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『吸血鬼になろう』―2034年、吸血鬼共存社会―

 いつからだったか、街に吸血鬼が増え始めた。


 最初は恐怖と混乱が広がったものの、彼らが意外にも理性的で、ルールを重んじる存在だと分かると、人々の態度は徐々に変化していった。吸血鬼増加から10年、今では「吸血鬼に血を吸われるのはしょうがない」が若者の間での常識となっている。


「だって、献血と同じようなものでしょう?」


「むしろ、イケメン吸血鬼に当たったら超ラッキーじゃない?」


「最近の吸血鬼って、けっこうお洒落な人多いよね」


 SNSではこんな会話が日常的に交わされ、中には「被吸血依存症」と呼ばれる血液提供マニアまで現れた。彼らの間で密かに囁かれているのは、「吸血鬼になる可能性」という都市伝説だ。


「ほら、海外の論文でも書いてあったでしょう?血液交換が条件で、吸われただけで吸血鬼になる確率は天文学的に低くて…理論上は血を吸われるだけで吸血鬼にはならないんですよ。だからね、血を吸われるだけで吸血鬼にはならない。彼らはまあ…ちょっと我々の協力が必要な友人なんですよ」


 そんな有識者の言葉を真に受けるかのように、『ドラキュラッター』『V』『ドラップル』『ティンドラー』『シティ・ヴァンパイア』『アルファドラキュラ』『ブラドヨム』『ブラドバ!』など様々なSNSやウェブサイトが乱立していった。吸血鬼のファンサイト、血液提供者と吸血鬼のマッチングアプリ、果ては吸血鬼の技術を評価するレビューサイトまで――。


 これは、そんな奇妙な時代に生まれた、あるウェブサイトにまつわる物語である。

 

「★★☆☆☆ 血の味が薄い。吸血の技術も荒い。まだまだ未熟者という感じ。」


 村松は溜め息をつきながら、スマートフォンに低評価レビューを打ち込んでいた。昨夜、原宿の路地裏で襲われた吸血鬼の評価である。


「最近の若手は基本も出来ていない。これだから新人は…」


 そう呟きながら、首筋に残った牙痕を確認する。傷は浅く、痛みもほとんどない。


 村松には誰にも言えない秘密の副業があった。それは「吸血鬼になろう」という謎のウェブサイトの評価員である。サイト名とは裏腹に、このサイトは吸血鬼たちの技術や作法を評価するプラットフォームだった。


「おや、新着通知だ」


 スマートフォンが小さく振動する。次の評価依頼が来たようだ。


『新人吸血鬼が急増中につき、評価員を緊急募集!時給3000円+危険手当。興味のある方は今すぐ応募を!』


「はぁ…」


 また溜め息が漏れる。昨今の吸血鬼不足を反映してか、最近は素人吸血鬼が増えすぎていた。基本的な吸血作法も知らないまま、人を襲うものまで出てきている。これでは伝統ある吸血鬼文化が廃れてしまう。


 しかし、この仕事には誇りがあった。吸血鬼たちの技術向上に貢献し、人間と吸血鬼の共生を陰ながら支える——それが評価員としての使命なのだ。


「よし、今日も夜の街へ出るとするか」


 首筋のバンドエイドを貼り替えながら、村松は決意を新たにした。今宵も、どこかで彼を襲う吸血鬼を待っている。


 そうして夜が更けていく中、彼のスマートフォンには新たな評価レポートが次々と追加されていった。


『★★★★☆ 牙の角度が絶妙。血を抜く速度もスムーズで好感が持てる。ただし、もう少し首筋を温めてからの方が美味しく頂けたはず。次回に期待。』

プロンプト

「『吸血鬼になろう』謎の吸血鬼評価サイト。このタイトルを元にシリアスコメディ短編小説を書きましょう。」

「この小説の前説を次のプロットを元に書いてください。吸血鬼が大発生した未来。共存の為、人間たちは吸血鬼を受け入れ始めていた。「吸血鬼に血を吸われるのはしょうがない」。なかには、吸血鬼に血を吸われるマニアまで現れた。献血と似たようなもんさ、美人やイケメンにあたれば幸運さ。吸血鬼になる?血液交換がなければならないって、論文でも書いてあったさ。とはマニアの言い分。そんなこんなでいろいろなSNSやサイトが生まれた。」

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