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『吸血鬼星人』

 残業終わりの深夜十一時半。山田太郎は疲れ切った足を引きずりながら、会社からの帰り道を歩いていた。スマホの画面には既に百件を超える未読のSNS通知。でも、それを確認する気力すら残っていない。


「はぁ…明日もまた朝から会議か…」


 そんな独り言を呟きながら歩いていると、突如として頭上から青白い光が差し込んできた。


「なんだ?UFO?まさか…」


 疲れているせいで幻覚を見ているのかもしれない。そう思いながらも、太郎は光の方向に足を向けた。小さな路地を曲がると、そこには…。


「ようこそ、地球人さん」


 スーツケースを片手に持った、銀色の肌をした人型生命体が立っていた。その姿は人間そっくりだが、首筋には妙な模様が浮かび上がっている。


「お、お前は誰だ?」


「私は吸血鬼星人です」


「は?」


 太郎は思わず吹き出しそうになった。吸血鬼と言えば、西洋のホラー小説に出てくるあの吸血鬼のことだろうか。でも、目の前にいるのは明らかに宇宙人だ。


「私たちの星では、他者の血液に含まれる情報を取り込むことで、相手の知識や記憶を共有できるんです」


「それって...ただの吸血鬼じゃないか!」


「いえいえ、全然違います!」


 吸血鬼星人は慌てて両手を振った。


「私たちは科学的なアプローチで...」


 その瞬間、太郎の脳裏に会社でのトラウマ的な記憶が蘇った。エンドレスで不毛な会議、理不尽な上司、締め切り地獄…。


「いや、俺の記憶なんて役に立たないよ。というか、吸われたら困る!」


 太郎は一目散に逃げ出した。後ろから吸血鬼星人の声が追いかけてくる。


「待ってください!実は私、観光で来ただけなんです!地球の企業文化について研究したくて…」


「だからこそ逃げるんだーーー!」


 翌日、会社のデスクで居眠りをしていた太郎は、同僚に肩を叩かれて目を覚ました。


「おい、山田。新しい部長が来たぞ」


 目の前には、どこか見覚えのある銀色の肌をした人物が立っていた。首筋の模様は派手なネクタイで上手く隠されている。


「よろしく、山田君。私が新任の宇佐見部長です。これからよろしく…補給、じゃなかった、指導させていただきますよ」


 太郎の悲鳴は、朝の東京の喧騒にかき消されていった。


 ◇


『番外編:宇佐見部長の業務改革』


 不思議なことに、誰も宇佐見部長の銀色の肌や、たまに首筋から漏れる青白い光について言及しなかった。


「いやぁ、宇佐見部長って何となくキラキラしてますよね」


「さすが一流企業からのヘッドハンティング組ですわ」


「肌の手入れとかどうされてるんですか?」


 同僚たちは当たり前のように受け入れていた。


 そんな宇佐見部長の改革は、驚くほど効果的だった。


「えっと、この案件について百ページの企画書を…」


「不要です。代わりに三行で説明してください」


「はい…えっと…」


「ダメですね。では私が少し補給、じゃなかった、補助させていただきましょうか」


 宇佐見部長は社員の首筋に優しく触れ、わずかに青白い光が漏れる。翌日から、その社員は無駄な資料を作らなくなった。


 会議も激変した。


「この度は検討事項について議論していきたく…」


「結論は?」


「いえ、その前に皆様のご意見を…」


「補給タイムです」


 会議室の照明が青白く変わり、参加者全員がうっとりとした表情になる。翌日から、会議は全て15分で終わるようになった。


 一ヶ月後、オフィスは驚くほど効率的になっていた。残業はゼロ。社員の笑顔が戻ってきた。


 ある日、太郎は宇佐見部長に呼び出された。


「実は私、そろそろ母星に帰還する必要がありまして」


「えっ!困ります!」


「心配無用です。私の研究は素晴らしい成果を上げました」


「研究?」


「はい。地球の企業文化における『非効率』という美味しい、じゃなかった、興味深い習慣について」


 宇佐見部長は一枚の報告書を見せた。


 そこには「地球の会社における無意味な残業、冗長な会議、過剰な資料作りの習慣は、驚くべき『エネルギー』を生み出している。しかし、それは完全な無駄であり、我々吸血鬼星人の血液情報共有システムで容易に解決できる。ただし、このエネルギーは我々にとって『美味』ではあるものの、地球人の幸福度を著しく下げるため、積極的な『収穫』は推奨されない」と記されていた。


「ではさようなら。たまに観光に来ますよ」


 宇佐見部長は青白い光に包まれ、消えていった。


 その後、会社は元の非効率な状態に戻るどころか、むしろ更に効率的になった。なぜなら、社員全員の血液に「効率化プログラム」が組み込まれていたからだ。


 太郎は今日も定時で帰宅する。ただし、首筋の青白い模様は消える気配がない。

プロンプト

「『吸血鬼星人』。場所は東京。社畜の俺は深夜、トボトボと帰っていた。すると、なにやら怪しい光が見えた。とりあえず、見に行くと不気味なサーチライトが俺を照らす。「サーチライトに集まった勘違いさん」。「お前は…誰?」。そいつは異星人のように見える。「私は吸血鬼星人」。俺は一目散に逃げる。このプロットを元にSFコメディ短編小説を書きましょう。」

「次の日から上司になった吸血鬼星人。みんな何も疑問を抱かずに自然に吸血鬼星人に従う。吸血鬼星人はみるみるうちに業務改善をしていく。このプロットを元に物語をシュールに締めくくってください。」

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