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『人狼ゲームと吸血鬼』

 

「まったく、人狼どもめ。人間を食い散らすしか能のない獣が」


 月明かりの下、私は長いマントをはためかせながら村の入り口に立っていた。私の名はドラキュリオ。吸血鬼の中でも古い血統を持つ夜の貴族である。


 この村に到着する前、人狼の出現を告げる預言があったと聞いた。村人たちは恐怖に怯えている。だが、それも当然だ。人狼は人間に化けて潜伏し、夜な夜な人間を喰らう。我々吸血鬼とは違う。


「ご主人様、お待ちしておりました」


 村の入り口で、老村長が深々と頭を下げた。彼の首筋に残る小さな傷跡が、月明かりに照らされて光る。そう、彼は我が家の血の契約者の一人だ。


「ここ最近の被害状況は?」


「はい...この一週間で三名の村人が命を落としました。獣に引き裂かれたような痕跡が...」


 私は眉をひそめた。典型的な人狼の仕業だ。我々吸血鬼は人間から血を頂くが、決して命は奪わない。それが何百年も守ってきた掟だ。人間に知恵と力を与え、その代わりに血を分けてもらう。完璧な共生関係だ。


「今夜は満月ですので...」


「ふむ、都合がいい」


 私は薄く笑みを浮かべた。人狼は満月の夜に正体を現す。それを逆手に取れば、奴らを一網打尽にできる。


 村の広場に着くと、すでに数名の村人が集まっていた。皆、不安げな表情を浮かべている。その中に、妙に落ち着いた様子の若い男が一人。私の鋭い嗅覚が、彼から獣の匂いを感じ取った。


「では、みなさん。今夜から『人狼ゲーム』を始めましょうか」


 私は高らかに宣言した。村人たちは困惑した表情を見せる。だが、これこそが人狼を炙り出す最高の手段なのだ。


「ルールは簡単です。昼に話し合い、夜に投票。人狼だと思う人物を指摘してもらう。ただし...」


 私は意味ありげに笑みを浮かべた。


「本物の人狼は、私が直接お相手いたしましょう」


 その瞬間、例の若い男の表情が強張るのを見逃さなかった。


 かくして、吸血鬼の司会による前代未聞の人狼ゲームが始まったのである。


「さて、皆さん。最初の犠牲者は誰にいたしましょうか?」


 私の言葉に、村人たちは恐る恐る互いの顔を見合わせた。そして、若い男の顔が徐々に蒼白になっていく...。


「私は昨夜、おかしな物音を聞きました」


 若い男...アダムと名乗った彼が、率先して発言を始めた。


「パン屋のマルコが、夜中に裏庭で何かを...」


「待て」


 私は静かに制した。アダムの目が、一瞬だけ妖しく輝いたのを見逃さなかった。


「マルコ殿、あなたの弁明は?」


 パン屋のマルコは震える声で答えた。


「た、確かに昨夜、裏庭に出ました。でも、それは朝一番の仕込みのために薪を...」


「嘘をつけ!」アダムが声を荒げる。


「お前は人狼に違いない!」


 村人たちの間に動揺が走る。しかし、私の耳には、アダムの声に潜む焦りが聞き取れた。


 その時、広場の片隅で一人の騎士が身動きした。灰色の鎧に身を包んだ彼は、村の護衛として駐在する騎士団の一員セルギウス。人間ながら、並々ならぬ剣術の使い手だ。


「ドラキュリオ様」騎士が低い声で私に告げる。


「あの男、何かがおかしい」


「ふむ」私は頷いた。


「気づいておられましたか、セルギウス殿」


 アダムは相変わらず、マルコへの追及を続けている。しかし、その矛先があまりに鋭く、そして...的確すぎる。まるで、誰かを人狼に仕立て上げることに慣れているかのように。


「皆さん」私は静かに、しかし確かな声で言った。


「人狼の最大の特徴をご存知ですか?」


 村人たちが首を傾げる中、私は続けた。


「それは...人間の恐怖を楽しむことです」


 その瞬間、アダムの動きが止まった。


「罪のない者を追い詰め、村人同士の疑心暗鬼を煽る。そうやって人間たちの恐怖と絶望を愉しんでから、最後の一撃を加える...それこそが、人狼の狡猾な狩りの手法」


「な、何を言って...」


 アダムが言葉を発する前に、セルギウスが銀の剣を抜いていた。


「お前の動きは、獲物を追い詰める狼そのものだったぞ」


 月が雲間から顔を出した瞬間、アダムの人間の姿が歪み始めた。


「く...見破られたか」


 彼の声は次第に唸り声へと変わっていく。


「セルギウス殿!」


「承知!」


 私が放った魔力の糸が人狼の動きを封じ、セルギウスの銀の剣が閃光を放った。最後まで人間を欺こうとした狡猾な人狼は、かくして討伐された。


 後日、村人たちは私とセルギウスに心からの謝意を示した。マルコは特に深い感謝の意を表明し、今後毎月、最高級の小麦粉で焼いたパンを私の館に届けることを申し出た。


「まったく」私は月を見上げながら、独り言を呟いた。


「人狼討伐に、パン屋の差し入れとは。これも、人間との共生の形か」


 隣でセルギウスが小さく笑う。


「しかし、ドラキュリオ様。まさかあのような『ゲーム』を始めるとは」


「ふふ、人間の知恵には学ぶべきものが多いのです。たとえそれが、遊びであってもね」


 こうして、吸血鬼と騎士の珍妙な共闘による人狼退治は幕を閉じた。


 私は今宵も、村長から分けてもらった血でワイングラスを満たす。人狼討伐の報酬としては、些か地味かもしれないが...これこそが、我々の選んだ道なのだから。

プロンプト

「『人狼ゲームと吸血鬼』。「まったく、人狼どもめ。人間を食い散らすしか能のない獣、俺たちは人間と共存しているというのに」。そんな独り言を言いながら、俺は人狼の出現の預言があった村を訪れた。場所は中世とも近代ともつかない時代。私は吸血鬼ドラキュリオ。夜の帝王。今日も人間の生き血を吸う。我々吸血鬼は人間と共存しながら生きてきた。人間に力と知恵を貸す代わりに血を貰う。しかし、人狼どもは違う。人間に化けて人間を喰らう。我々、吸血鬼はある時から、人間に害をなす害獣を討伐するために彼らに力を貸すようになった。このプロットを元にシリアスコメディ短編小説を書きましょう。」

「つづき、若い男が率先して話を進めて村人の一人を人狼に仕立てようとする。その違和感を私は見逃さなかった。そして、私は人狼を見破り、騎士と共闘して人狼を討伐する。このプロットを元に物語を締めくくってください。」

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