『オシャレニスタなヴァンパイアに襲われたら、工学部に逃げ込め!!!』
真夜中の渋谷。人通りの途絶えた裏通りで、俺は凍りついた。
目の前に立っているのは間違いなく吸血鬼だ。しかし、これまで想像していた吸血鬼とは少し…いや、かなり違う。
「あらあら、こんな夜更けに一人で何してるの?」
艶やかな声が闇を切り裂く。派手なピンクのブラウスに身を包んだ吸血鬼は、長い付け睫毛をパチパチさせながら俺を見つめている。
「ち、違うんです!帰ろうとしてただけで…」
「まあまあ、そう慌てないで。せっかくの出会いだから、ゲームでもしない?」
吸血鬼は艶めかしく微笑んだ。その口元から覗く鋭い牙が、月明かりに不気味に光る。
「ゲーム?」
「そう、鬼ごっこよ。あなたが逃げて、私が追いかける。シンプルでしょ?」
俺は急いで頭を巡らせた。吸血鬼の弱点…十字架、ニンニク、日光…。そうだ、朝まで逃げ切れば…。
「あら、そんなことを考えているの?」
吸血鬼は笑みを浮かべる。
「私ね、実はファッションセンスのない人の血は吸わないの。そういうポリシーなの」
「は?」
「だってほら、その着こなし…」
吸血鬼は俺の服装を上から下まで眺め、首を傾げた。
「チェックのシャツにカーゴパンツ?それにそのスニーカー。まるでコーディネートを考えていないじゃない」
なんだこいつ。俺は呆然としながらも、少しずつ後ずさる。
「逃げる前に、せめてその服装をどうにかしましょうよ。ちょっと待って、私のコレクションから素敵な服を選んであげるわ」
「いや、結構です!」
俺は全力で走り出した。背後から「ちょっと待ってよ!その走り方まで絶望的!スタイリッシュに逃げなさい!」という声が追いかけてくる。
朝日が昇るまであと五時間。これは命がけのファッションショーになりそうだ。
俺は心の中で誓った。もし生き残れたら、明日からはちゃんとコーディネートを考えよう。でも今は、とにかく全力で逃げるしかない!
そのとき、突如として閃いた。このファッショニスタ吸血鬼から逃れる方法が。
「そうだ、工学部だ!」
俺は息を切らしながら、大学の工学部棟に向かって走り出した。深夜にもかかわらず、締め切り間近の卒業論文に追われる学生たちの姿が見える。パーカーにジーンズ、めがねは曇り、髪の毛はぼさぼさ。まさに、ファッションの死角。
「あ、ちょっと!そっちは…!」
吸血鬼の声が焦りを帯びる。工学部棟の扉を開けると、そこには想像以上の光景が広がっていた。
「これが…工学部…!」
三日間風呂に入っていない院生、カップ麺の汁を服に垂らしたまま気づいていない研究生、睡眠不足で目が充血している学部生。ファッションなど遠い昔に諦めた者たちの聖域がそこにはあった。
「きゃー!やめて!近づかないで!そのチェックのネルシャツの着こなし、私には刺激が強すぎるわ!」
吸血鬼は工学部棟の入り口で立ち止まり、たじろいでいる。
「私、こんなファッション被害の現場、見たことないわ…。あなた、勝ったわよ。私、もう追いかけないから!」
吸血鬼は両手で顔を覆い、かかとを返して逃げていった。その背中から「でも、せめてみんなにスキンケアだけでも…!」という叫び声が消えていく。
俺は疲れ果てて床に座り込んだ。周りの工学部生たちは、何事もなかったかのように黙々と研究を続けている。この無法地帯とも言える空間こそが、最強の吸血鬼対策だったのだ。
翌日、俺は念のため新しい服を買いに行った。しかし、工学部で過ごした一夜の記憶は、ファッションよりも大切なものを教えてくれたような気がする。
…いや、やっぱり少しはおしゃれした方がいいかもしれない。
プロンプト
「『コーディネート・ヴァンパイア』~駄洒落好きなオネエヴァンパイア~。場所は東京、夜中に吸血鬼と遭遇した私。吸血鬼は俺に対して鬼ごっこを提案する。俺は夜に吸血鬼から逃れるために、思考を巡らせる。吸血鬼の弱点は日光。朝まで逃げれば勝てる。しかし、逃げきれる保証はない。吸血鬼の弱点はいくつもあるが、それ以上に気になるのは…この吸血鬼もしかして…オカマ。そこはかとなく、いや言動からモロにオネエだ。「あら、バレたかしら」。俺は全力で逃げる。このプロットを元にシリアスコメディ短編小説を書きましょう。」
「俺は全力で逃げる途中、あるアイデアが浮かぶ、それは激ださ男たちの巣窟、そう工学部に逃げるのだ。卒業論文で苦しもだえる工学部へ逃げる。このプロットを元に物語を締めくくってください。」