『原付乗りの吸血鬼に襲われたら、コンビニに逃げ込め!!!』
「お嬢さん、私と鬼ごっこでもしませんか?」
その声に振り向いた瞬間、私の血が凍った。原付バイクに乗った男が、異様に白い歯を見せて笑っている。長身で、まるでヨーロッパの貴族のような装いだ。そして何より目を引いたのは、その赤く光る瞳。
私、井ノ川洋子、28歳。大型バイクを愛する平凡なOLだ。今夜も愛車のハーレーダビッドソンで、東京の街を走り回っていた。深夜のツーリングは私の密かな楽しみだった。が、まさかこんな展開になるとは。
「すみません、鬼ごっこする年齢は過ぎました」
冷静を装って答えたが、男は更に不気味な笑みを浮かべた。
「おや、現代の若い女性は冗談が通じないのですかな? まあいい。私は単に、美味しそうな血を見つけただけです」
「え?」
信号が青に変わった。私はとっさにアクセルを全開にした。1200ccの咆哮が夜の街に響き渡る。
「ほほう、逃げますか? 面白い」
バックミラーに映る原付が、あり得ない速度で迫ってくる。エンジン音すら聞こえない。これはマジでやばい!
「原チャリにターボでもついてんの!?」
叫び声も空しく、距離は縮まる一方だ。左右に急展開しても、原付は器用に追随してくる。どうやら本物の吸血鬼らしい。でも、なんで高級そうな吸血鬼が原付なんだ!?
「ふふふ...今時の吸血鬼は環境に配慮しているのですよ。CO2削減は我々の責務かと」
まるで私の心を読むように、後ろから声が届く。狭い路地に逃げ込んでも無駄だった。この原付、どう見ても普通じゃない。
そのとき、救いの光が目に飛び込んできた。24時間営業のコンビニだ!
吸血鬼は招かれなければ入れない...そうよ、そうだったわ!
急ブレーキをかけ、バイクを飛び降りる。コンビニに駆け込んだ瞬間、後ろから悔しそうな声が聞こえた。
「くっ...まさかコンビニとは...」
店内から振り返ると、吸血鬼が原付に跨ったまま、悔しそうに店の前をうろうろしている。店員さんは、この異様な光景に目を丸くしていた。
「あの...お客様?」
「すみません! ちょっとだけここに居させてください!」
「は、はい...」
吸血鬼は諦めたのか、ため息をつきながら言った。
「仕方ない。今夜は引き上げましょう。ですが覚えていてください。我々吸血鬼は、エコな生活を心がけているのです」
原付のエンジンを掛けることもなく、吸血鬼は静かに夜の闇に消えていった。後には、なぜか環境保護のチラシが一枚、風に舞っていた。
その夜以来、深夜のツーリングでは必ずコンビニの場所をチェックするようになった。そして、原付に乗った妙に環境意識の高い謎の男性には近づかないよう、細心の注意を払っている。
これが私の、ちょっと変わった夜の冒険の顛末である。
プロンプト
「『原付乗りの吸血鬼に襲われたら、コンビニに逃げ込め!!!』。場所は東京。私は井ノ川洋子。大型バイクを乗り回すのが趣味のOL。真夜中に愛車を走らせていた。信号で立ち止まる。「お嬢さん、私と鬼ごっこでも」。横を向くと、原付。よく見ると...吸血鬼!!!。このプロットを元にシリアスコメディ短編小説を書きましょう。」