『吸血鬼に襲われたらマグロ漁船に乗り込め!!!』
「ふふふ…君との鬼ごっこ、楽しみだよ」
真夜中の大間の港で、私は信じられない状況に直面していた。目の前には西洋の貴族のような装いをした吸血鬼。その赤い瞳が月明かりに怪しく光る。
「逃げる時間を10分あげよう。それで十分だろう?」
吸血鬼は優雅に腕時計を見せながら言った。
私の頭の中では必死に生き残りの方法を探っていた。日の出まであと5時間。このままでは確実に追いつかれる。大間と言えば…そうだ!
「いいだろう、その申し出を受けよう」
10分の猶予が始まった瞬間、私は港に停泊している漁船に向かって全力で走り出した。吸血鬼の弱点と言えば、にんにく、十字架、日光…そして、もう一つ。
「おーい!マグロ漁に出る船はどれだ!?」
私は港で準備をしている漁師たちに叫んだ。
「あんた、こんな時間に何を…」
「頼む!命がかかってるんだ!」
漁師たちは怪訝な顔をしながらも、一番大きな漁船を指さした。
私は即座にその船に飛び乗った。ちょうど出港の準備が整っていたようだ。
「ちょっと、勝手に…!」
「すみません!でも私を乗せていってください。これには訳が…」
その時、港の端に吸血鬼が姿を現した。優雅な立ち姿のまま、ゆっくりとこちらに向かって歩いてくる。
「船長!今すぐ出港を!」
私は必死で叫んだ。船長は状況が飲み込めていない様子だったが、予定通り出港の指示を出した。
エンジンが唸りを上げ、船は徐々に動き出した。吸血鬼は港の端で立ち止まり、不敵な笑みを浮かべている。
しかし、その笑みはすぐに凍りついた。
「まさか…君、そういうことか」
そう。吸血鬼には決定的な弱点がもう一つある。それは「流れる水を渡れない」という制約だ。海を行く船に乗り込んでしまえば、追ってくることは不可能なのだ。
「残念だったね」
今度は私が不敵な笑みを浮かべる番だった。
吸血鬼は港で唇を噛みしめながら、私たちの船が沖へと消えていくのを見送るしかなかった。
「あんた、いったい何があったんだ?」
船長が不思議そうに尋ねてきた。
「長い話なんです。でも、もしよければ私にも漁を手伝わせてください。マグロ一匹くらい釣り上げられるはずです」
「ははは、そうかい。だが、覚悟はできているのか?」
船長が意味深な笑みを浮かべる。
「覚悟、ですか?」
「ああ。この漁、戻るまでに120日はかかるんだ」
私の顔から血の気が引いた。確かに吸血鬼から逃れることはできた。だが、まさか4ヶ月も沖で過ごすことになるとは…。
結局、私は大間の海で、マグロ漁師としての新しい人生を始めることになった。吸血鬼から逃れる方法は見つけたものの、まさかこんな形で人生が変わることになるとは。
しかし不思議なことに、荒々しい海の上で過ごす日々は、意外にも心地よかった。ただ、今でも港に戻るたびに、あの吸血鬼が待っているのではないかと、ちょっとだけ心配になるのだが…。
プロンプト
「『吸血鬼に襲われたらマグロ漁船に乗り込め!!!』。場所は青森の大間、夜中に吸血鬼と遭遇した私。吸血鬼は私に対して鬼ごっこを提案する。私は夜に吸血鬼から逃れるために、思考を巡らせる。吸血鬼の弱点は日光。朝まで逃げれば勝てる。しかし、逃げきれる保証はない。吸血鬼の弱点はいくつもあるが、結局あそこしかない。そうマグロ漁船だ。このプロットを元にシリアスコメディ短編小説を書きましょう。」