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『サンタと吸血鬼の奇妙な夜』

 

 私は東京の夜景を見下ろしながら、いつもの退屈な思いに囚われていた。吸血鬼として百年以上を生きてきた私にとって、人間の血を啜るだけの生活は既に色褪せたものとなっていた。


「今夜は何か違うことをしてみようか」


 そう呟いた瞬間、私の目に飛び込んできたのは、信じられない光景だった。高層ビルの谷間を縫うように進む一頭のトナカイと、その背に乗った長身の白髪の男性。まるで都会の片隅に迷い込んだ童話の一場面のようだ。


「おや、こんな所で素敵な獲物に出会えるとは」


 私は瞬時に男の前に舞い降り、最高の笑顔で声をかけた。


「そこの素敵な白髭のおじさん、私と鬼ごっこはどうかしら?」


 男は疲れ切った表情で振り向いた。その姿は伝説のサンタクロースというより、締め切りに追われるWeb系企業の社畜といった風情だった。深いため息をつきながら、男は背負っていた巨大な袋を私の前に置いた。


「もう限界なんだ...」


 彼は(うつ)ろな目で呟いた。


「最近のマンションやオフィスビルは完全セキュリティー。煙突なんてほとんどないし、スマートロックは毎年アップデートされる。昔みたいにホットミルクとクッキーを置いてくれる家も減った」


 私は困惑しながらも、袋の中を覗き込んだ。そこには大量のプレゼントが詰まっていた。


「君なら...」


サンタは希望に満ちた眼差しで続けた。


「吸血鬼の能力があれば、どんな建物にも入れるはず。私の代わりにプレゼントを配ってくれないか?」


 告白すると、私はその提案に心躍るものを感じた。人間を追いかけ回す鬼ごっこどころか、これは予想もしなかった展開だった。血に飢えた夜の帝王が、クリスマスの使者に転身するなんて。


「面白そうだ」私は笑みを浮かべながら答えた。


「でも、条件がある。プレゼントを配った後は、怖がらせて楽しませてもらう」


 サンタは安堵の表情を浮かべ、トナカイに跨がると夜空へと消えていった。その背中は妙に若々しく見えた。


 私は袋を担ぎ、最初の目的地へと飛び立った。今宵は特別な夜。吸血鬼サンタの夜が始まろうとしていた。子供たちの枕元にそっとプレゼントを置き、そして両親を驚かせる。なんて素敵な夜になることだろう。


 人生は時として、思いもよらない方向に進むものだ。永遠の命を持つ私にとって、この夜は新たな楽しみを見つけた記念すべき一夜となった。


 もちろん、翌朝のニュースは大騒ぎだった。

「正体不明の何者かが都内の家々に不法侵入、プレゼントを置き去りに!」

「目撃証言によると、黒衣の美しい人が窓から...」


 私は朝刊を読みながら、満足げに微笑んだ。これからのクリスマスシーズンが、少し楽しみになった気がする。

プロンプト

「『サンタクロースの正体は…』。場所は東京。私は吸血鬼。夜の帝王。今日も人間の生き血を吸う。しかし、最近マンネリ化してきた。私はふと鬼ごっこを提案することを思いつく、逃げ惑う人間を狩る。血を吸うだけではなく恐怖の顔を楽しめる。私はトナカイをつれた長身の大男を見つけて声をかける。「そこの素敵な白髪でひげ面のおじさん、私と鬼ごっこはどうかな?」。「もう限界や…」。男はやつれた顔で振り向いた。さながら限界大学生いやブラック企業の社員。ひげ面の男は大量の袋を私に渡して、「最近セキュリティが厳しくて、煙突もなくなってピッキングもむずかしくなっているけど、きみならいけるはずだ」。そう言うと、トナカイと共に颯爽と夜の街へ消えた。残された私。このプロットを元にシリアスコメディ短編小説を書きましょう。」

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