『上司が吸血鬼過ぎる件』
「井ノ川さん、今日も残業お願いできるかな?」
営業部長の吸血...いや、日下部部長が私の机に近づいてきた。午後5時。外はまだ明るい。当然だ。もう少しで梅雨が明ける7月なのだから。
「はい、大丈夫です」
私は即答した。別に断る理由もない。入社3ヶ月目の新入社員が残業を断れるわけがない。
ただ、一つ気になることがある。
「あ、そうだ。トマトジュースも買っておいてもらえるかな?」
ほら来た。
「赤くて栄養価も高くて、深夜残業には最高なんだよね!」
日下部部長は少し声を上げすぎた。周りの先輩社員たちが一斉に咳払いをする。
「課長、声が大きいっす...」
佐藤先輩が小声で注意する。
「あ、すまん。つい興奮してしまって」
部長は照れ笑いを浮かべながら、さっと口元を隠した。
...ん?今、牙が見えなかった?
私は目を疑った。だが、それを口に出すことはできない。そう、これが暗黙のルールなのだ。
「井ノ川さん、私も大好きなんですよ。トマトジュース」
隣の机の山田さんが話に加わってきた。
「ええ、私も!栄養価が高いですからね!」
私も慌てて相槌を打つ。
「そうそう!血液...じゃなかった、栄養補給には最高だよね!」
部長が嬉しそうに言う。また、周りから咳払いの嵐が起こる。
夜が更けていく。オフィスには私と部長の姿だけが残されていた。窓の外では満月が輝いている。
「井ノ川さん、トマトジュース飲む?」
「あ、いえ。私は結構です」
「そう?もったいないなぁ」
部長は紙パックに穴を開け、ストローを刺した。ゴクゴクと音を立てて飲む。
...ストローじゃなくて牙で開けろよ。
そう思ったが、私は黙って資料に目を落とした。
翌夜。
「おはよう!」
元気に出社してきた部長。
...こんばんわでは?
「今日も一日頑張りましょう!」
...もう翌日ですが?
「あ、そうだ。井ノ川さん、今日のランチ、にんにく料理の店に行かない?」
...自爆?
後ろで聞いていた先輩たちが一斉に咳き込む音が聞こえた。
私はため息をつきながら、PCの電源を入れた。今日も平和な夜が始まる。我が社の部長の吸血鬼な日々は続いていく。
プロンプト
「『上司が吸血鬼過ぎる件』。場所は東京。私は井ノ川洋子。新入社員だ。会社にも慣れてきたが、ふと私はあることが気になってしまう。「深夜残業のときのトマトジュースは最高だ」。そうそれは上司が吸血鬼ではないかということだ。ていうか、モロ吸血鬼だろ。必死に自分が吸血鬼でないことをアピールするがもろ分かり。しかし、みんな大人なので見て見ぬふりをする。指摘しそうになるが、周りは咳払いをする。このプロットを元にナンセンスギャグコメディ短編小説を書きましょう。」




