表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
360/601

『吸血鬼に襲われたら、サーカスに逃げ込め!!!』


 私は走った。


 息が上がる。肺が悲鳴を上げている。それでも、後ろから聞こえてくる優雅な足音から逃れるために、必死に足を動かし続けた。


「もう少し楽しませてくれないかな?」


 背後から聞こえてくる声は、まるで上質なワインのように滑らかで芳醇(ほうじゅん)だった。嘲笑(あざわら)うでもなく、怒りを含むでもなく、ただ純粋に「遊び」を楽しんでいるかのような口調。


「私はね、獲物が諦めてしまうのが一番つまらないんだ」


 新宿の雑踏(ざっとう)を抜け、歌舞伎町のネオンに包まれた通りを駆け抜ける。深夜とはいえ、まだ人通りはある。しかし誰も私たちに気付かない。いや、気付かないフリをしているのかもしれない。


 この吸血鬼、最初から私を殺すつもりはないのだろう。だからこそ、こんな「鬼ごっこ」を提案してきたのだ。でも、それは私にとってはチャンスでもある。


 朝日が昇るまであと4時間。


 考えろ、考えろ。吸血鬼の弱点は何だ?

 十字架?にんにく?流れ水?

 どれも今の状況では使えない。


 そのとき、目に飛び込んできたのは派手な看板だった。


『東京ナイトサーカス - 深夜公演絶賛開催中!』


 その瞬間、私の中で全てのピースが繋がった。

 そうだ、あれがある。サーカスには必ず「あれ」がある。


「おや?サーカスに逃げ込むつもりかな?」

 背後の声が楽しげに笑う。

「面白い。ついていくとしよう」


 私は劇場の中へと飛び込んだ。


 チケットもぎりの男性は、私たちの異様な様子にも全く動じることなく、ただ淡々とチケットをもぎってくれた。さすがサーカスの人間だ。


 ショーはちょうど佳境を迎えていた。私は観客席を突っ切り、そのまま舞台へと駆け上がった。


「おやおや、ショーの邪魔をするつもりかな?」


 吸血鬼が優雅に舞台へ降り立つ。


 その時だ。


「スポットライト、最大出力!!」


 私の叫びと同時に、何十もの強力なスポットライトが吸血鬼に向けられた。


 UV効果。現代のサーカスの照明には必ず紫外線カットフィルターが使われている。でも、それは今日、メンテナンス日だった。看板の横の小さな告知で見つけていたのだ。


「なんてこと...まさか...」


 吸血鬼の姿がゆっくりと朽ちていく。


 観客からは歓声が上がった。さすがサーカスだ。何が起きても、全てがショーの一部として受け入れられる。


「見事だ...」


 最後まで優雅な微笑みを浮かべたまま、吸血鬼は舞台の上で灰となって消えていった。


 私は深いため息をつき、そのまま舞台に倒れ込んだ。

 すると、サーカスの団員たちが私を優しく抱き起こしてくれた。


「お客様、素晴らしいパフォーマンスでした!」


 リングマスターが私に向かって深々と一礼する。


「次回の公演にもぜひご出演いただけませんか?」


 その夜から、私はサーカスの看板役者となった。

 演目は『吸血鬼ハンター』。

 毎晩、本物の吸血鬼たちを退治している。


 ...それだけは冗談です。

 でも、もし吸血鬼に追われることがあったら、

 サーカスを探してみてください。

 きっと、あなたを救ってくれるはずです。

プロンプト

「『吸血鬼に襲われたら、サーカスに逃げ込め!!!』。場所は東京、夜中に吸血鬼と遭遇した私。吸血鬼は私に対して鬼ごっこを提案する。私は夜に吸血鬼から逃れるために、思考を巡らせる。吸血鬼の弱点は日光。朝まで逃げれば勝てる。しかし、逃げきれる保証はない。吸血鬼の弱点はいくつもあるが、結局あそこしかない。そうサーカスだ。このプロットを元にシリアスコメディ短編小説を書きましょう。」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ