『吸血鬼に襲われたら、鏡の迷宮へ逃げ込め!!!』~鏡に映る系吸血鬼の対処法~
「捕まえてごらん?」
夜の渋谷で、吸血鬼は不敵な笑みを浮かべながら私に囁いた。長身で整った顔立ち、まるでファッション誌から抜け出してきたような美しさ。だが、その赤い瞳には人間味のかけらもない。
「逃げたって無駄よ。日の出まであと五時間。その前に必ず捕まえるわ」
私は咄嗟に109の方向へ走り出した。吸血鬼は悠々と歩きながら追いかけてくる。まるで猫が死にかけのネズミで遊ぶように、私との距離を楽しんでいるようだ。
ふと、道端のショーウィンドウに目が留まる。そこに映る私の姿と...吸血鬼の姿?
「あれ?映ってる...」
「ええ、私、鏡に映る系の吸血鬼なので♪」
彼女は茶目っ気たっぷりに手を振った。そうか、この吸血鬼は鏡に映るのか。普通の吸血鬼なら鏡に映らないはずなのに。でも、それなら...。
私の頭に一つのアイデアが閃いた。
「捕まえられるものなら捕まえてみて!」
私は宣戦布告するように叫び、渋谷ストリームの地下へと駆け込んだ。目指すは地下の巨大アート施設、「鏡の迷宮」だ。
会場に飛び込むと、そこは無数の鏡に囲まれた空間。天井から床まで、壁という壁が全て鏡になっている。私の姿は無限に増殖し、どれが本物かわからなくなる。
吸血鬼も追いかけてきた。彼女の姿も同じように無数に映り込む。
「まあ、面白いわね」
彼女は笑った。だが、その笑顔には焦りが見えた。鏡に映る吸血鬼にとって、この空間は最大の弱点になる。自分の姿が見えすぎて、かえって獲物を見失ってしまうのだ。
「どこにいるの?こっち?それともあっち?」
彼女は次々と鏡に映る私の姿を追いかけるが、全て虚像だ。本物の私はゆっくりと出口へ向かう。
「くっ...こんなの卑怯よ!」
「卑怯なのはどっち?遊び半分で人間を追い詰めるあなたじゃない?」
私は出口に到着。振り返ると、吸血鬼は迷宮の中で右往左往していた。自分の無数の姿に囲まれ、どちらが出口か分からなくなっているようだ。
「また遊びましょう。今度は場所は私が選ばせてもらうけど」
そう言い残して、私は鏡の迷宮を後にした。外では既に空が白み始めていた。
後日、渋谷のアート施設で「鏡に閉じ込められた吸血鬼」という都市伝説が流行ったという。真相を知るのは、この私だけ。ときどき鏡の迷宮を訪れると、どこかで誰かが悔しそうに唸っている気がする。でも、それはきっと私の気のせい。
...たぶん。
プロンプト
「『吸血鬼に襲われたら、鏡の迷宮へ逃げ込め!!!』~鏡に映る系吸血鬼の対処法~。場所は東京、夜中に吸血鬼と遭遇した私。吸血鬼は私に対して鬼ごっこを提案する。私は夜に吸血鬼から逃れるために、思考を巡らせる。吸血鬼の弱点は日光。朝まで逃げれば勝てる。しかし、逃げきれる保証はない。「あれ?」。私はあることに気が付く。「鏡に映ってる…」。「私、鏡に映る系の吸血鬼のなので(笑)」。吸血鬼の弱点はいくつもあるが、わかった。あそこしかない。そう鏡の迷宮だ。このプロットを元にシリアスコメディ短編小説を書きましょう。」