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『最もフィジカルでプリミティブでフェティッシュな遊び』~深夜の蛆テレビ謝罪劇場~

フィジカル=肉体的


プリミティブ=素朴な


フェティッシュ=過度な興奮や執着

 

「最もフィジカルで、最もプリミティブで、そして最もフェティッシュなやり方をさせていただきます」


 六本木の交差点で、サングラスをかけた男がそう言い放った。七月の深夜、しかも真夜中の二時。なのに、なぜサングラス? なんかのドラマ?ミーハーな吸血鬼かと思って笑いそうになったその瞬間、男は続けた。


「鬼ごっこだ!!!」


「はぁ?」


 私の困惑した声が、明け方前の空虚な街に響く。目の前の吸血鬼(だと思われる男)は、歯を見せて笑っている。確かに、尖った犬歯が見える。


「三十分の猶予をやろう。その後、追いかけるぞ。捕まえたら、君の運命やいかに…ってね」


 吸血鬼の弱点といえば、にんにく、十字架、そして最も確実なのは日光。しかし、今は深夜二時。日の出まであと四時間以上ある。都内を四時間も逃げ回れる自信はない。


 そこで閃いた。


 現代の吸血鬼にとって最も致命的な弱点。それは——メディアの力だ。


「わかった。その鬼ごっこ、受けて立とう」


 私はスマートフォンを取り出し、素早く検索する。よし、完璧だ。


「では、スタートです!」


 吸血鬼は優雅な仕草で腕時計を見た。


 私は全力で走り出した。目指すは(うじ)テレビ。深夜でも、24時間ニュースの報道フロアは活気づいているはずだ。そして今夜は、あの謝罪会見がある。16時間ぶっ続けの謝罪会見だ。


 蛆テレビの某プロデューサーが、視聴率操作疑惑で深夜に緊急会見を開く。世間の注目度は最高潮。完璧な舞台だ。


 エレベーターを飛び出し、報道フロアに駆け込む。警備は予想以上に緩かった。会見場に入ると、すでに数社の記者が集まっていた。


 その時、背後でドアが開く音がした。


 サングラスの男が現れた瞬間、私は立ち上がって叫んだ。


「蛆テレビさん!この男、吸血鬼です!証拠に、こちらをご覧ください!」


 スマートフォンのフラッシュを最大輝度にして、男に向けて照らす。


「ぐはっ!」


 予想通り、まぶしさに男は崩れ落ちた。会見場は騒然となる。カメラのフラッシュが無数に焚かれ、男は完全にダウン。


「まさか、本当に吸血鬼が…」

「これは特ダネになる!」

「どういうことだ!説明しろ!」


 会見場は混乱の渦に包まれた。謝罪会見のはずが、吸血鬼騒動に変わってしまった。


 後日、蛆テレビは「深夜の会見場に吸血鬼が出現」という前代未聞のニュースを報じた。視聴率操作疑惑は完全に霞んでしまい、むしろ「世紀の特ダネをものにした」として、プロデューサーは昇進したという。


 そして私は——。


「君、面白いね」


 翌週、六本木の交差点。今度は夕方、サングラスの男と再会した。


「実は、僕もテレビ局のプロデューサーなんだ。新番組のプレゼン、させてもらえないかな?」


「えっ」


「最もフィジカルで、最もプリミティブで、そして最もフェティッシュな番組を作らせてもらいます」


 そうして始まったのが、深夜の人気バラエティ番組「闘争中:吸血鬼編」——なのだが、それはまた別の物語である。

プロンプト

「『最もフィジカルでプリミティブでフェティッシュな遊び』。場所は東京、夜中にサングラスをしたミーハーっぽい吸血鬼と遭遇した私。「最もフィジカルで、最もプリミティブで、そして最もフェティッシュなやり方をさせていただきます」。私は困惑する。「…つまり?」。「鬼ごっこだ!!!」。吸血鬼は私に対して鬼ごっこを提案する。私は夜に吸血鬼から逃れるために、思考を巡らせる。吸血鬼の弱点は日光。朝まで逃げれば勝てる。しかし、逃げきれる保証はない。吸血鬼の弱点はいくつもあるが、結局あそこしかない。そうテレビ局の謝罪会見だ。蛆テレビに着く、謎の謝罪会見に参加して、はた迷惑な質問を経営陣にする私。このプロットを元にシリアスコメディ短編小説を書きましょう。」

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