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『吸血鬼に襲われたら、そば打ち対決』

 

 深夜の東京、私は終電を逃してしまった。人気のない路地裏を歩いていると、背後から誰かの気配を感じた。振り向くと、そこには月明かりに照らされた謎めいた美青年が立っていた。


「夜分遅くに失礼。少々退屈でしてね」


 彼は優雅な口調で話しかけてきた。その白い肌と赤い瞳。間違いなく吸血鬼だ。


「ちょっとした遊びをしないか?鬼ごっこだ」


 私の返事を待たずに、彼は続けた。


「君が朝日が昇るまで逃げ切れれば勝ち。捕まえたら、君の新鮮な血液を頂くことにしよう」


 逃げ切れる自信はない。吸血鬼の超人的な身体能力では、どんなに走っても追いつかれるだろう。

 そうだ。吸血鬼の弱点と言えば、ニンニク、十字架、日光...でもこんな夜中にニンニクも十字架も手に入らない。


 ふと、私は思いついた。


「別の勝負を提案させてください」


「ほう?」


 吸血鬼は興味深そうに眉を上げた。


「蕎麦打ち勝負です」


 吸血鬼は一瞬驚いた表情を見せたが、すぐに優雅な笑みを浮かべた。


「面白い。私も長年の人生で退屈していたところだ。しかし、なぜ蕎麦打ちなのかな?」


「私の祖父は蕎麦職人でした。幼い頃から技を叩き込まれて...」


 実は嘘だ。ユーチューブで蕎麦打ち動画を見まくっているだけの素人である。しかし、ここは強気に出るしかない。


「負けた方が勝者の言うことを一つ聞く。これでどうでしょう?」


「いいだろう」


 吸血鬼は優雅に頷いた。


「近くに私の屋敷がある。そこには立派な台所もあるしな」


 深夜の吸血鬼屋敷。豪華な調理場に案内された私は、粉と格闘していた。

 吸血鬼は優雅に粉をこねている。数百年の人生で、きっと色んな料理も習得しているのだろう。


 しかし、ここで私の作戦が効いてくる。蕎麦打ちの最後の工程、麺棒で生地を伸ばすとき。吸血鬼は力の加減が分からないはずだ。超人的な怪力では、生地はすぐに千切れてしまう。


 案の定、吸血鬼の生地は次々と裂けていく。


「おや、これは予想以上に難しいものだね」


 彼は焦りを隠せない様子で何度も生地をこね直している。


 一方、私のユーチューブ蕎麦打ち研究の成果が発揮される時が来た。

 力を抜いて、優しく、でも確実に。麺棒を転がす音だけが静かな台所に響く。


「私の負けのようだ」


 夜明け前、吸血鬼は私の細く綺麗に打てた蕎麦を見て、潔く敗北を認めた。


「では、約束通り。私からのお願いです」


 私は吸血鬼に向かって言った。


「今後、人間の血は吸わないでください。代わりに、このお蕎麦をご賞味ください」


 吸血鬼は驚いた表情を見せたが、やがて柔らかな微笑みを浮かべた。


「君という人間は本当に面白い。わかった。約束しよう」


 それ以来、その吸血鬼は蕎麦の魅力に取り憑かれ、今では脱ドラ(脱ドラキュラ)して東京の某所で人気の蕎麦屋を経営しているという噂だ。

 店主の肌が白すぎること以外は、ごく普通の蕎麦屋である。


 ただし、営業時間は夜間のみ。

プロンプト

「『吸血鬼に襲われたら、そば打ち対決』。場所は東京、夜中に吸血鬼と遭遇した私。吸血鬼は私に対して鬼ごっこを提案する。私は夜に吸血鬼から逃れるために、思考を巡らせる。吸血鬼の弱点は日光。朝まで逃げれば勝てる。しかし、逃げきれる保証はない。吸血鬼の弱点はいくつもあるが、結局あれしかない。そうそば打ち対決だ。このプロットを元にシリアスコメディ短編小説を書きましょう。」

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