『エル・トラフエルプチ』
真夜中の東京。地下鉄の最終電車にも乗り遅れ、人気のない路地を歩いていた私の前に、突然姿を現したのは西洋の貴族のような装いの男性だった。
「夜分遅くに失礼。私は吸血鬼のカウント・ブラッディと申します」
その男は優雅に一礼すると、にやりと笑って牙を見せた。本物の吸血鬼だ。私は咄嗟に護身用の十字架を取り出したが、彼はただ軽く肩をすくめただけだった。
「そんな安っぽい十字架が効くと思っているのですか?ではゲームを始めましょうか。鬼ごっこです。朝日が昇るまでに捕まえられなければ、あなたの勝ち。捕まえたら...まあ、お分かりですよね?」
私は必死で頭を巡らせた。吸血鬼の弱点...にんにく?銀の弾丸?聖水?今の私には手に入らない。日の光を待つには、まだ6時間もある。こんな状況で、どうやって...
そうだ。
「いいでしょう。ゲームを始める前に、私の正体も明かさせていただきます」
私はスパンコールのマスクを着け、スーツを脱ぎ捨て、派手なコスチュームを露わにした。
「私こそ、メキシコ・ルチャリブレの覇者、エル・トラフエルプチ!」
カウント・ブラッディの顔から笑みが消えた。
「ルチャ...リブレ?」
「そう、カウントさん。吸血鬼と人間の戦いなら、プロレスリングこそが最も公平な勝負!私のフライングクロスチョップを受けてみろ!」
私は路地の壁を蹴って空中に舞い上がった。驚いた表情を浮かべる吸血鬼に向かって、月明かりの中、華麗な技を繰り出す―。
「待って!待ってください!」
カウントは慌てて両手を上げた。
「実は私、首が弱くて...」
「言い訳は無用!これぞルチャリブレ最大の奥義!エル・トラフエルプチ・スペシャル!」
「ギブアップ!」
まだ夜が明けるまで5時間以上あったが、カウント・ブラッディは既に白旗を上げていた。彼は首筋を押さえながら、やや不満げにつぶやいた。
「まさか21世紀の東京で、ルチャリブレと出会うとは...」
私はマスクの下で密かに微笑んだ。確かに吸血鬼には太陽や聖水など、いくつもの弱点がある。でも、プロレス技を受けたくない気持ちは、人間も吸血鬼も同じなのだ。
プロンプト
「「エル・トラフエルプチ」。場所は東京、夜中に吸血鬼と遭遇した私。吸血鬼は私に対して鬼ごっこを提案する。私は夜に吸血鬼から逃れるために、思考を巡らせる。吸血鬼の弱点は日光。朝まで逃げれば勝てる。しかし、逃げきれる保証はない。吸血鬼の弱点はいくつもあるが、結局あそこしかない。そうプロレスリングだ。本場のルチャリブレをみせてやる。このプロットを元にシリアスコメディ短編小説を書きましょう。」