出汁に、塩と醤油で繊細な味付けを施す。天つゆの香りが立ち込める中、私は衣を練り始めた。
「この衣は江戸時代から伝わる秘伝のブレンドでね」
薄力粉に卵黄、氷水を加え、菜箸でそっと混ぜていく。小麦粉の粒々が残る程度の、あえての不均質さが、後の食感を生む。
大葉は千切りにして衣に混ぜ込み、タラの芽は固めの部分を丁寧に取り除く。春菊は花を残して茎を切り、一口大に整える。
「なんだよ、草ばっかじゃねーか」
吸血鬼は不満そうに言ったが、私の手元から目を離さない。
180度の油が煙を上げ始めた頃、私は春菊を衣にくぐらせた。油の中で春菊は踊るように広がり、緑の色が鮮やかに浮かび上がる。程よく色づいたところで引き上げ、油を切る。
「まずはこちらを」と差し出すと、吸血鬼は恐る恐る口に運んだ。
パリッとした衣の音が店内に響く。
「これ、やばくね?」
彼の目が開いた。
続いてタラの芽。新芽特有の苦みと甘みのハーモニーが、サクサクとした衣と共に口の中で広がる。吸血鬼は無言で頷きながら、次々と口に運んでいく。
そして最後の大葉の天ぷら。刻んだ大葉を衣に練り込み、葉も乗せて二度揚げに。香り高い大葉の精油成分が、揚げたての衣と共に店内に充満していく。
「この...この香り...やば…キマっちまう」
吸血鬼の動きが鈍くなっていく。
「天つゆはお好みで。塩でも」
「い、いや...このままで...」
七輪で炙った岩塩、朱塩、抹茶塩を添えたが、吸血鬼は夢中で天ぷらを頬張り続けた。カラッと揚がった衣と、中の具材の水分が完璧なバランスを保っている。
「もう一品どうですか?」と言いながら、私は新たに海老を用意し始めた。
「お、おう...」
吸血鬼の返事は、すでに天ぷらの虜になった者のそれだった。
夜が明けるころには、吸血鬼は完全に私の天ぷらの魅力に落ちていた。カウンターに突っ伏したまま、幸せそうな寝息を立てている。
「来週また来ていい?今度は普通に客として」
目覚めた彼はそう言った。
私は静かにうなずいた。以来、我が店には毎週金曜の深夜、黒いパーカーを着たお客様が訪れる。ただし、ニンニクの天ぷらだけは「苦手なんで」と頑なに遠慮するのである。
プロンプト
「『吸血鬼に襲われたら、天麩羅でもてなせ!!!』~大葉でオーバードーズ!!!~。場所は東京、夜中にHIPHOPな吸血鬼と遭遇した天麩羅職人であり人間国宝の私。「Yo!今日は薬も切れたし、人間でトぶか。AHA...」吸血鬼は私に対して鬼ごっこを提案する。私は夜に吸血鬼から逃れるために、思考を巡らせる。吸血鬼の弱点は日光。朝まで逃げれば勝てる。しかし、逃げきれる保証はない。吸血鬼の弱点はいくつもあるが、結局あそこしかない。そう私の店だ。私はタラの芽など草系の天麩羅でもてなす。このプロットを元にシリアスコメディ短編小説を書きましょう。」