『吸血鬼に襲われても、東大を目指せ』
深夜の秋葉原で、参考書を抱えて予備校帰りの俺の前に現れたのは、西洋の貴族のような装いをした男だった。
「君、東大志望かな?」
突然の声かけに振り向くと、街灯に照らされた彼の顔には影一つなかった。
「ああ、そうだけど」
「では、ゲームをしよう。君が朝日が昇るまで私から逃げ切れたら、合格を保証しよう」
なんて馬鹿げた話だ。目の前で鋭い牙を見せながら、男は薄笑いを浮かべていた。吸血鬼か。まさに受験生の悪夢そのものだ。
「断る」
「おや?」
「時間の無駄だ。センター試験まであと2ヶ月。こんな下らない鬼ごっこに付き合ってる暇なんてない」
吸血鬼は驚いたように目を見開いた。
「ほう。命が惜しくないのかな?」
「それに、逃げ場所なら決まってる」
俺は指さした。数百メートル先に見える東京大学の赤門を。
「あそこだ。『誰でも入れる』国立大学の敷地内。公共の場所だ。追いかけてくるなら、警備員や他の受験生の目がある中でどうぞ」
吸血鬼は一瞬言葉を失い、それから大きな声で笑い出した。
「素晴らしい! 実に素晴らしい! 私も昔は東大を目指していたよ。だが、この姿になってしまってね...」
「浪人してるんですか?」
「いや...まあ、300年ほどかな」
「300年も!? それって...明治時代からですか?」
「ああ、そうだ。東校の頃からだ」
「じゃあ、今の入試システムについていけてないんじゃ...」
吸血鬼は急に真面目な表情になった。
「実は...最近の問題が解けなくてね。特に英語が...」
結局その夜、俺は吸血鬼と一緒に予備校のカフェテリアで勉強することになった。英語の関係代名詞を教えながら、ふと思った。
不死の吸血鬼でも東大に入れないことがあるんだな。やっぱり、努力あるのみか。
翌朝、机の上には一枚のメモが残されていた。
『共に戦おう、受験生よ。—不死の浪人より』
...まったく、こんな変な応援は要らないんだけどな。
俺は参考書を開き、また一日の勉強を始めた。
プロンプト
「『吸血鬼に襲われても、東大を目指せ』。場所は東京、夜中に吸血鬼と遭遇した浪人生の私。吸血鬼は私に対して鬼ごっこを提案する。私は夜に吸血鬼から逃れるために、思考を巡らせる。吸血鬼の弱点は日光。朝まで逃げれば勝てる。しかし、逃げきれる保証はない。吸血鬼の弱点はいくつもあるが、結局あそこしかない。そう受験会場だ。こんな馬鹿馬鹿しい奴に付き合ってられない。このプロットを元にシニカルコメディ短編小説を書きましょう。」