『不運と踊っちまったぜ』~ヤンキー漫画のような夜~
真夜中の首都高速。漆黒のCB400 SuperFourが夜風を切り裂いていく。
「ちっ、また暇な夜か」
俺こと山田竜也、通称「雷竜」は今夜も特に目的もなく走っていた。かつての不良仲間たちは次々と更生していき、今じゃ俺一人だけが昔の生活を引きずっている。
そんな退屈な夜に、運命は思わぬ形で訪れた。
箱根新道へ差し掛かった時、前方に黒い影が現れる。バイクに乗った何者かだ。スピードを緩めると、月明かりに照らされた異様な姿が見えてきた。
真っ白な肌。血のように赤い瞳。
「吸血鬼...?」
思わず呟いた言葉に、相手は優雅な笑みを浮かべた。
「正解だ。退屈そうだな、人間よ。私と遊ばないか?」
「何が望みだ?」
「簡単な鬼ごっこさ。日の出まで私から逃げ切れれば君の勝ち。捕まれば、その血を頂く」
俺は思考を巡らせた。吸血鬼の弱点――日光、十字架、ニンニク...。だが今の状況で使えるのは、ここしかない。
箱根の峠道。
「へっ、面白れぇじゃねぇか」
俺はニヤリと笑う。
「音速の向こう側へ連れてってやるぜ」
「ほう?私の愛馬と勝負するつもりか」
吸血鬼が跨るのは、漆黒のDucati。イカしたスーパーバイクだ。
「どっちが速いか、峠で決着つけようぜ」
月下の箱根で、人外の存在との死闘が始まろうとしていた。CB400の排気音が夜空に響き、俺は全開でスロットルを捻った。
ヘアピンカーブを曲がる度、吸血鬼のバイクが迫ってくる。だが、このコースは知り尽くしている。何百回と走り込んだ俺の庭だ。
「なかなかやるな、人間!」
背後から声が聞こえる。振り返ると、吸血鬬が歯を剥き出しながら迫ってきていた。
「へっ、まだまだ!」
リーンを深くし、次々とコーナーを制していく。タイヤは悲鳴を上げ、エンジンは限界まで回る。
「この先の右コーナー...」
吸血鬼は気づいていない。このコーナーには、朝日が最初に差し込む。
俺は渾身の力でマシンを操り、コーナーに突っ込んだ。その瞬間、東の空が白み始める。
「な...何!?」
吸血鬼の悲鳴が聞こえた。朝日の最初の光が、峠道に差し込む。
「へへ、作戦成功」
俺の背後で、吸血鬼は既に消えていた。残るのは、静かに佇むDucatiだけ。
「マジかよ...夢か?」
そう思った矢先、Ducatiのタンクに一枚の紙が挟まっていた。
『いい勝負だった。また地獄で会おう、兄弟』
俺は紙を握りしめ、朝日に向かって走り出した。こんな夜もあるさ。不運と踊るのも、たまには悪くない。
そう思った時だった。
「あれ...?」
喉が妙に渇く。それに、朝日がやけに眩しい。いや、眩しすぎる。
「く...っ!」
皮膚が焼けるような痛みが走った。慌ててガードレールの影に身を隠す。
左手の感触が妙だった。見れば、肌が真っ白に変わっている。それに、静脈が浮き出ているのが見える。まるで...。
「まさか...」
バックミラーを覗き込むと、そこには血のように赤い瞳が映っていた。
あの紙切れを広げる。裏面に、細かな文字が浮かび上がっていた。
『レースに負けた者は、永遠に夜を彷徨う定めとなる。これが私からの贈り物だ』
「ふざけんな...勝ったはずじゃ...」
そう、勝負には勝った。だが、罠だったのだ。レースは口実に過ぎなかった。奴の本当の目的は、後継者を作ることだった。
「くっ...クソォ!」
叫び声が、朝もやの中に溶けていく。
これからは、俺が夜の新たな住人となる。かつての仲間たちが更生していったように、普通の生活には戻れない。永遠に、夜の峠を彷徨う運命。
「へっ...」
苦笑いが漏れる。
「まあ、これはこれで悪くねえか」
俺は愛車のCB400に跨がった。夜の訪れを待つだけだ。
そうさ、不運と踊るのは俺の運命なのかもしれない。でも今度は、俺から相手を選ぶ番だ。
夜明けの峠で、新たな伝説が始まろうとしていた。
プロンプト
「『不運と踊っちまったぜ』~ヤンキー漫画のような夜~。場所は東京、真夜中のツーリング中に吸血鬼と遭遇した札付きの悪である俺。吸血鬼は俺に対して鬼ごっこを提案する。俺は夜に吸血鬼から逃れるために、思考を巡らせる。吸血鬼の弱点は日光。朝まで逃げれば勝てる。しかし、逃げきれる保証はない。吸血鬼の弱点はいくつもあるが、結局あそこしかない。そう峠だ。「音速の向こう側へ連れて行ってやるぜ」。「なるほど、お前は走りを追求するタイプのヤンキーか、私の愛馬とどちらが速いか決めようか」。このプロットを元にシリアス青春ヤンキーコメディ短編小説を書きましょう。」
「しかし、気が付くと自分が吸血鬼になっていることに気が付く、これは呪いだったのだ。このプロットを元に物語を締めくくってください。」