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『吸血鬼に襲われたら、ウィンチェスターハウスに逃げ込め』

 

「逃げ切れたら命を助けてやろう」


 吸血鬼は優雅な微笑みを浮かべながら、そう言った。月明かりに照らされた彼の牙が不気味に光る。私は無意識に首筋に手を当てていた。


「どう?面白い提案だと思わないかい?」


 私の返事を待たずに、彼は続けた。


「君には30分の猶予をあげよう。その後で僕が追いかける。日の出まで逃げ切れれば勝ちだ」


 カリフォルニアの夜。時計は午前2時を指している。日の出まであと4時間。


「どうせ逃げられないと思っているんでしょう?」


 私は震える声で言った。


「ああ、その通りさ」


 吸血鬼は愉快そうに笑った。


「だが、君には知恵があるようだ。それに…」


 彼は月明かりに照らされたサンノゼの街並みを見渡した。


「この街には面白い建物がある」


 その瞬間、私の頭に閃きが走った。ウィンチェスターハウス。あの奇妙な建物なら…。


「わかりました。鬼ごっこ、やりましょう」


 吸血鬼は満足げに頷いた。


「30分のカウントダウンを始めるよ。グッドラック」


 私は全力で走り出した。頭の中では既に計画が形作られていた。ウィンチェスターハウス。終わりのない建設が続けられた迷宮のような屋敷。階段は天井へと続き、ドアを開ければ壁。窓からは外を見下ろせるのに、その部屋は実は地下にある。


 サラ・ウィンチェスターは悪霊から逃れるためにこの家を建て続けた。そして今夜、私はその家で吸血鬼から逃れる。


 ウィンチェスターハウスに到着するまでに15分。残り15分で入館方法を考えなければならない。夜間の入館は禁止されているが、今はそんなことを気にしている場合ではない。


「申し訳ありません」私は防犯カメラに向かって呟いた。そして、裏手にまわり込んで窓を破って侵入した。アラームが鳴り響く。しかし、それは今の私にとってはむしろ好都合だった。


 警備員が駆けつけてくる前に、私は建物の深部へと消えていった。38の寝室、47のファイヤープレイス、17のチムニー、2つのバルコニー、6つのキッチン。そして、数え切れないほどの廊下と階段。


 この迷宮で、吸血鬼を欺けるだろうか。


 30分が経過し、彼が追跡を開始する頃、私は既に建物の構造を把握し始めていた。突然の方向転換、行き止まり、そして何より重要な「13」という数字を避けた設計。全てが私の味方になるはずだ。


 吸血鬼は優雅に、しかし確実に近づいてくる。私は彼の足音を追いながら、逆に彼の位置を把握していった。時には階上で物音を立て、実際は階下に潜む。天井に続く階段を上るふりをして、実は地下への隠し通路に滑り込む。


 3時間が経過した頃、吸血鬼の焦りが感じられるようになった。彼の足音が荒々しくなり、ドアを開ける音も乱暴になってきた。


「なかなかやるじゃないか」


 彼の声が廊下に響く。


「だが、まだ1時間ある。君を見つけ出す時間は十分にあるよ」


 私は黙って微笑んだ。もう彼に追いつかれる心配はない。なぜなら、この建物の真の目的を理解したのだから。


 サラ・ウィンチェスターは悪霊を迷わせるためにこの家を建てた。そして今、この家は吸血鬼を迷わせている。朝日が昇る頃、吸血鬼は怒りの叫び声を上げていた。私は最上階の窓から、彼が建物から逃げ出す様子を見届けた。


 警察と警備員の説明は大変だったが、それでも命が助かっただけでも良しとするべきだろう。


 ただ、気になることが一つ。あの吸血鬼、どこかで見たことがあるような…。まるで、このウィンチェスターハウスで見かけたような…。

プロンプト

「『吸血鬼に襲われたら、ウィンチェスターハウスに逃げ込め』。場所はカリフォルニア、夜中に吸血鬼と遭遇した私。吸血鬼は私に対して鬼ごっこを提案する。私は夜に吸血鬼から逃れるために、思考を巡らせる。吸血鬼の弱点は日光。朝まで逃げれば勝てる。しかし、逃げきれる保証はない。吸血鬼の弱点はいくつもあるが、結局あそこしかない。そうウィンチェスターハウスだ。このプロットを元にシリアスホラーコメディ短編小説を書きましょう。」


「オチを説明してください。」


このストーリーのオチには二つの解釈が可能です:


1. より単純な解釈:

- ツアーガイドとして働いている吸血鬼が、観光客である主人公を襲った

- つまり、日中は普通のガイドとして働き、夜に本性を現す吸血鬼だった


2. より不気味な解釈:

- サラ・ウィンチェスターが建てた家には本当にスーパーナチュラル(超自然的)な要素があり、その家に「属する」吸血鬼がいる

- 主人公が以前見学した時のガイドは最初から吸血鬼で、家の一部として存在している

- この解釈だと、ウィンチェスターハウスは本当に「悪霊」から人々を守る機能を持っているが、同時にその「悪霊」自体を内包している、というパラドックスが生まれます


どちらの解釈でも、「安全なはずの観光地が実は危険だった」というホラーでよくある展開をコメディタッチで表現しています。主人公が無事逃げ切れたのは、皮肉にも事前にガイドツアーで建物の構造を学んでいたからだ、という読み方もできます。

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