『除夜の鐘は吸血鬼に鳴る』~固ゆでたまごのようにむせる夜~
明けましておめでとうございます。
新年早々、こんな目に遭うとは踏んじゃいなかったぜ。
俺は深夜の路地裏で、金髪碧眼の美しい吸血鬼と睨み合っていた。探偵稼業十年、怪しげな依頼は山ほどこなしてきたが、吸血鬼との鬼ごっこってのは初めてだ。
「探偵さん、逃げられると思う?」
吸血鬼は艶のある声で囁いた。まるでウイスキーのような声だぜ。ただし、俺が好むのは水割りだ。
「新年の運試しってわけか」
ポケットの中の南部式拳銃に手を伸ばす。だが、吸血鬼には効かないだろうな。奴らの弱点は日光。しかし、この真夜中に日の出まで逃げ切れる保証はない。
「カウントダウンを始めましょうか?10、9、8…」
吸血鬼は優雅に数を数え始めた。俺は頭を巡らせる。十二月三十一日、いや、もう一月一日か。そうだ、今夜は…。
「3、2、1…」
「チッ、新年早々ついていないぜ」
俺は全力で走り出した。目指すは近くの神社だ。吸血鬼には他にも弱点がある。十字架、ニンニク、流れ水…。だが、今夜の東京で最強の武器は、あそこしかない。
「おや、神社に逃げ込むつもり?残念ですが、聖なる場所も私には…」
背後から聞こえる余裕げな声。だが、俺の賭けは別にある。
神社に飛び込んだ瞬間、人の波が見えた。そうさ、今夜は初詣だ。参拝客の長蛇の列が境内を埋め尽くしている。
「なっ…!?」
吸血鬼が足を止めた。当然だ。吸血鬼には人間の家に招かれないと入れないという弱点がある。そして、神社は誰のものでもない。招かれもしない大量の人間が押し寄せる聖なる場所。これほどの相性の悪い場所はないだろう。
「まいりましたわ…」
吸血鬼は深いため息をつき、ゆっくりと後退していく。
「おみくじでも引いていけばいいのに」
俺は缶コーヒーを取り出しながら、呟いた。除夜の鐘が鳴り響く中、吸血鬼は朝日を待つことなく、夜の闇に消えていった。
事務所に戻る途中、なんとなくおみくじを引いてみた。
「大吉」
「新しい出会いに恵まれる」だと?
ふん、こりごりだぜ。
そう思った矢先、後ろから声が飛んできた。
「ちょっといいですか?職務質問です」
振り返ると、若手の警官が二人。新年早々、熱心に仕事してやがる。
「所持品検査にご協力を」
「あー、ちょっと待って…」
だが、遅かった。ポケットから出てきたのは、例の南部式拳銃。警官の顔色が変わる。
「銃刀法違反ですね」
「いや、これは吸血鬼用の…」
言いかけて、自分の言葉の馬鹿馬鹿しさに気付いた。
パトカーの後部座席から見上げた空には、東の空が白み始めていた。吸血鬼は日の出を待たずに消えたが、俺の新年は留置所で明けることになりそうだ。
おみくじの「新しい出会い」ってのは、刑事さんたちのことだったのかもしれないぜ。
プロンプト
「場所は新年の東京、夜中に吸血鬼と遭遇したハードボイルド探偵な私。吸血鬼は私に対して鬼ごっこを提案する。私は夜に吸血鬼から逃れるために、思考を巡らせる。吸血鬼の弱点は日光。朝まで逃げれば勝てる。しかし、逃げきれる保証はない。吸血鬼の弱点はいくつもあるが、結局あそこしかない。そう神社だ。「新年早々ついていないぜ」。このプロットを元にナンセンスハードボイルドコメディ短編小説を書きましょう。」
「最後に主人公は職質されて補導される場面で物語を締めくくってください。」