『お祈りメールを貰ったら…夜の街に繰り出せ!!!』
「謹啓・・・誠に恐れ入りますが・・・」
スマートフォンの画面を見つめながら、俺は深いため息をつく。今月これで7通目のお祈りメールだ。最近の若い吸血鬼にとって、人間の生き血を手に入れるのは至難の業となっている。物価高騰で血液バンクの価格は天井知らず。かといって、路上で適当に襲うのはリスクが高すぎる。
「~より一層のご活躍をお祈り申し上げます」
この決まり文句を読んだ瞬間、俺の中の何かが切れた。
「くそっ、今夜は狩りに行くぞ!」
夜の新宿に繰り出した俺は、いつもの装いに身を包む。真っ黒なスーツに、血のように赤いネクタイ。就活用のスーツがそのまま狩りの装束になるとは、誰が想像しただろうか。
歌舞伎町の雑踏の中、ターゲットを物色する。若すぎず、老いすぎず、程よい年齢の獲物。そこで目に留まったのは、やや疲れた表情を浮かべた中年のサラリーマンだった。
後をつけ、人気の少ない路地に誘い込む。完璧な計画・・・のはずだった。
「君、その歩き方は就活生だね?」
不意に振り向いた男が、にこやかに話しかけてきた。動揺する俺。
「あ、はい・・・」
「最近の若い子は大変だよね。でも、その目の輝き、何かを求める貪欲さ、気に入ったよ」
男は懐から名刺を取り出した。某大手企業の人事部長だという。
「実は明日、うちで役員面接があるんだ。君、来てみないか?」
困惑する俺。獲物のはずが、まさかの就職面接のスカウト。しかし、この偶然を逃す手はない。
翌日。
「では、最後に。当社を志望した理由を教えてください」
役員面接の最後の質問。昨夜の人事部長が、にやりと笑いながら見つめている。
「御社の企業理念である『人の血となり、肉となる』という言葉に、深く共感致しました」
静まり返った会議室。そして、
「採用!」
人事部長の声が響き渡った。
今じゃ俺は、企業の人事部で働きながら、役員たちと飲み会という名の宴を楽しんでいる。お祈りメールのおかげで見つけた、最高の狩り場だ。
ちなみに、部長は今でも俺のお気に入りの獲物である。本人は気づいていないようだが。
プロンプト
「『お祈りメールを貰ったら…夜の街に繰り出せ!!!』。「~より一層のご活躍をお祈り申し上げます」。場所は東京。私は吸血鬼。夜の帝王。今日も人間の生き血を吸いたいが、最近の物価高騰により、生き血も手に入らない。「しょうがなく、就活を始めたが、またお祈りメールか」。私は気晴らしに夜の街に繰り出して、獲物を見つけようとする。オチ、偶然襲おうとした獲物と意気投合したら、次の日の役員面接で会って採用された。このプロットを元にシリアスコメディ短編小説を書きましょう。」