『猿蟹合戦 feat.ドラキュラ』
「おとん、おかん...」
小さな蟹は、散り散りになった親蟹の殻の前で泣いていた。柿の木の下で、残酷な結末を迎えた争いの跡が生々しく残っていた。
「あの猿め...絶対に許さんけぇ!」
蟹の声は震えていたが、その眼差しには強い決意が宿っていた。しかし、一匹の小さな蟹に何ができるというのか。
そんなとき、蜂が飛んできた。
「わしが手伝うてやろう。あの猿、うちの巣も散々荒らしよったけぇの」
続いて、臼が転がってきた。
「ワシも手伝わにゃぁいけん。あいつ、ワシの上でホイホイ踊りよって、米つきもろくにできんかったんじゃ」
栗も転がってきて言った。
「ほいじゃけぇ、うちも参加するわ。いつも生意気に投げられとるんじゃ、もう堪忍じゃ!」
復讐の準備が整いつつあった夜更け。突如、異様な霧が辺りを包み込む。
「失礼します」
優雅な声が響き渡った。長身の貴族的な紳士が姿を現す。真っ白な肌に、漆黒のマント。
「まぁ、なんとも珍妙な集まりですね。私はドラキュラ。たまたま日本観光中でして」
蟹が状況を説明すると、ドラキュラは優雅に微笑んだ。
「なるほど。確かにその猿君、昨夜私の宿に無断侵入してきましてね。果物泥棒とは。これは...私も一興を共にさせていただきましょうか」
蜂が困惑気味に言う。
「えっと...鬼さん?あんた、広島弁じゃないんね」
「ああ、私は基本的に標準語でね。さて、作戦会議と参りましょうか」
こうして、明らかな過剰戦力を得た復讐劇の幕が上がる。
猿の家では、泥棒してきた柿を食べながら、のんきに眠る猿。
「やれやれ、今日も良い仕事じゃったのぉ」
その時、窓から月明かりが差し込む。と思いきや...それは月ではなく、ドラキュラの真っ白な顔だった。
「おや、こんばんは」
「うひゃぁぁっ!な、なんじゃぁお前は!」
「私ですか?ただの...通りすがりの吸血鬼です」
蜂が勢いよく飛び込んでくる。
「とうっ!これでもくらわぁや!」
臼が転がり込む。
「どりゃぁっ!」
栗がバラバラと降ってくる。
「これが私たちの怒りじゃぁ!」
最後に蟹が現れる。
「おとんとおかんの仇!とっとと謝れや!」
「ひぃっ!謝ります謝りまぁす!もう二度と悪さはしませんけぇ!」
猿は散々な目に遭った末、改心したのであった。
ドラキュラは満足げに空を仰ぐ。
「やれやれ。私の出番はほとんどなかったようですね。ま、たまにはこういう温泉旅行も...おっと、朝日が」
慌てて立ち去るドラキュラ。残された動物たちは首を傾げた。
「あのひと、ええ人じゃったのぉ」
「そうじゃのぉ。でも、なんで広島弁使わんかったんじゃろ」
「まぁ、ようは勝てばええんじゃけぇ!」
めでたし、めでたし。
...翌日から、その地域では妙に上品な標準語を話す蝙蝠が目撃されるようになったとか。
プロンプト
「『猿蟹合戦 feat.ドラキュラ』。舞台は日本昔話。猿に親を殺されて途方に暮れる蟹。次々と仲間が復讐に集まる。そのとき、ドラキュラが登場する。「どうやら、私の力が必要のようだ」。明らかな過剰戦力。このプロットを元にシリアスコメディ小説を書きましょう。登場人物はなぜかドラキュラ以外全員広島弁です。」