『サイコ!?』
私は暗い路地を走っていた。足音が背後から迫ってくる。
「待ちなさい...血を分けてください...」
しわがれた声が闇に響く。男は黒いマントをはためかせながら、執拗に私を追いかけてきた。
(吸血鬼なんて、本当にいるわけないでしょう)
私は冷静に状況を分析しながら、あえて人気のない工場地帯へと足を向けた。街灯も少なく、誰もいない。完璧な場所だ。
追手の足音が近づいてくる。私は古い倉庫の陰に身を潜めた。男は私の姿を探しながら、ゆっくりと近づいてきた。
「見つけた...」
男が私に掴みかかろうとした瞬間。
「深く、深く、眠りなさい」
私はゆっくりと呟いた。男の動きが止まる。
「先生...?ここは...?」
男の目が焦点を失い始めた。そう、私は催眠術師。いや、それ以上の存在だ。
「実験お疲れ様。とても良いデータが取れました」
私は白衣のポケットからメモを取り出し、几帳面に記録を付ける。被験者番号47番。催眠暗示による人格改変と行動制御の実験。今回は「夜間限定・吸血鬼化」という設定で、被験者の行動パターンを観察した。
遠くからサイレンの音が聞こえる。この数週間、私の実験に気付いた警察が捜査を進めているようだ。失踪事件として扱われているらしい。愚かな。これは失踪なんかじゃない。れっきとした科学実験よ。
「まあ、もうすぐ私の研究も完成です」
ポケットから小さな注射器を取り出す。特殊な薬物と催眠術の組み合わせ。完璧な記憶消去と、跡形もない処分が可能になる。
「さようなら、47番さん。あなたのデータは大切に使わせていただきます」
注射器を男の首筋に突き刺す。薬物は数分で効果を発揮し、男の呼吸は徐々に弱まっていく。私は懐中電灯で瞳孔を確認し、死亡を確認した。
古い倉庫の床下には、特殊な溶液を満たした処理槽がある。これまでの被験者たちと同じように、47番も跡形もなく消えていく。
朝焼けが始まる頃、私は自宅のリビングでコーヒーを啜っていた。テレビでは連続失踪事件の続報が流れている。私は愉しげに微笑む。
「次は、どんな実験にしようかしら」
警察の捜査が進んでいるという事実に、むしろスリルを感じていた。彼らが私にたどり着く前に、私の研究は完成するだろう。
デスクの引き出しには、次の被験者のプロフィールが既に用意されている。
そして、その夜。
私の診療所を訪れたのは、一人の青年だった。どこか儚げな雰囲気を持つ色白の青年。夜間診療ということもあり、この建物には私と彼以外誰もいない。
「記憶が...曖昧で」
か細い声で青年は語る。思考の断片が失われているという。私は思わず口元を緩めた。記憶喪失?これは面白い被験体になりそうだ。
「催眠療法で、記憶を取り戻してみましょう」
私は優しく微笑みかける。もちろん、これは実験の前菜に過ぎない。記憶を取り戻したところで、新たな実験体として生まれ変わってもらうのだ。
「深く、深く、眠りなさい...」
いつもの言葉を囁く。青年の瞳が徐々に虚ろになっていく。
「あなたの失われた記憶が、今よみがえります...」
「はい...思い出しました...」
青年の唇が微かに動く。
「私は...吸血鬼です」
その瞬間、青年の目が開かれた。血に濡れた深紅の瞳。私の体が凍りつく。催眠状態のはずなのに、なぜ...?
「実は気付いていたんです。先生が私の食料を狩っていることに」
青年...いや、吸血鬼は優雅に立ち上がった。
「!?」
逃げようとした私の体が、不可思議な力で宙に浮く。
「さあ、先生。今度は私の番です。人体実験、させていただきます」
最後に聞こえたのは、青年の低い笑い声だった。
***
三日後、警察は閉鎖された診療所で一つの遺体を発見した。全身から血液が抜き取られ、真っ白に凍り付いた私の死体。机の上には一枚のメモが残されていた。
『実験報告:人間の血液を完全に抜いた場合の死後硬直の進行について。
被験体の反応は極めて興味深いものでした。』
プロンプト
「『サイコロジカル』。最近、夜中に男が声をかけて追い回してくる案件がある。場所は東京、夜中に吸血鬼と遭遇した私。吸血鬼は私に対して鬼ごっこを提案する。私は夜に吸血鬼から逃れるために、思考を巡らせる。吸血鬼の弱点は日光。朝まで逃げれば勝てる。しかし、逃げきれる保証はない。私はあえて人気のない場所に逃げる。吸血鬼が私を追い詰めたとき、私はある言葉を呟く。その瞬間、吸血鬼は静かになる。「あれ、ここは…あれ?先生」。そう私は催眠術師。このプロットを元にシリアスコメディ短編小説を書きましょう。オチは私は催眠術師でありサイコパス、実験のため男に夜は吸血鬼になるという催眠術をかけた。「ちょっとは退屈が紛れました」。そう言って私は実験体を処分するバッドエンド。」
「続きを書いてください。次の被験者が私のデスクを訪れた色白な青年だった。夜間診療ということで私と彼以外いない。青年は記憶喪失のようだ。私は興味本位で催眠術をかけて記憶を引き出す。これが終わったら、被検体への実験を始めよう。「先生、思い出しました」。青年が言う。「私は吸血鬼」。どうやら本物のようだ。後日、私の遺体が警察に発見される。全身の血を抜かれた状態で。このオチを元に物語を締めくくってください。」