『吸血鬼に襲われたら、インドカリー屋へ』
深夜の新宿。人通りの少ない路地裏で、私は背後から響く足音に気付いた。振り返ると、そこには月明かりに照らされた青白い顔の男が立っていた。
「おや、こんな夜更けに一人とは、運が悪いですねぇ」
男は不気味な笑みを浮かべながら、長い犬歯を見せた。間違いない。これは吸血鬼だ。
「あなたと、ちょっとした遊びをしませんか?」
吸血鬼は艶めかしく提案してきた。
「私があなたを追いかけます。朝日が昇るまでに捕まえられなければ、あなたの勝ちです。捕まえたら...まあ、想像にお任せしましょう」
私は必死で頭を巡らせた。日の出まであと4時間。逃げ切れる自信はない。吸血鬼の弱点...にんにく、十字架、流水...。
そのとき、ふと目に入ったのは、22時間営業のインドカリー店の看板だった。
「分かりました。その勝負、受けて立ちます」
私は全力で走り出した。吸血鬼の軽やかな足音が背後で響く。角を曲がり、まっすぐに、そしてもう一度角を曲がって——。
「いらっしゃいませー!」
店内に飛び込むと、スパイスの香りが鼻をつく。カウンターの向こうでは、ターバンを巻いた店主が大きな鍋をかき混ぜている。
「へへへ...ここまでですか」
追いかけてきた吸血鬼が店内に入ってきた瞬間、その表情が凍りついた。
「バターチキンカレー、ガーリックナン、それから」
私は声を張り上げた。
「ガーリックライスも!」
「ノーーーッ!」
吸血鬼は悲鳴を上げ、たじろいだ。
「こ、この臭いは...」
店主が鍋から取り出した真っ赤なカレーからは、強烈なにんにくの香りが立ち昇る。吸血鬼は顔を歪め、後ずさりながら店を飛び出していった。
私は安堵の溜め息をつき、カウンターに座った。
「助かりました」
「カレーいかがですか?」
店主が満面の笑みで尋ねてきた。
「吸血鬼対策スペシャル、準備できてますよ」
私が店を後にしたのは、たっぷりとスパイスの効いたカレーを平らげた後だった。
店の中では、シャッターを下ろした後の店主とウェイターが声を殺して笑っていた。
「今日のも上手くいったな」
店主が吸血鬼に扮した男に言った。
「ボスの作戦は完璧です」
吸血鬼に扮した男が答える。
「でも、いつか本物の吸血鬼が来たらどうするんです?」
「そんなの決まってるだろ?」
店主は肩をすくめた。
「本物だろうが偽物だろうが、うちのガーリックカレーには敵いっこないさ」
3人の笑い声は、夜の静けさの中に溶けていった。
プロンプト
「『吸血鬼に襲われたら、インドカリー屋へ』。場所は東京、夜中に吸血鬼と遭遇した私。吸血鬼は私に対して鬼ごっこを提案する。私は夜に吸血鬼から逃れるために、思考を巡らせる。吸血鬼の弱点は日光。朝まで逃げれば勝てる。しかし、逃げきれる保証はない。吸血鬼の弱点はいくつもあるが、結局あそこしかない。そうインドカリー屋だ。オチ、私が出て行った後の閉店後、店員と店主(ネパール人)は高笑いする。吸血鬼だと思ったらネパール人でどうやら集客するために吸血鬼に扮していた。このプロットを元にシリアスコメディ短編小説を書きましょう。」