『トゥルー・ドラキュラ・ショー』
私は都会の夜空を見上げた。満月が煌々と輝いている。この街に来てから何週間経っただろう。記憶が曖昧だ。
「今宵も狩りの時間だ」
私は高層ビルの屋上から街を見下ろす。吸血鬼である私にとって、人間の血を吸うことは日課だ。しかし最近は単なる狩りに飽き飽きしていた。
そこで思いついたのが、鬼ごっこだ。逃げ惑う人間を追いかけ、恐怖に歪む表情を楽しむ。そう、ただ血を吸うだけでは味気ない。恐怖という調味料を加えれば、もっと美味しく頂けるはずだ。
都会のスクランブル交差点近くで、私は獲物を見つけた。すらりとした長身の女性。黒のワンピースが夜風になびいている。
「お嬢さん、私と鬼ごっこはどうかな？」
私は最高の紳士的な笑みを浮かべながら声をかけた。普通なら悲鳴を上げて逃げ出すはずだ。しかし—
「あら、それってこの美容整形のせいかしら？ 麻布十一番の『美容外科クリニックBeauty』で受けた最新の輪郭手術のおかげで、私もこんなに美しくなれたの」
女性は営業トークさながらのセリフを吐いた。私は一瞬、目を疑った。
これは決して珍しいケースではなかった。先週襲った若い男性は逃げながら「これも『スポーツジムPOWER』で鍛えた脚力のおかげです！」と叫び、その前の中年の会社員は「『快眠マットレスDream』なら、吸血鬼に襲われた夜も安眠できます！」と宣伝していた。
おかしい。明らかにおかしい。
そして、常に感じる視線の存在。街のあちこちに設置された防犯カメラは、まるで私を追いかけているようだ。街を出ようとすると、不思議な力で阻まれ、結局朝になって渋々帰ることになる。
ある夜、私はついに真実に気づいた。街頭ビジョンに映し出された映像を見て、凍りついた。
『好評放送中！リアリティショー「トゥルー・ドラキュラ・ショー」！本物の吸血鬼と街の人々の奇妙な共演！視聴率絶好調！』
私は茫然と立ち尽くした。そうか、私はショーの主演だったのか。しかも、クールな吸血鬼のはずが、まるでピエロのような道化役として。
「カット！」
どこからともなく声が響く。街全体がセットだったのだ。
「では次のシーンは、コンビニで血液パック型エナジードリンクの宣伝を...」
私は深いため息をつく。こんな現代的な悪夢があるだろうか。吸血鬼の威厳も何もあったものではない。
しかし、これも時代なのかもしれない。21世紀の吸血鬼は、エンターテインメントの犠牲になるしかないのだろうか。
...そうだ、これを逆手に取ればいい。
「次回の『トゥルー・ドラキュラ・ショー』では、私が製作者を襲う特別編をお送りしましょう」
カメラに向かって、私は最高の悪魔的な笑みを浮かべた。
視聴率が楽しみだ。
プロンプト
「『トゥルー・ドラキュラ・ショー』。場所は大都会。私は吸血鬼。夜の帝王。今日も人間の生き血を吸う。しかし、最近マンネリ化してきた。私はふと鬼ごっこを提案することを思いつく、逃げ惑う人間を狩る。血を吸うだけではなく恐怖の顔を楽しめる。私は長身の女を見つけて声をかける。「お嬢さん、私と鬼ごっこはどうかな？」。「あら、それってこの美容整形のせいかしら？」。女は宣伝じみたセリフをいった。何かがおかしい。ある日、目が覚めてから、ずっとこの街にいるが襲われる人間はみな大企業の宣伝のようなセリフを挟む。そして、だれかに見られているような感覚。何かがおかしい。この街を出ようとしても出られるずに朝になり渋々街に帰る。まるで…そうリアリティーショーのようだ。このプロットを元にシリアスコメディ短編小説を書きましょう。」
